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初心者向け!金箔や銀箔の貼り方【アート/日本画】

こんにちは、日本画家の深町聡美です。


皆さん、絵を作品展に展示するとき、

「自分の絵って、目立たないな……」
「あの作品より目を引く作品を作りたいな」


と思ったことはありませんか?



今回は、展示会でとても目を引く
銀箔、金箔などの箔の貼り方
を解説します!


「難しそう。シロウトでもできるの?」


と不安な方もご安心ください。

少しの道具が揃えば、意外にも
簡単に箔が貼れてしまいますよ!






いま、金箔を使った豪華な作品が人気だと
言われています。

あなたも次の展示では、金箔を使った作品で
お客さんの注目を集めてみませんか?


銀箔や金箔を貼る上で必要な道具と説明【日本画】

必要な物
  • 箔ハサミ
  • のり(フノリ、魚膠、三千本膠、ドーサ)
  • 金箔、銀箔など
  • あかし紙
  • 新聞紙や古雑誌
  • 脱脂綿
  • 針(あれば)

箔はさみ




竹製のピンセットです。
箔をつかむために用います。

木製なので静電気が発生せず、便利です。

普通のピンセット+シッカロール、
割箸や木製定規で代用できますが、
高価なものでは無いので持っておくと
さまざまな手間が省けます。



画材屋さんの金箔、銀箔などのコーナーで
購入可能です。

のり

日本画ではフノリ三千本膠ドーサを主に用います。



ドーサや三千本膠の場合、
通常よりも薄めに溶かすべきだとされています。

油絵やアクリルでは魚膠を使うようです。


膠は日本画画材コーナー、
フノリは和紙のコーナーに置いてあります。

金箔、銀箔など




画材屋さんで販売されています。


通販ではネイル用、食用などの用途でも
取り扱いがあるようですが、
工芸用で販売されている物を購入しましょう。




「純金箔」「五毛」は、金がほぼ100パーセントの金箔。

その他

「一号色」~「四号色 赤金箔」
「三歩色 青金箔」「水金箔」
「ホワイトゴールド箔」
など

さまざまな色がありますが、これは銀や銅を
混ぜて色を変えています。



銀箔やプラチナ箔の場合は100パーセントその成分です。





金箔、プラチナ箔、銀箔が高価で気後れするなら
「アルミ箔」「洋箔(洋金箔)」で練習するのが
おすすめですよ。



あかし紙


「写し紙」「あかうつし紙」とも言います。


ロウ引きされた紙で、
箔をこれに吸着させて(あかして)使います。

箔はそのままではペラペラすぎて
鼻息一つでとんでいってしまいます。

あかし紙にあかすことで、好きな場所に貼りやすく
なるのです。

※販売されているあかし紙は、金箔やプラチナ箔には
適さないとされていますが、純金箔はあかし紙で問題なく
扱えました。



「あかし紙」の意味とは?

大正時代の指南書『丹青指南』では
「垢をする」という表現がされています。

クルミの油分と、擦った熱で
箔が紙に吸着されると書かれています。

クルミの実を砕いて採った油を付けた「バレン」で箔紙を摩擦することを『垢をする』という。

手頃な台の上に置いて箔紙を「バレン」で擦ると、その熱と油気とで、箔紙は吸い付ける性質をもつものである。

丹青指南ー彩色雑事

金箔や銀箔の、基本の貼り方【日本画】


事前準備:エアコンを切る、薄い膠水を用意

手順は

  1. 箔をやわらかい場所に置く
  2. 箔のシワをのばす
  3. あかし紙に付着させる
  4. 膠を紙に塗る
  5. 紙に箔を乗せ、抑えて接着する
  6. 形を整える

です!


