8/1 新刊『日本画の絵具と色彩』発売されました!

藤黄(とうおう/しおう)とはどんな色?【日本画絵具も解説!】


こんにちは、日本画家の深町聡美です。


日本の伝統色「藤黄」



現在でも日本画絵具売場などで
見かける色ですよね。


ですが、皆さんはこの色の読み方を
ご存じですか?


この「藤黄」
「とうおう」「しおう」の二種類の
呼び名があるのです。


ではなぜ、そんな難しい事になってしまったのか?

結論から言うと、
雌黄(しおう)という猛毒絵具と混同されたから!


今回の記事では

  • 藤黄の原材料、
  • 日本ではどうやって使われていたか

この二つを中心に解説していきます!



藤黄とはどんな色?

和名読み方とうおう/しおう
カラーコード#F2C11C
RGB(242, 198,28)
マンセル値10YR 8.0/12.0
英名ガンボージ gamboge


藤黄は「とうおう」「しおう」と読み、
わずかに赤みの黄色をしています。



なんで藤黄と書いて「しおう」と読むの?

DARENIHO

それは藤黄の原料になった、ある鉱物のせいです!



藤黄の絵具の原料は?

有毒鉱物「雌黄」による藤黄

パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=350560
DARENIHO

もとは黄色い石の絵具が「雌黄」と呼ばれていたそうです!



元々この黄色い絵具の材料は
有毒鉱物「雌黄」です。


石黄という石が原石です。

石黄ですから、見た目は美しい黄色い石!


ですが、この石黄の成分は三硫化二砒素【As2S3】

簡単に言うとです!


⇒【危険】絵の具には毒性があるって本当!?【子供が食べても大丈夫?】

雄黄の毒性はヒ素によるものだが、ヒ素単体よりも水溶性が高いため、劇物とは言われないが人体に対する毒性は強く、毒物として法令で指定されている[5]。保護眼鏡と手袋を使い、また粉塵を吸い込まないようマスクをするなどして、塊でも粉体でも人体に直接に触れる事のないように取り扱う。保存には専用の容器を用意し、また飲食をする場所に持ち込むべきではない。容器外に飛散したり環境中に放出される事は厳に防ぐべきである。

雄黄|wikipedia




この石黄を中国では
「雌黄」(しおう)と呼んでいたのです。


一方で、石黄と共に採石される「鶏冠石」を
「雄黄」と呼びます。



日本では石黄、
つまり中国での雌黄を「雄黄」と呼んでおり、
混同されて用いられがちです。

  • 中国
    石黄=雌黄 鶏冠石=雄黄
  • 日本
    鶏冠石=雌黄


有毒ではありますが、
雌黄は古来から絵具として用いられていました。

絵具としては耐光性が弱く、色褪せやすいとされます。



  • もともと有毒な黄色い石を「雌黄」(しおう)とよんで絵具にしていた!


雌黄と藤黄、どっちも「しおう」なんだ!



金の絵具と呼ばれたレア絵具

石黄の英名Orpiment(オーピメント)は
ラテン語でAuripigumrntum、
「金の絵具」と呼ばれました。

現在では強い毒性が認知されており
貴重な絵具のひとつです。



「ガンボージ」の樹脂による藤黄

ガンボージの木と果実
YouTube|FRUIT ADDICT

もとは有毒な黄色い石の絵具が「しおう」だったんだね。

DARENIHO

ですが危険なので植物性のものに代わっていきました。



藤黄は現在はインド、ミャンマー、タイなど
東南アジアの常緑高木樹、ガンボージの樹脂が原料です。



もともと使われていた雌黄は危険な砒素化合物


これではとても絵具として使いにくいですよね。



そこで、水に溶けるガンボージの樹脂を
雌黄の代替とし、
江戸時代から「藤黄」と呼ばれました。



ただガンボージにも毒があるようです。




また、藤黄は草雌黄、銅黄、同黄とも呼ばれ、
奈良時代には黄色の絵具として使われています。


DARENIHO

雌黄と藤黄が混同されて「しおう」になったんだ…

DARENIHO

この辺りの変遷は諸説あるようです。


日本画での藤黄の特徴は?



現在使われているガンボージによる藤黄は、
透明感があり鮮やかな黄色をしています。



絵具の形状としては、固められた樹脂です。

現在絵具屋三吉で購入することができます。


漆を採る時のように、ガンボージの樹皮を傷つけ、
樹脂を採取しています。

日本画の藤黄の使い方


藤黄の使い方は簡単!

  1. 藤黄に水を付け絵皿に擦る

なんとたったのワンステップ!


摩り下ろすだけで、
膠を入れる必要もありません。



ただ、絵具としては使いやすくても
耐光性に乏しく、褪色しやすいので注意しましょう。 

DARENIHO

樹脂は乾燥させて保存しましょう。
また、使う分だけ溶かしましょう。
腐ります。



藤黄はどんな所に使われたの?

David MarkによるPixabayからの画像



福田邦夫著「色の名前はどこからきたか」
によると、
藍蝋を混ぜて黄緑色として使われていました。

(ただし雌黄表記)


この黄緑は今の鮮やかな草の色ではなく、
「いかにも日本的」な渋い黄緑。

苔色に近いとされています。


ただ、これが日本の草木の雰囲気を
表現しやすい色だったとされています。

さらにこの苔色は金泥や金箔、
白木にもよく調和していました。


まとめー藤黄(とうおう/しおう)とはどんな色?【日本画絵具も解説!】



以上、藤黄の解説でした!


藤黄は「とうおう」とも「しおう」とも
呼ばれる黄色い絵具!



元は雌黄(しおう)という絵具だったのが
植物の藤黄(とうおう)と混同されてしまったのです。



幸い、藤黄の原料であるガンボージの樹脂は
通販で入手できます!


皆さんも古代の藤黄に思いを馳せて
絵を描いてみませんか?








丹青指南現代語訳

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による



超充実なのに
古すぎて読みにくいのが難点の
丹青指南を趣味で現代語訳しました。

こちらの原文は
国会図書館デジタルコレクションで
無料でご覧いただけます。


正しい知識や正確な訳が欲しい方は
ぜひ日本画画材と技法の秘伝集
お買い求めください。



電子書籍&
ペーパーバック発売中!


原文が本で読めるようになりました!


一、()(おう)

この絵具は、粉絵具ではなく、中国の一地方から産出する一種の樹脂である。

なので普段から溶いてそのままにしていると、黄色い汁が腐敗しやすいので、使用するたびに水で摺って使うのが良い。






前の記事はこちら!

⇒カーマイン(洋紅)色は原料も意味も虫だった!【日本の伝統色と絵具】

次の記事はこちら!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です