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日本画のアクアグルーの使い方と特徴【画材レビュー】

この記事で分かること
  • アクアグルーの使い方
  • アクアグルーの使い心地とメリット・デメリット
  • アクアグルーと膠、アートグルーを比較した感想


こんにちは、日本画家の深町聡美です。


皆さんは日本画のアクアグルーを知っていますか?


すでに使っているかたもいれば、
知ってはいるけど膠より使いやすいのか分からない…

という方もいますよね。


今回の記事は、

膠&アートグルーを使ってきた筆者が

  • アクアグルーの溶かし方写真付き
  • アクアグルーのメリットデメリット

を解説致します!


アートグルーの記事はこちら!

日本画のアクアグルーの使い方・溶かし方

膠のイメージ

まずは必要な物をチェックします!

必要な物
  • アクアグルー
  • 容器(ペットボトルなど)
  • 重量ハカリ
  • ろうと
  • 紙やティッシュ




そして、筆者の手順を見る前に、
販売店の使用説明を見てみましょう。

【使用目安】
アクアグルー粉末1:水9(重量比)で希釈して原液を作ります。
顔料1:アクアグルー原液1:水1~2(体積比)で希釈してください。
※使用目安は顔料によっても変わりますので、ご自身の表現に合せて調整してご使用ください。

画材.com 商品ページ

上の作り方はアクアグルーのパッケージにも書いてある公式の使い方です。



こちらは絵具屋三吉さんの使い方です。

【アクアグルー水溶液の作り方】
<20%濃度>
材料:粉末アクアグルー50g・ぬるま湯または水200ml
?粉末アクアグルーを中ボトルにすべて入れます、用意したぬるま湯または水を少しずつ注ぎ適度に撹拌します。
?水をすべて入れ終わったら蓋をして振ります。そのまま24時間置きます。※水溶液が透明になりましたら溶けた合図です

<10%濃度>
材料:粉末アクアグルー10g・ぬるま湯または水90ml
?粉末アクアグルーを中ボトルにすべて入れます、用意したぬるま湯または水を少しずつ注ぎ適度に撹拌します。
?水をすべて入れ終わったら蓋をして振ります。そのまま2時間程度置きます。※水溶液が透明になりましたら溶けた合図です

【絵具の溶き方】
?上記で制作した水溶液を岩絵具などの粉体顔料に少量づつ加えながら、ペースト状になるまで練り合わせます。
?必要に応じて水を加え、筆さばきを整えます。この時加える水の最は下記の最大量を超えないように気を付けます。

<絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量に対して>
■20%濃度で水溶液を作った場合
 >絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量1に対して5倍量
■10%濃度で水溶液を作った場合
 >絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量に1対して3倍量

*上記はあくまでも目安です。顔料に合わせて適切な固着力を確保するために、必要に応じてアクアグルー水溶液で絵具を溶くたびに試し塗りをして固着力を確認してください。

絵具屋三吉商品ページ



こちらは体積で計る方法ですね。


どちらの方法でも溶かせますが、
今回はパッケージに書かれていた
「重量で溶かす方法」をやってみました!

日本画のアクアグルー使い方①ハカリで重さを計測

5gでも山盛り
手順①

ハカリで5g測る

今回は少量だけ作ります。


ハカリで必要な量を測ります。

今回はごく少量を使い切りたかったため、5gのみです。


ティッシュ等の上に乗せればハカリも汚れず、
次の作業も効率的です。



日本画のアクアグルー使い方②容器に移す

手順②

容器に移す


ろうとを使ってペットボトルに移します。

ろうとは紙を丸めた物でOKです。



日本画のアクアグルー使い方③重さを確認する

手順③

重さを確認する


ペットボトルにアクアグルーを入れると35gになりました。

【使用目安】
アクアグルー粉末1:水9(重量比)で希釈して原液を作ります。
顔料1:アクアグルー原液1:水1~2(体積比)で希釈してください。

画材.com商品ページ


つまりアクアグルーは5gなので、45g水を加えます。

35g+45g=80gまで


総重量80gまで水を入れましょう!



 

日本画のアクアグルー使い方④水を加え、よく混ぜる

手順④

重さを見ながら水45gを加え、よく混ぜる


計量カップなどで水を加えます。


そして、容器をよく振りアクアグルーを混ぜましょう!


ペットボトルの底にアクアグルーが沈みやすいです。
よく振れば、次の放置時間が短縮できます!