箔をやわらかい場所に置く

箔をやさしく箔はさみでつまみ、
重ねた新聞や古雑誌の上に置きます。

箔の間にはさまっている薄紙は捨てて構いません。

箔のシワをのばす

箔の上から細く長く息を吹き付け
皺をのばします。

その後あかし紙のツルツルの面を下にして、
箔に乗せます。



鼻息ひとつで簡単に箔が飛びますので
注意しながら行いましょう。

あかし紙に付着させる

竹ばさみで何度かこすり
箔をあかし紙に付着させます。

箔はさみがない時は、定規で代用可能
静電気を防ぐため、できれば木製のものを使いましょう。




箔があかし紙に付着します。

小さい部分に貼り付けたいときは、
この状態ではさみで切りましょう。

膠を紙に塗る

貼りたい部分に糊をうすく塗ります。


タプタプに溜まるのはNG!



上から箔を乗せた時に
糊がはみ出してしまいます。

また、接着力も低下し、貼り付け作業中に
はがれてしまいます。

紙に箔を乗せ、抑えて接着する

のりを付けた部分に箔を乗せ、
付着させます。

あかし紙の上から脱脂綿で軽く押さえます。

⑥形を整える

要らない部分はあかし紙の上から、
切るようにキワをなぞり、
丁寧に外側から切り取ります。

細かい部分は、針で直接箔をこすり取ります。

その後、脱脂綿で軽くはいて
余分な箔をおとしましょう。

一面に貼りたい時は、数ミリ重なるように貼るべし!


あやまってはがしすぎた場合
膠が十分に乾燥する前に引っ張ると、
接着したい部分の箔もはがれてしまいます。

誤ってはがしすぎた場合は、
小さく切った箔を上から貼って、
再び押さえます。





これで箔が貼れました!

これだけでも今のところ十分です。


というのも、金箔やプラチナ箔の場合は
ずっと色が変わりませんが、

銀箔や、一部の合金の箔は、
空気と反応して、変色してしまいます。

次は、銀箔の変色止めをほどこして、
作品の美しさが、
より長持ちするようにしてみましょう。

日本画の銀箔の変色(硫化)を止める方法

必要な物

以下の内、どれかひとつ

  • アクリル画用仕上げ用ワニス
  • ドーサ
  • 卵白
  • フィキサチフ
  • 大根のおろし汁




上記のうちひとつ選んで、箔の表面に
塗りましょう!



最もメジャーでオススメなのは、ドーサです。




ほかの材料は試したことがありませんが
伝統的な変色止めの手法として
紹介されています。





しかし、これらの変色止めも、
あくまで変色を遅らせるだけであり
完全に変色を抑えるのは難しいことを
覚えておきましょう。



もしも銀箔をそのままの状態で保ちたいときは
シルバーアクセサリー用の薬剤を使うのが
オススメです。





ほかにも、色みにこだわりがなければ
アルミ箔やプラチナ箔を貼るのもいいですね。




最も簡単な金箔・銀箔の貼り方はこれだ!

これで金箔・銀箔がきれいに貼れます!

でも、

「膠とかないんですけど……」
「注意する事が多くてめんどくさい」

という方が大半だと思います。

かくいう筆者もその一人です。


また、キラキラして綺麗ですし、
七夕の童謡にも歌われるのに、
後述する金銀すなご、ってやつです)



こども向けの絵画教室では
とても実践できないやり方ですよね。



なので、筆者が書籍や実体験を元にして
実際にやってみた、
最も簡単で手間いらずな箔の貼り方を、
ここに紹介いたします!


ぜひ今年の夏は、お子さんや家族で
キラキラの短冊やしおりを作って下さい!


⇒【金箔】七夕の歌「砂子」(すなご)の本当の意味とは?やり方も解説!【日本画】



必要な物
  • ぬるま湯で薄めた水のり、ボンド、洗濯のり
    (洗濯のりがおすすめです)
  • シッカロール
  • 脱脂綿やティッシュ

この方法はとても簡易的なやり方なので、
細かく形をけずったり、整えたりはしません。


必要な場合は前述の「基本のやり方」を参考に
整形して下さい。



また、ボンドは何十年も先までの長期保存には
適していません。

洗濯のりや膠、フノリを使いましょう。

①ぬるま湯でのりを薄め

ぬるま湯でのりを薄めます。


のりをインスタントコーヒーのキャップなどに
少量出し、お湯をかけながら筆で
少しずつ溶かしましょう。



一度に溶かそうとするとダマができてしまうので
要注意です。

②のりを、箔を貼りたい場所に塗


溶かしたのりを、
箔を貼りたい場所に塗ります。



のり溜まりができないように、
少し薄めに塗るのがベスト!

