こんにちは、日本画家の深町聡美です。
皆さん、絵を作品展に展示するとき、
「自分の絵って、目立たないな……」
「あの作品より目を引く作品を作りたいな」
と思ったことはありませんか?
今回は、展示会でとても目を引く
銀箔、金箔などの箔の貼り方を解説します!
「難しそう。シロウトでもできるの?」
と不安な方もご安心ください。
少しの道具が揃えば、意外にも
簡単に箔が貼れてしまいますよ!
いま、金箔を使った豪華な作品が人気だと
言われています。
あなたも次の展示では、金箔を使った作品で
お客さんの注目を集めてみませんか?
➡【日本画】銀箔を焼く方法を実践してみた!写真付きで失敗例も紹介します!
Contents
銀箔や金箔を貼る上で必要な道具と説明【日本画】
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/06/gold-1800504_1920-1024x680.jpg)
- 箔ハサミ
- のり(フノリ、魚膠、三千本膠、ドーサ)
- 金箔、銀箔など
- あかし紙
- 筆
- 新聞紙や古雑誌
- 脱脂綿
- 針(あれば)
箔はさみ
竹製のピンセットです。
箔をつかむために用います。
木製なので静電気が発生せず、便利です。
普通のピンセット+シッカロール、
割箸や木製定規で代用できますが、
高価なものでは無いので持っておくと
さまざまな手間が省けます。
画材屋さんの金箔、銀箔などのコーナーで
購入可能です。
のり
日本画ではフノリや三千本膠、ドーサを主に用います。
ドーサや三千本膠の場合、
通常よりも薄めに溶かすべきだとされています。
油絵やアクリルでは魚膠を使うようです。
膠は日本画画材コーナー、
フノリは和紙のコーナーに置いてあります。
金箔、銀箔など
画材屋さんで販売されています。
通販ではネイル用、食用などの用途でも
取り扱いがあるようですが、
工芸用で販売されている物を購入しましょう。
「純金箔」「五毛」は、金がほぼ100パーセントの金箔。
その他
「一号色」~「四号色 赤金箔」
「三歩色 青金箔」「水金箔」
「ホワイトゴールド箔」など
さまざまな色がありますが、これは銀や銅を
混ぜて色を変えています。
銀箔やプラチナ箔の場合は100パーセントその成分です。
金箔、プラチナ箔、銀箔が高価で気後れするなら
「アルミ箔」「洋箔(洋金箔)」で練習するのが
おすすめですよ。
あかし紙
「写し紙」「あかうつし紙」とも言います。
ロウ引きされた紙で、
箔をこれに吸着させて(あかして)使います。
箔はそのままではペラペラすぎて
鼻息一つでとんでいってしまいます。
あかし紙にあかすことで、好きな場所に貼りやすく
なるのです。
※販売されているあかし紙は、金箔やプラチナ箔には
適さないとされていますが、純金箔はあかし紙で問題なく
扱えました。
大正時代の指南書『丹青指南』では
「垢をする」という表現がされています。
クルミの油分と、擦った熱で
箔が紙に吸着されると書かれています。
クルミの実を砕いて採った油を付けた「バレン」で箔紙を摩擦することを『垢をする』という。
手頃な台の上に置いて箔紙を「バレン」で擦ると、その熱と油気とで、箔紙は吸い付ける性質をもつものである。
丹青指南ー彩色雑事
金箔や銀箔の、基本の貼り方【日本画】
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/06/gold-1800507_1920-1024x589.jpg)
事前準備:エアコンを切る、薄い膠水を用意
手順は
- 箔をやわらかい場所に置く
- 箔のシワをのばす
- あかし紙に付着させる
- 膠を紙に塗る
- 紙に箔を乗せ、抑えて接着する
- 形を整える
です!
