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【日本画】銀箔を焼く方法を実践してみた!写真付きで失敗例も紹介します!

この記事で分かること
  • 銀箔を焼くとは、硫化させて黒くすること!
  • 銀箔を焼くのにオススメの硫黄薬品を紹介!
  • 銀箔を焼く様子を写真付きで解説!
    失敗談もあります!


日本画家の深町聡美です。



日本画を見る中で
「白っぽい金属質な感じがするのに、
茶色や黒等サビっぽくなっている絵」

を見たことがあるかもしれません。



これは銀箔を焼いて色をわざと変えているのです!

(※古い絵は経年で黒くなっているかも)


銀箔を焼くってなに?
なんか怖そうだし…
難しそう…



と思う方が大半だと思います。


ですが、銀箔を焼くのはとても楽しい時間!


さらに、意図しない色やグラデーションになり、
いつも以上の作品が出来上がることも!



この記事では

  • 日本画の銀箔の焼き方
  • 実際に焼いている様子
  • 道具を間違えて失敗した例

などを、作業中の写真と共に解説します!


ぜひ皆様の制作に役立てて下さい!

銀箔関連の記事はこちら!

➡【日本画】銀箔を焼く方法―硫黄で硫化させて変色させよう

➡初心者向け!金箔や銀箔の貼り方【アート/日本画】



【日本画】銀箔を焼くとは?硫化させて黒くすること!

こんなことにはならない

銀箔を焼くってどういう意味?
炙るの?

日本画における「焼く」とは、硫化させて黒く変色させることを意味します!


皆さんは「いぶし銀」という言葉をご存じですよね。


銀は白い金属ですが、硫黄などでいぶすことで、
黒っぽくなります。


これと同じように、日本画でも銀箔を黒っぽく変色させる技法があるんです!


それが「銀箔を焼く」ということ!



日本画では「焼く」と言いますが、
火で炙っているわけではありません。



いぶし銀のように、硫黄成分を付けて変色させるのです。


日本画では銀箔を硫黄で変色させることを、「焼く」というんだね!

工夫次第では、真っ黒以外にも赤茶色や金色、青や紫にも変色させられます!



銀箔を焼くテクニックはいろいろあります。

詳しく知りたい方は、ぜひ川村愛先生の日本画いろはをご覧ください!




日本画の銀箔焼き(硫化)の手順

銀箔を焼くにはどうすればいいの?

最初に大まかな手順を確認しましょう!

箔焼きの手順
  1. 銀箔を貼り付ける
  2. 硫黄を塗る
  3. 加熱する
  4. 仕上げをする



①銀箔を貼り付ける


まず日本画の必要な箇所に銀箔を貼り付けます!

表現方法によりますが、
均一で滑らかに貼れているのが理想ですね!

詳細はこちらをご覧下さい!


②硫黄を塗る

銀箔に硫黄を含む薬品を塗ります。

硫黄は銀と反応しやすく、
これを利用して銀箔を黒く変色させるわけです。


硫化ポタシウムなどが用いられることがあるようですね。


③加熱する


硫黄を塗った後、軽く加熱します。

これによって硫黄と銀の化学反応が促進されます。

直接炎を当てたり、アイロンを使う方法があります。



④仕上げをする


好みの色に変色したら、
これ以上の変色を防ぐために保護層を作ります。


通常ドーサが使われますが、
専用の変色止めスプレーもあります。



以上が心拍を焼く時のおおまかな手順です!



ですが、ほとんどの方はこう思うはず……

手順は分かったけど、硫黄を含む薬品ってなに?
危なくないの?




ということで、次の章では

  • 硫黄を含む薬品とは何か?
  • どこで買えばいいのか?

を解説致します!



六一〇ハップがないならハンドメイド用品で銀箔を焼こう!

筆者私物:硫黄の原石

美大では六一〇ハップムトウハップ)が良く使われていたんだって!
でも、もう生産が中止されているみたい…

代わりにハンドメイド用のいぶし液を使います!



昔から美大では銀箔を焼くにあたって
六一〇ハップが使われてきました。



六一〇ハップは硫黄系の入浴剤。


だから銀箔を変色させることが出来たんです!


ですが現在六一〇ハップは生産が終了しています。





そこで日本画仲間に勧められたのが



湯の素は六一〇ハップに最も近い入浴剤。

多硫化体硫黄(硫黄の原子が多数連結した化合物)が主成分です。

つまり、六一〇ハップと同じように銀箔を硫化させられるんですね!


大分の道の駅などでも手に入ります!
お土産にいかがですか?





ハンドメイド用のいぶし液(黒化液)
もちろん使用可能です!




今回は、まずは
ハンドメイド用のいぶし液を使って銀箔を焼きました!






さて、ここからはいよいよ!
実際に銀箔を焼いている所を、写真付きで解説していきますね!



【失敗談】黒化液で銀箔を焼いて(硫化させて)みた!【日本画】

じゃあ、いぶし液で黒化するのを見てみようよ!