③薄紙の上から水をつける

箔の間にはさまっている薄紙の上から
筆で水を9か所に付けましょう。


こうすることで、薄紙に箔が吸着されます。

③箔をつまんで、のりの上に置く

シッカロールを付けた手や割箸、
ピンセットなどで箔をつまみ、
のりを塗った場所に置きます。


やさしく脱脂綿やティッシュで押さえましょう。



完成!!




のりを変えれば、どんな物にも貼り付けられます!






本格的な彫刻の色塗りから、
夏休みの自由研究にしおりやカードを
作ってみたり、
イラスト制作に使ってみたり

さまざまな応用ができます!



ただし、こすれには弱いので注意して下さいね!

貼るだけじゃない!日本画での銀箔・金箔の応用のやり方

今回の記事で、皆さんは箔貼りの手順を
イメージできたのではないかと思います。



ところが、

箔は、ただ貼るだけでは済みません!


もっともっと応用ができるのです!

①メノウへら(磨きへら)で擦る




天然のメノウを使ったへらで擦ることで、
金箔や銀箔は、よりつややかな光沢が出ます。

箔貼りに慣れたら、仕上げに使ってみましょう!

②砂子(すなご)

平教盛 – 平家納経 厳島神社所蔵, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8458052による

七夕さまの歌詞、覚えていますか?

ささの葉さらさら

のきばにゆれる

お星さまきらきら

きんぎん砂子(すなご)

世界の民謡・童謡

このきんぎん砂子こそ
金箔や銀箔で出来る応用技法のひとつなのです。

この技法を使ったもので有名なのが、国宝にも
なっている「平家納経」です。

平家が厳島神社に納めた豪華な装飾のお経ですね!

この技法では、金箔や銀箔を細かく砂状にして
のりを付けた部分にふりかけています。



⇒【金箔】七夕の歌「砂子」(すなご)の本当の意味とは?やり方も解説!【日本画】



③箔焼き

銀箔でしかできない。
そして銀箔の真髄にして銀箔を使う意味。

それこそが「箔焼き」です。



「焼く」とは言いますが、
実際に火で焼くわけではありません。



みなさんは、銀のアクセサリーを放置して
黒く、くすませてしまった事はありませんか?

また、温泉にアクセサリーを着けたまま入って
真っ黒にした事などもないでしょうか?




銀が黒くなる現象は、硫黄や酸に反応して
硫化しているために起こりますが、

箔焼きは硫化を人為的に起こし、
わざと黒っぽくする技法です。

黒く錆びている様子が、
火で焦がしたように見えるので
箔焼きと呼ばれているんですね。


⇒【日本画】銀箔を焼く方法―硫黄で硫化させて変色させよう

まとめー金箔や銀箔の貼り方


最後までお読み頂きありがとうございました!

金箔や銀箔を貼る基本の道具は以下の3つ。

  • 箔はさみ
  • のり
  • あかし紙


さらに簡単な方法として、
のりと箔だけを使うやり方もありましたね。


色を変えたり、粉末にして散らしたり
様々な使い方もありますので、
ぜひ制作に活用してみて下さい!



次回は箔を使った更なる技法、
砂子
箔焼き


をかんたんに出来る方法を
お伝えできればと思います!

【関連記事】
銀箔の焼き方をまとめました!

⇒【金箔】七夕の歌「砂子」(すなご)の本当の意味とは?やり方も解説!【日本画】

⇒【日本画】銀箔を焼く方法―硫黄で硫化させて変色させよう

⇒日本画のアルミ箔は焼ける?黒く変色する方法はあるの?【箔焼き】




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