①箔をやわらかい場所に置く
箔をやさしく箔はさみでつまみ、
重ねた新聞や古雑誌の上に置きます。
箔の間にはさまっている薄紙は捨てて構いません。
②箔のシワをのばす
箔の上から細く長く息を吹き付け、
皺をのばします。
その後あかし紙のツルツルの面を下にして、
箔に乗せます。
鼻息ひとつで簡単に箔が飛びますので
注意しながら行いましょう。
③あかし紙に付着させる
竹ばさみで何度かこすり、
箔をあかし紙に付着させます。
箔はさみがない時は、定規で代用可能
静電気を防ぐため、できれば木製のものを使いましょう。
箔があかし紙に付着します。
小さい部分に貼り付けたいときは、
この状態ではさみで切りましょう。
④膠を紙に塗る
貼りたい部分に糊をうすく塗ります。
タプタプに溜まるのはNG!
上から箔を乗せた時に
糊がはみ出してしまいます。
また、接着力も低下し、貼り付け作業中に
はがれてしまいます。
⑤紙に箔を乗せ、抑えて接着する
のりを付けた部分に箔を乗せ、
付着させます。
あかし紙の上から脱脂綿で軽く押さえます。
⑥形を整える
要らない部分はあかし紙の上から、
切るようにキワをなぞり、
丁寧に外側から切り取ります。
細かい部分は、針で直接箔をこすり取ります。
その後、脱脂綿で軽くはいて
余分な箔をおとしましょう。
一面に貼りたい時は、数ミリ重なるように貼るべし!
あやまってはがしすぎた場合
膠が十分に乾燥する前に引っ張ると、
接着したい部分の箔もはがれてしまいます。
誤ってはがしすぎた場合は、
小さく切った箔を上から貼って、
再び押さえます。
これで箔が貼れました!
これだけでも今のところ十分です。
というのも、金箔やプラチナ箔の場合は
ずっと色が変わりませんが、
銀箔や、一部の合金の箔は、
空気と反応して、変色してしまいます。
次は、銀箔の変色止めをほどこして、
作品の美しさが、
より長持ちするようにしてみましょう。
日本画の銀箔の変色(硫化)を止める方法
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/06/debby-hudson-pomybSOZsts-unsplash-edited-scaled.jpg)
以下の内、どれかひとつ
- アクリル画用仕上げ用ワニス
- ドーサ
- 卵白
- フィキサチフ
- 大根のおろし汁
上記のうちひとつ選んで、箔の表面に
塗りましょう!
最もメジャーでオススメなのは、ドーサです。
ほかの材料は試したことがありませんが
伝統的な変色止めの手法として
紹介されています。
しかし、これらの変色止めも、
あくまで変色を遅らせるだけであり
完全に変色を抑えるのは難しいことを
覚えておきましょう。
もしも銀箔をそのままの状態で保ちたいときは
シルバーアクセサリー用の薬剤を使うのが
オススメです。
ほかにも、色みにこだわりがなければ
アルミ箔やプラチナ箔を貼るのもいいですね。
最も簡単な金箔・銀箔の貼り方はこれだ!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/kids-1093758_1920-1024x683.jpg)
これで金箔・銀箔がきれいに貼れます!
でも、
「膠とかないんですけど……」
「注意する事が多くてめんどくさい」
という方が大半だと思います。
かくいう筆者もその一人です。
また、キラキラして綺麗ですし、
七夕の童謡にも歌われるのに、
(後述する金銀すなご、ってやつです)
こども向けの絵画教室では
とても実践できないやり方ですよね。
なので、筆者が書籍や実体験を元にして
実際にやってみた、
最も簡単で手間いらずな箔の貼り方を、
ここに紹介いたします!
ぜひ今年の夏は、お子さんや家族で
キラキラの短冊やしおりを作って下さい!
