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丹とはどんな色?日本の伝統色を知ろう!【日本画絵具解説】


こんにちは、日本画家の深町聡美です。

「丹」という色を知っていますか?

もしかしたら
「読めないよ~!」
という方もいるかもしれませんね!


今回は、

  • 「丹」とは一体どんな色なのか?
  • 日本画絵具の丹の使い方とは?

を狩野派の日本画技法書からも引用して
解説していきます!



結論から言うと、
丹とは黄色みを帯びた赤色、
つまり神社の鳥居に近い色を言います。

日本画絵具の丹は鉛で出来ていて
扱いにコツが要ります



ではそんな美しい丹色は
どのようなシーンで使われているのでしょうか?



丹(たん)とはどんな色?

tristanlai1220によるPixabayからの画像

丹は「たん」「に」と読む、

黄色みを帯びた赤色です。



「に」と読む時は「丹塗りの鳥居」
というような使い方をしますよね。


神社の楼閣や鳥居が赤いのも
「丹」色の絵具が使われているからです。


丹の顔料に虫害を防いだり、
錆止めや防腐の効果があるので
神社仏閣のありがたい建物に
使われているんですね!

「鳥居は水銀朱じゃないの?」

そう思ったあなたはとても勉強熱心!
鳥居は水銀朱だけでなく、
丹(酸化鉛)や弁柄(酸化鉄)の
朱色も使われています!



丹塗りは芥川龍之介の『羅生門』にも
登場しています。

広い門の下には、この男のほかに誰もいない。ただ、所々丹塗にぬりげた、大きな円柱まるばしらに、蟋蟀きりぎりすが一匹とまっている。

羅生門/芥川龍之介

丹塗りが剥げていることで
荒廃した京の様子を表しています。



UnsplashBirger Strahlが撮影した写真


日本画絵具では「丹」は「たん」と読みます。

丹頂鶴(たんちょうづる)の丹ですね。

頭が赤い様子に「丹」という字を使っています。

丹は「たん」とも「に」とも読むんだね!

  • 丹とは黄色みを帯びた赤のこと
  • 「たん」は丹頂鶴の頭の赤
  • に」は丹塗りの赤

丹の意味は赤土のこと!

Photo by Arthur Hickinbotham on Unsplash



さて、ここで「丹」という言葉の
意味を見てみましょう。

① 硫黄と水銀の化合した赤土。辰砂(しんしゃ)。また、その色。に。

② 鉛に硫黄・硝石を加えて、焼いて製したもの。鉛の酸化物で鉛丹ともいう。黄色を帯びた赤色で、絵の具としまた、薬用とする。和泉国堺で産する長吉丹は上等とされた。

コトバンク

丹って赤土?辰砂?鉛の酸化物?


という感じですよね。


この理由は、
「昔は赤土は何でも丹だった!」
からです。


赤い顔料はいろいろありましたが
昔は厳密に呼び分けられていた訳ではなく
どれも丹と呼ばれていた
んです。


  • 赤土も辰砂も鉛丹も、区別されずに丹と呼ばれていた!

青丹よしの丹は土を意味し、
青土(青緑青/孔雀石等)を指している。
また、平城京の丹と山の緑の美しさを
指しているともいう。


それではここからは日本画絵具の
丹についてお話します!


丹の絵具は
一体どんな鉱物で出来ているのでしょうか?


日本画絵具の丹の特徴は鉛由来!

pixabay


日本画絵具の丹は「鉛丹」とも言います。
主成分は四三酸化鉛【Pb3O4】


金属鉛を400~500度で加熱し、
酸化させています。


ここまで書いたらお気づきと思いますが、

丹は鉛!

そう!毒性ゆえにあまり使われなくなった
鉛白と同じなのです!




ということで食べたり塗ったりはNG!

お子様が使うには不適切な絵具の一つです。



絵具としては水に混ざりにくく
沈殿しやすい
という特性を持ちます。

そのため使用時には、後述する
「ちょっとした工夫」が必要です。

絵具の質や保存環境によっては
暗褐色や灰色へ変色する可能性があります。



このように扱いの難しい「丹」を
どうやって使うと良いのでしょうか?

日本画の丹の絵具はどうやって使うの?狩野派の伝統的使い方を解説!

日本画の丹の使い方①よく擦りつぶそう!



「丹」を日本画絵具として使う時には
以下の手順を踏みましょう。


まずは乳鉢に入れて、乳棒で丁寧に粉状にします。


乳鉢の底に付着するくらい細かくしましょう。

日本画の丹の使い方②膠で溶こう!

乳鉢の丹に、膠を入れて良く練ります。

混ぜにくい時はアルコールを入れてから
膠で溶きます。

丹の粉末全体にしっかり膠が付いたら
水を注いで溶きます。


日本画の丹の使い方③上澄みを絵皿に取り分けよう!

前述したように丹は沈みやすい顔料。

沈んだ顔料はそのままにして、
上澄みだけを絵の具皿に取り分けて使います!


日本画の丹の使い方④皿を炙る!!

そして丹が入った絵の具皿を
弱火であぶって半乾きにします。


電熱器や保温トレイを活用します。

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たまにメルカリで見かけますので
その時はチャンス!

水銀が含まれる丹を使う時は
熱さないように!
毒ガスが発生する可能性があります。

日本画の丹の使い方⑤また膠で溶こう!

炙って半乾きになった絵の具皿に、
少しの膠を入れ、それを指で練ります。


ほど良く練れたら丹の絵具が完成!
水で溶いて使います。

日本画の丹の注意点

撮影:DARENIHO

胡粉を混ぜよう!


日本画の攻略本「丹青指南」には
丹を使うときは少しの胡粉を混ぜると良い
書かれています。


胡粉を少量混ぜることで塗りやすくなり
発色も良くなるためです。


乾いた丹は使えない!



そして、絵皿の丹は乾いたら
使うことができない
と言われています。


絵皿に溶いた後に乾いてしまったら
残念ですがもう一度溶き直しましょう。


・胡粉を加える
・乾いたら溶き直す

この二つを覚えておこう!




まとめー【日本画絵具】丹の使い方

Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash

最後までお読み頂きありがとうございます。

丹とは、黄色みのある赤色の絵具でした。


日本画の絵具として使う時には

  1. 乳鉢で擦り潰す
  2. 膠で溶く
  3. 上澄みを絵皿に取り分ける
  4. 皿を炙る
  5. 膠で溶く 

という手順が必要になります。

手間はかかりますが、
ぜひ日本古来の赤色絵具を使って下さいね!


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丹の解説ー丹青指南現代語訳

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による



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内容は非常にためになるのに
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一、丹

Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash


この絵具は鉛から作った物で、
水には非常に混ざりにくく沈殿しやすいものです。


なので練るときには猪口に入れて
擦り棒で丁寧に粉状に擦ります。

丹が猪口に付着するように細かく砕きます。


それに膠を入れてよく練り、
膠がしっかり回ったら
水で溶いてその上澄みを、
絵の具皿に取り分けて使います。


絵の具皿に分けたら、
その皿を弱火であぶって半乾きにします。


それにまた少しの膠を入れて
指で丁寧に練り、
ほど良く練れたら水で溶いて使います。


ただしこの丹を一色で使うときは
少しの胡粉を混ぜれば
最高に塗りやすいだけでなく、
その色相もいっそうすばらしくなります。


そしてこの皿に溶いた丹は、
乾いた後は使うことが出来ません。


色のことをもっと知りたいときは?

⇒【危険】絵の具には毒性があるって本当!?【子供が食べても大丈夫?】







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