日本画のアクアグルー使い方⑤しばらく放置する

←混ぜた直後 放置後→
手順⑤

透明になるまで放置しておく


混ぜた直後は粒が残っています。

しばらく放置することで完全に溶けきります。


絵具屋三吉さんでは24時間放置が推奨されていますが、10時間程度でも上写真のように溶けます。




透明になれば使用可能!

膠の代わりに使ってみましょう。

よく振っていれば4時間くらいで溶けきる印象でした。
正確な時間は計っていません。
参考までにお考え下さい。



日本画のアクアグルー使い方⑥膠と同じように顔料と混ぜる!

手順⑥

絵具に加え、指で混ぜる


使い方は膠と同じです。

顔料を絵皿に入れ、アクアグルーを入れます。



顔料全体にアクアグルーが染み渡る量を入れて、
顔料表面に糊分が付くように指で混ぜます。



膠でもアクアグルーでも、顔料の粒ひとつひとつの表面に糊成分を付着させよう!



日本画のアクアグルー使い方⑦水を加えて塗ろう!

手順⑦

水を加えて塗る


最後に、水を適量加えて塗りやすくします。


絵具屋三吉さんの溶かし方では、
この時加える水の最大量が決まっています。

?必要に応じて水を加え、筆さばきを整えます。この時加える水の最は下記の最大量を超えないように気を付けます。

<絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量に対して>
■20%濃度で水溶液を作った場合
 >絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量1に対して5倍量
■10%濃度で水溶液を作った場合
 >絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量に1対して3倍量

絵具屋三吉さんの溶かし方

↑三吉さんはgではなくmlで作る方法を紹介されています。



これは薄め過ぎると接着力が落ちるためですね。



一方で濃すぎると上写真のようにテラテラになります。



テラテラは乾燥後に納まることもありましたが、
乾燥に非常に時間がかかりました。



スムーズに進めたい時は、絵皿の絵具がべた付かない程度に薄めると良さそうです。




以上がアクアグルーの使い方でした。


溶かし方に癖がありますが、膠と同様に使えます。



ですが細かい使い心地が膠やアートグルーと異なっています。


ここからはアクアグルーを使うメリットとデメリットを解説します!

アクアグルーのメリット①温度に影響されず、簡単に使える!【日本画】

冬の膠は熱し続けないと固体化する

膠との一番の違いは、保温の必要がない点!



冬の膠は、保温し続けないとゼリーのように固まります。


つまり膠を使うには、数分毎に湯で温めるか、別売りの保温グッズしかないのです。



ですがアートグルーなら保温を気にせず、常に使い続けられます!


これだけで買う価値はあると思います!



アクアグルーのメリット②初心者も安心の接着力!【日本画】

©DARENIHO

接着力が高いから初心者も安心して使えます!



膠を使った場合、濃度が薄いと荒い岩絵具が剥離してしまいます。



しかしアクアグルーは膠より堅牢な印象。


濃度調整に気をもむ必要がなく、初心者にぴったりと言えるでしょう!



もう少し詳しい膠濃度の話
日本画では最初に荒い(粒が大きい)岩絵具を塗ると良いとされます。
その際膠の濃度が薄すぎるとパラパラと取れます。
そして、塗り重ねるほど膠の濃度も薄くする必要があります。
濃すぎると膠の黄色が絵具に交じり、発色が悪くなります。


濃度が薄いと剥がれるのはアクアグルーも同じですが、無色透明な分、調整の幅が少なくて済むと言えますね。

この二つの躓きポイントを解消できるのはメリットです。




アクアグルーのメリット②臭くない【日本画】

アクアグルーは化学的な匂いがしません!


アクアグルーと同じく簡単に使える膠的なものに「アートグルー」があります。

こちらは

  • 最初から液状
  • 腐らない
  • 堅牢
  • 耐水性がある

などのメリットがある展色剤ですが、
匂いがキツイです。


防腐剤か何か、化学的な匂いがします。


一方アクアグルーは無臭です。


  • 温度管理が不要で~
  • 手軽に使えて~
  • でも匂いわない膠が欲しいな~



という方にはおススメできるのがアクアグルーなのです!


アートグル―の詳細はこちら!

アクアグルーのメリット③膠の黄色っぽさがない【日本画】

©DARENIHO

膠は黄色いけどアクアグルーは無色透明だね!



膠は溶かすと黄色い液体になりますよね。

黄色い膠で紙に接着した絵具は、
どうしても黄色っぽくなります。

要するに彩度が下がったり、色が変わったりしてしまうのです。


これは膠の濃度が濃いときが顕著!

全体的に暗い色合いになってしまう事もあります。



ですがアクアグルーは無色透明の液体です。

黄色くない分、元の絵具の発色を保持しやすく、
彩度が落ちにくいのです!