⇒【金箔】七夕の歌「砂子」(すなご)の本当の意味とは?やり方も解説!【日本画】
- 箔
- 筆
- ぬるま湯で薄めた水のり、ボンド、洗濯のり
(洗濯のりがおすすめです) - 水
- シッカロール
- 脱脂綿やティッシュ
この方法はとても簡易的なやり方なので、
細かく形をけずったり、整えたりはしません。
必要な場合は前述の「基本のやり方」を参考に
整形して下さい。
また、ボンドは何十年も先までの長期保存には
適していません。
洗濯のりや膠、フノリを使いましょう。
①ぬるま湯でのりを薄める
ぬるま湯でのりを薄めます。
のりをインスタントコーヒーのキャップなどに
少量出し、お湯をかけながら筆で
少しずつ溶かしましょう。
一度に溶かそうとするとダマができてしまうので
要注意です。
②のりを、箔を貼りたい場所に塗る
溶かしたのりを、
箔を貼りたい場所に塗ります。
のり溜まりができないように、
少し薄めに塗るのがベスト!
③薄紙の上から水をつける
箔の間にはさまっている薄紙の上から
筆で水を9か所に付けましょう。
こうすることで、薄紙に箔が吸着されます。
③箔をつまんで、のりの上に置く
シッカロールを付けた手や割箸、
ピンセットなどで箔をつまみ、
のりを塗った場所に置きます。
やさしく脱脂綿やティッシュで押さえましょう。
完成!!
のりを変えれば、どんな物にも貼り付けられます!
本格的な彫刻の色塗りから、
夏休みの自由研究にしおりやカードを
作ってみたり、
イラスト制作に使ってみたり
さまざまな応用ができます!
ただし、こすれには弱いので注意して下さいね!
貼るだけじゃない!日本画での銀箔・金箔の応用のやり方
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/06/gold-leaf-259496_1920-1-edited.jpg)
今回の記事で、皆さんは箔貼りの手順を
イメージできたのではないかと思います。
ところが、
箔は、ただ貼るだけでは済みません!
もっともっと応用ができるのです!
①メノウへら(磨きへら)で擦る
天然のメノウを使ったへらで擦ることで、
金箔や銀箔は、よりつややかな光沢が出ます。
箔貼りに慣れたら、仕上げに使ってみましょう!
②砂子(すなご)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/06/Heikenoukyou-edited.jpg)
七夕さまの歌詞、覚えていますか?
ささの葉さらさら
のきばにゆれる
お星さまきらきら
きんぎん砂子(すなご)
世界の民謡・童謡
この「きんぎん砂子」こそ
金箔や銀箔で出来る応用技法のひとつなのです。
この技法を使ったもので有名なのが、国宝にも
なっている「平家納経」です。
平家が厳島神社に納めた豪華な装飾のお経ですね!
この技法では、金箔や銀箔を細かく砂状にして
のりを付けた部分にふりかけています。
⇒【金箔】七夕の歌「砂子」(すなご)の本当の意味とは?やり方も解説!【日本画】
③箔焼き
銀箔でしかできない。
そして銀箔の真髄にして銀箔を使う意味。
それこそが「箔焼き」です。
「焼く」とは言いますが、
実際に火で焼くわけではありません。
みなさんは、銀のアクセサリーを放置して
黒く、くすませてしまった事はありませんか?
また、温泉にアクセサリーを着けたまま入って
真っ黒にした事などもないでしょうか?
銀が黒くなる現象は、硫黄や酸に反応して
硫化しているために起こりますが、
箔焼きは硫化を人為的に起こし、
わざと黒っぽくする技法です。
黒く錆びている様子が、
火で焦がしたように見えるので
箔焼きと呼ばれているんですね。
まとめー金箔や銀箔の貼り方
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/06/phonto-1024x577.jpeg)
最後までお読み頂きありがとうございました!
金箔や銀箔を貼る基本の道具は以下の3つ。
- 箔はさみ
- のり
- あかし紙
さらに簡単な方法として、
のりと箔だけを使うやり方もありましたね。
色を変えたり、粉末にして散らしたり
様々な使い方もありますので、
ぜひ制作に活用してみて下さい!
をかんたんに出来る方法を
お伝えできればと思います!
【関連記事】
銀箔の焼き方をまとめました!
⇒【金箔】七夕の歌「砂子」(すなご)の本当の意味とは?やり方も解説!【日本画】
⇒日本画のアルミ箔は焼ける?黒く変色する方法はあるの?【箔焼き】
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/02/analogillust.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/日本画のきじはこちら!.jpg)
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