8/1 新刊『日本画の絵具と色彩』発売されました!

【顔彩】呉竹、吉祥、上羽絵惣の違いは?色見本を比較してみた!

結論
  • 呉竹、上羽絵惣はサラッとした透明感ある使い心地!
  • 吉祥はモッタリ濃いめの使い心地!


こんにちは、日本画家の深町聡美です。


今回は日本画の入門画材とも言える「顔彩」を比較しました!


一言で顔彩と言っても、複数の製造メーカーさんがあり、
それぞれ違う個性の顔彩を作られています。


その中でも今回は

  • 吉祥
  • 呉竹
  • 上羽絵惣

の三つの顔彩を比較し、使い心地と発色を比較しました!


各色の比較色見本もありますので
ぜひ最後までお読み頂き、自分にピッタリの顔彩を探してみて下さいね!



今回使った顔彩はこの3種類です!






顔彩の
関連記事はこちら!




※水分量が常に同じ状態で正しく比較できているとは限りません。
またすべて筆者の主観による比較であり感じ方は人によって異なります。

Contents

呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の使い心地の違い

呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩ってどう違うの?

【結論】使用感の比較

透明感は
呉竹>上羽絵惣>吉祥

モッタリ感は
吉祥>上羽絵惣=呉竹

発色は
上羽絵惣>吉祥・呉竹


まずは呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩全体の使い心地を比べてみました!


透明感とモッタリ感の2点から見てみたところ、意外な違いがありました。


サラッとした顔彩ー呉竹と上羽絵惣

呉竹の顔彩

呉竹と上羽絵惣はサラッとしていて、透明感が出し易いです。


呉竹と上羽絵惣はサラッとした使い心地です。

サラッと系は少し硬く、水を多めに付けて丁寧に溶かしました。

硬い分、一度に絵具がたくさん筆に付かず、透明感ある絵に向いています。


呉竹と上羽絵惣で比較した際、呉竹の方が若干透明感が高く見えました。
また、色ムラは上羽絵惣の方が少ないようです。



また、呉竹と上羽絵惣は同じサラッと系の顔彩ですが、
同じ色名でも発色が違うものもあります。



次章では一色ずつ比較しますので、その発色違いも確認してみましょう。



モッタリした顔彩ー吉祥

吉祥の顔彩

吉祥はモッタリ重めで不透明にし易いです。


一方、吉祥はモッタリと濃い使い心地になっています。



モッタリというのは、
少しの水分量で絵具がたくさん溶ける感覚です。


少し粘度がありますが、たくさん溶ける分すぐに筆に色が付きます。



この特色は、屋外スケッチなど素早く描く必要があるとき便利ですね。

また色は濃くなり、不透明水彩のような趣です。

透明感を出したい時は、絵皿などで濃度を調整すると使いやすくなりますよ。


欠点として、よく溶ける分、すぐになくなることが挙げられます。



呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩を比較しました!

まずは呉竹・上羽絵惣・吉祥で重複していた11色を見ていきましょう!

臙脂(えんじ)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

臙脂

上が呉竹、中が上羽絵惣、下が吉祥です。

サラッと系の呉竹、上羽絵惣でも発色が少し違いますね。

呉竹の方が赤みがあり、上羽絵惣は黄色みがあるように見えます。

吉祥は発色が良く、全体的に暗めで色ムラは少ないです。


朱ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥


呉竹は一色の中の色幅大きいですね。
外側は濃くなり、内側は透明度が高いです。

上羽絵惣は発色が安定していますね。

吉祥は明度が低く、よく見ると膠ムラのような質感があります。


緑青(ろくしょう)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

緑青

おなじ緑青でも色がまったく違って面白いですね!

呉竹の緑青は水分量のせいか透明度が高くなっています。
もう少し濃い発色も可能です。

白緑・花白緑(びゃくろく・はなびゃくろく)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

白緑

類似色として吉祥は花白緑を使っています。
こちらもそれぞれ全く発色が異なりますね。


呉竹はミントグリーン系の鮮やかさ、
上羽絵惣は白っぽくマットな色合いです。


吉祥の花白緑は黄色みがあり、少し暗い色です。


白群(びゃくぐん)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

白群

吉祥の白群はこってりした濃い色合い。
呉竹は爽やかな発色が美しいですね。
上羽絵惣は水彩境界も出つつ、中心部も鮮やかな色です。

群青(ぐんじょう)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

群青

群青で際立つのは吉祥の発色です。
濃く存在感ある色で、まるで岩絵具の天然群青のよう。

呉竹はその次に濃い色になり、上羽絵惣は白群に近い色になりました。

美藍(びあい)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

美藍

群青より黄色みがある青色です。
呉竹と上羽絵惣は近い発色ですね。
呉竹の方が少し透明感があるように見えます。
吉祥は上二色を濃くした発色になりました。

黄土ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

黄土

呉竹は透明感ある発色です。
水彩絵具のような色になりました。
上羽絵惣は安定した発色です。
吉祥は少し青みがある黄土色ですね。

岱赭(たいしゃ)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

岱赭

呉竹の岱赭は赤茶系で透明感がありますね。
呉竹はこの中では青みがあります。
吉祥は赤茶が濃く暗い色合いです。

黒ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

黒はほとんど変わりませんが、
実物をよく見ると呉竹が一番発色が良く見えます。

白・胡粉(ごふん)ー呉竹、上羽絵惣、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 中:上羽絵惣 下:吉祥

白・胡粉ごふん

吉祥・上羽絵惣は胡粉という名前で収録されています。
よく見ると上羽絵惣の胡粉は赤みがありました。


呉竹と上羽絵惣の顔彩を比較!

ここからは呉竹と上羽絵惣の比較です!