個人的な主観ですが、アクアグルーやアートグルーを使ってから彩度の低下に悩むことが減った気がします。

膠の扱いが下手すぎただけとも言うね!



アクアグルーのメリット④水で戻せる【日本画】

すごい横着ですが、アクアグルーを混ぜた絵具は水で戻して使えます。



アートグルーは耐水性の展色剤。

なので放置するとパリパリになり再利用はできません。



しかし、アクアグルーは水を入れると粉末状に戻ります。

やろうと思えばアクアグルーを加えて再利用も可能なのです。

発色はかなり落ちますのでオススメはできませんね。
仕上げでは行わない方が良いでしょう。

膠は膠抜きで再利用が出来るからいいよね!


膠抜きとは?
膠抜きとは、膠で溶いた岩絵具にお湯を入れ膠分を抜く事です。
膠分を含むお湯を捨てて乾かすことで岩絵具を再利用できます。



アクアグルーのデメリット①溶かすのは少し面倒【日本画】

ここからはアクアグルーのデメリットをお話します!

溶かすのに時間がかかるデメリットがあるね。


膠を溶かすよりはるかに手軽ですが、

  • はかる
  • 水を加える
  • 放置する

のは、アートグルーと比較すると手間かもしれません。



ですが、一日放置しなくても十分溶け切る感じはありました。




また重量計算で溶かします。
これは完成後の量が直感的に分かりにくいですね。

5g:45g、10g:90gという感じになります。
使う量だけ作るのに脳のパワーを使います。

絵具屋三吉さんでは体積(ml)での作り方が掲載されているよ。
そちらの方が直感的に分かるかも!


体積での比率(10%濃度の場合)
アクアグルー:水
5g:45ml
10g:90ml
20g:180ml

絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量に1対して3倍量まで薄められる

体積での比率(20%濃度の場合)
12.5g:50ml
25g:100ml
50g:200ml

絵具との練り合わせに入れたアクアグルー水溶液の量1に対して5倍量まで薄められる



アクアグルーのデメリット②使用期限アリ?カビ的なものが浮く事もあり【日本画】

アクアグルーは水で溶かしたら劣化します。


筆者はアクアグルーの前にアートグルーを使っていました。

アクアグルーは腐りませんが、
アクアグルーは水に溶かした後、腐りました。
(カビ的な物が浮きました)



粉末の状態では保管可能ですが、
水に溶かすと長持ちしないので注意しましょう。


20度くらいの室温で3~4日保つみたい。
膠より長持ちするね。



アクアグルーを洗うときは水でOK!【日本画】

水を入れた状態

アクアグルーを使った後は水で片付け出来ます!



アクアグルーの片づけはとても簡単!

水で溶かしてティッシュで拭くだけで、片づけ完了です。



膠はお湯で溶かす必要があるので、
片付けの手間はアクアグルーの方が簡単なんですね。

拭くだけできれいになる




まとめー日本画のアクアグルーの使い方と特徴!【画材レビュー】


以上、アクアグルーの使い方とメリットとデメリットでした。


アクアグルーは水溶性の展色剤。

膠と同じように「洗い出し」の技法も出来ます。


また、匂いもなく無色透明なので、
初心者にもオススメでしたね。



ですが絵具屋三吉さんにはこのような注意も掲載されています。

【ご購入前に、必ず御一読下さい!】
*本品は、岩絵の具などの粉体顔料と合わせて使うメディウムです。必ず、何かしらの粉体顔料と混ぜ合わせてからご使用下さい。
*本品は、(岩絵の具を使って描くという意味での)日本画制作にお使いいただけますが、日本画で広く使われている膠とは根本的に違う原料・性質のものです。その点をご理解いただいた上で、お使い下さい。
*明礬を入れて、明礬ドーサとしての使用はできません。
下地から仕上げまで、他のメディウムや動物性の膠と併用せずに制作されることをおすすめします。(収縮率が違うのでヒビなどが発生する恐れがあります。)
*ご使用いただく前に、必ず試作をされてから、使用者の責任においてご使用下さい。
本品を使った作品を、表装や表具などの二次加工、修復等に出される場合、従来の日本画とは違う材料で描かれていることを必ずご説明下さい。明礬ドーサや、動物の膠を使用した日本画と同様に扱ってしまうと、性質の違いから問題が生じる可能性があります。問題が起きるのを防ぐため、本品の成分を開示いたしますが、トラブルが起きないことを保証するものではなく、また生じた場合の責任は負いかねます。

絵具屋三吉

長期的な作品保全のために、性質を理解した上で使いましょう!


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