でもここから紹介するのは、まず失敗談です。



まず前提として、筆者はこの時
銀箔を真っ黒にしたいと思っていました。



その上で、いぶし液の使い方を確認しましょう。

いぶし液の使い方
  1. 70度以上のお湯100ccを用意
  2. 黒化液を10滴程度入れる
  3. アクセサリーを入れる


いぶし液を用いた箔焼きは久々だったので、
説明書に従って作業を行いました。

銀箔を焼く方法を書いた時の記憶は失われていました。


今回はオレンジ系の色に変色させるため、
重曹は入れません



沸騰した湯に、とりあえず何滴か入れました。




これを筆で塗ります。

この筆は箔焼き専用にします。



過去の記憶では、
硫黄水を塗った後放置しておけば茶色くなっていたのですが、今回は全然ダメです。



温度の問題かと思い、再度塗り直してアイロンをかけました。

思い返せば、以前は六一〇ハップの原液を塗っていた気がします。

そもそもお湯が少なすぎて冷えていたのも問題だよね。




キッチンペーパーを当て布にして熱します。


かなり熱して、少しだけ茶色くなりました。


まだまだ真っ黒にしたい部分が多いのに、
これは途方もないことになったと焦りました。

川村先生いわくスチームアイロンだともっと早く硫化が進むそうです。




さらに何度か繰り返し、



ここまでで一回諦めました。



このままでは永遠に終わらない事に気づいた筆者は
硫黄直乗せで銀箔を焼くことにしました!


最初からそうすれば良かったよね。




次の手段に移る前に今回の失敗を反省すると
こうなります。

失敗の要因
  • やりたいこと(真っ黒にしたい)に、いぶし液が合っていなかった!
    ゆっくり変色させられるハンドメイド用いぶし液とは、目的が合っていなかった
  • お湯が少なくて冷えていた
    すぐ冷えて硫化反応が進まなかった
  • いぶし液を薄め過ぎた
    原液を塗れば変化が速かったはず

茶色で変色を止める等、調整が必要な時にはいぶし液が良いですね!


↑筆者が実際に使ったのはNITTOのいぶし液です。


【成功談】硫黄だけで銀箔を焼いて(硫化させて)みた!【日本画】

いぶし液は諦めて、硫黄を乗せます!


次は、硫黄を直乗せして箔を焼きます!



やり方はとても簡単!

  1. 銀箔を貼る
  2. 硫黄を隙間なく乗せる
  3. 一日放置する


これだけです!





その結果がこちら!



膠が飛んでいたのか、部分的に白い箇所があります。


ですが、全体が理想通りの真っ黒になりました!

硫黄を乗せて放置するだけで、こんなに色が変わるんだね!





この黒い銀箔を使い完成させたのが、こちらの絵です。

2024「雨天決行」第十回日展
©DARENIHO


中央下から上にかけて、銀箔を下地にしています。


いぶし液で半端に焼けたまま放置していた下部の銀箔が、水の反射のような効果になりました。



【日本画】硫黄と黒化液を使い分けて銀箔を焼こう!


以上の失敗から、
箔焼きに使う硫黄も使い分けられると分かりましたね!

  • 広範囲を黒くする→硫黄粉末
  • 狭い範囲を色調整→いぶし液




そこで、この作品では画面左側の鉄棒を硫黄粉末で黒くし、中央付近はいぶし液で色幅を付けています。


マットな色にするよりも、動物園独特の使い古された感じが出た気がします。




まとめー【日本画】銀箔を焼く方法を実践してみた!写真付きで失敗例も紹介します!

最後までお読み頂きありがとうございます。

以上が銀箔を実際に焼く方法でした。


銀箔を「焼く」とは硫黄で硫化させ、変色させることでしたね。


箔焼きをする際は

  • 硫黄の粉末
  • 硫黄入りの入浴剤

などを使い分けて作品を作ってみて下さいね!


箔を焼く時の注意

箔を焼く時は他の入浴剤や薬品と混ぜないで下さい。
また、十分に喚起をして行うようにお願いします。




銀アクセを燻す液!


筆者はNITTOのいぶし液を使いました。
当記事では色の調節ができると書きましたが、
あくまでアクセサリー用です。
使用前に少量でお試し下さい。


硫黄100%の粉末


筆者は阿蘇山で買った粉末硫黄を
使っています!
こちらも同様に使えると思います。

余ったらお風呂に入れて!


六一〇ハップに近い成分の
入浴剤です。
九州近郊にお住まいなら大分で
購入することも出来ます!




箔焼きの方法はもちろん、
箔の貼り方や砂子のやり方、
膠や胡粉についての知識が網羅!
これ一冊あれば日本画は描けます!

遊びながら日本画を学ぶ!


箔焼きの温度加減による色の変化など
一つの技法について細かく書かれています。
マチエールの出し方を重視した本なので
多様な画風に応用できます。






銀箔関連の記事はこちら!

➡【日本画】銀箔を焼く方法―硫黄で硫化させて変色させよう

➡初心者向け!金箔や銀箔の貼り方【アート/日本画





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