紅梅(こうばい)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

紅梅

紅梅は特に硬い質感でした。
そのため呉竹も上羽絵惣も透明感があるピンク系の色です。
呉竹の方が硬さがありピンク色でした。
上羽絵惣は赤みが強いです。

紅(くれない)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

上羽絵惣は粒子感が強く、少し青みがあります。
呉竹は粒子が細かく染料のような雰囲気。
オレンジ系の色に発色します。

山吹(やまぶき)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

山吹

以外と発色が異なり、呉竹は赤みがある黄色、上羽絵惣は黄緑色に近い黄色です。

呉竹の黄土色は水彩境界がはっきり見えますね。

鶯色・鶯緑(うぐいすいろ・うぐいすろく)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

鶯色・鶯緑

読み間違えて並べてしまいましたが、鶯色と鶯緑は厳密には別の色です。

鶯色は黄緑色の中でもやや暗めでくすんだ色合い。

鶯緑は鶯色よりも緑が強調された、やや明るく鮮やかな色合いです。

呉竹の鶯色は抹茶色に近い鮮やかな緑。
上羽絵惣の鶯緑はより青緑で暗い色をしていました。

若草・若葉(わかくさ・わかば)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

若草・若葉

こちらも厳密には別色ですがまとめています。

呉竹の若草は緑が強い緑色。
少し深みがある黄緑と言えます。


上羽絵惣の若葉はより黄緑に近いですね。

画像では見づらいですが、
若草と比較して白っぽい発色になりました。


黄草(きぐさ/きくさ)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

黄草

黄草はどちらも同じ名称ですが、呉竹は硬く、薄い発色になりました。

上羽絵惣は呉竹の鶯色を明るくした色合い。
発色良く使いやすそうです。

青草(あおくさ)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

青草

画像では同じ色になってしまいましたが、
上羽絵惣の青草はもっと青みが強いです。

染料のようにスッと紙に染み込むような透明感ある鮮やかさが良いですね。


呉竹の青草は緑青にちかい緑です。
色幅が広く、遠近感も出し易そうですね。


水(みず)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

白っぽい水色が白群なら、白っぽくない水色はこちらです。

どちらも透明感があり、発色も良いですね。


藍(あい)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

黒っぽい青色の藍。
呉竹は黒さの中に鮮やかな青が見えています。

上羽絵惣はより暗く黒に近い藍色。
鉄紺に近い発色になります。

紫(むらさき)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩の違い

上:呉竹 下:上羽絵惣

呉竹の方が紫の発色が濃く、染料のような濃い色になります。

上羽絵惣は膠のテリが強く、粒子感もあります。

殆どの顔彩が上羽絵惣の方がムラが少なくマットな色になりましたが、紫は呉竹の方が粒子が細かく、溶けやすい感覚でした。


牡丹(ぼたん)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩

上:呉竹 下:上羽絵惣

牡丹

同じ色名ですが、こちらも全く違う色!

呉竹の牡丹は紅梅と同じく硬めの使い心地で、薄くなりました。

上羽絵惣は呉竹の色そのままに濃く筆に付着しました。

実際に塗ってみると筆の含みで発色が大きく変わることが分かります。


焦茶(こげちゃ)ー呉竹、上羽絵惣の顔彩

上:呉竹 下:上羽絵惣

焦茶

牡丹に引き続き意図が異なります。
呉竹は黒が強い茶色で、上羽絵惣は岱赭に近い色になりました。

呉竹と吉祥の顔彩を比較!

ここからは呉竹と吉祥の比較です!

黄・鮮光黄(き・せんこうき)ー呉竹、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 下:吉祥

黄・鮮光黄

呉竹は黄色で、吉祥の12色セットでは鮮光黄として収録されています。

どちらも青みがある黄色ですが、鮮光黄の方が黄緑に近いです。

ただこれは、筆者が吉祥の方を使い古して混色されてしまった可能性もあるので、過信はしないで下さい。

吉祥の方は膠のテリがありますが、呉竹の方はマットでムラのない発色です。


洋紅(ようこう)ー呉竹、吉祥の顔彩の違い

上:呉竹 下:吉祥

洋紅

呉竹は透明感ある赤とピンクの中間色です。

一方吉祥は重厚感ある鮮やかな赤になりました。


顔彩の硬さでここまで発色が変わるのです!

まとめー【【顔彩】呉竹、吉祥、上羽絵惣の違いは?色見本を比較してみた!



最後までお読みいただきありがとうございます!

以上、呉竹、吉祥、上羽絵惣の顔彩を比較した結果です。


前回、モッタリ系の吉祥とサラッと系上羽絵惣の比較をしました。

この二つには大きな違いがありましたが、
今回、同じサラッと系の上羽絵惣と呉竹を比較しても色の出方が変わることが分かりました!



三者三様、異なる色が出るんですね!
改めて各メーカーさんの努力と、個性を味わうことが出来ました。




そして、ここまで違うとなると、
作家さんによって相性のいい顔彩も違うということです。




ぜひ今回の記事を参考にして、気が合いそうな顔彩を選んでみて下さい!



実際に使った顔彩はこちら!

サラッとして透明感ある使い心地の顔彩!
同じ色の中に透明度で色幅が生まれます!
大型店舗の文具コーナーでの取り扱いが多く
入手しやすいのも特徴です。



モッタリ系の顔彩です。
暗めの発色で不透明な色合いですが、
スケッチや渋い色合いが好みの方にはオススメです。
筆者の最推しはこれです。


胡粉ネイルで有名な上羽絵惣の顔彩です。
サラッと系ですが一番安定した発色でした。
水彩風にも厚塗り風にも使え、
万人にオススメできる顔彩です。



顔彩でいろいろやってます!






前の記事はこちら!

次の記事はこちら!

乞うご期待!