こんにちは、日本画家の深町聡美です。
群青、紺青、ウルトラマリンに白群…
きれいな青色ってたくさんありますよね。
ですが、この四つの色に
仲間はずれがいるのは分かりますか?
それもありますが、
群青・紺青・白群は同じ仲間の絵具で
ウルトラマリンは全く別の絵具なのです!
今回は群青色と白群色、
そしてその絵具について解説します!
- 群青色と白群色について
- 群青色と白群色の英語名
- 群青色とウルトラマリンの違い
- 天然群青と天然ウルトラマリンの原料
- 日本画の天然群青絵具の使い方
紺青色はこちらの記事をチェック!
⇒紺青色とはどんな色?群青と違うのは高貴さだった!【日本の伝統色】
Contents
群青色/白群色とはどんな色?
群青色とはどんな色?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/IMG_6022.jpg)
和名読み方 | ぐんじょういろ |
カラーコード | #223B80 |
RGB | (34, 59,128) |
マンセル値 | 7.5PB 3.5/10.5 |
英名 | ウルトラマリン Ultramarine マウンテンブルー |
誕生日色 | 5月7日 |
群青色は「ぐんじょういろ」と読みます。
「わずかに紫みの青」
とも表現される濃い青色です。
白群色はどんな色?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/IMG_6025.jpg)
和名読み方 | びゃくぐんいろ |
カラーコード | #A7C0E6 |
RGB | (167, 192,230) |
マンセル値 | 3B 7.0/4.5 |
英名 | 勿忘草色 forget-me-not スカイブルー sly blue |
誕生日色 | 8月13日 |
白群色は「びゃくぐんいろ」と読みます。
本来は群青の絵具の中で、
色が薄い物を指していました。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
今回は「群青」も「白群」も、まとめて解説いたします!
群青色/白群色を英語で言うとウルトラマリン/勿忘草!
群青色はウルトラマリン!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/03/lapis-lazuli-g141a96870_1280-1024x678.jpg)
群青色は英語では「ウルトラマリン」です。
ウルトラマリンは天然石のラピスラズリを
原料とした美しい絵具。
ラピスラズリという言葉も、
「群青色の石」を意味しています。
(lapis=石、lazuli=群青、青)
ただ、後述しますが、
群青(絵具)の原料はラピスラズリではありません。
岩群青=マウンテンブルー?
wikipediaの藍銅鉱のページでは
英名マウンテンブル―とされています。
しかし調べたところ、
・会社HPがトップに出てくること
・weblioでは岩紺青とされていること
からウルトラマリンを採用しています。
白群色はスカイブルー!だけど…?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/cosmetic-oil-g655bf1c52_1280-1024x682.jpg)
白群色は英語では「スカイブルー」「ペールブルー」
が近い色です。
しかし筆者がもっと近いと感じたのは
「勿忘草色」…「Forget me not blue」
(フォーゲット ミー ノット ブルー)
ドイツの伝説が由来となっている花の色です。
「伝統色のいろは」さんから伝説を引用します!
ある日、ドナウ川の辺りをルドルフという名の騎士とその恋人ベルタが歩いていた。ベルタが対岸に可憐な青い花を見つけると、ルドルフはベルタのためにその花を摘もうとした。
対岸に渡り花を摘むことができたルドルフだったが、帰りに足を滑らせドナウ川の急流に落ちてしまう。川の流れは激しく「このまま命は助からない」と悟ったルドルフは、手にした花を岸辺のベルタに投げ渡し「私を忘れないで!」との叫びを残したまま、ドナウ川の激流に姿を消したのだった。
ベルタはその言葉通りにルドルフを生涯忘れず、この青い花を飾り続けた。
伝統色のいろは/勿忘草とは?
福田邦夫氏によると
西洋では青色は「神様がいる天の色」、
特別な色だったと言います。
なので「勿忘草」、
そして「Love in a mist」(霧の中の愛)
という詩的な色(花)の名前があるのではと
考察されていました。
日本では「白群」という、
「群青の細かいものです」
という名前しかないので、ギャップがすごいですね!
ただ、日本の場合、染料が色名の基準になっています。
臙脂や藍色も染料ですよね!
そのため、染めるのに手間が掛かり、
色褪せにくい、濃い色ほど高級になります。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
日本は薄い色に対してドライな姿勢です。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_1_idea.png)
日本と西洋では色に対する価値観が違ったんだね!
群青(絵具)とウルトラマリンの違いは原料にあり!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/名称未設定-6-1.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
ラピスラズリと群青色の違いって何なの?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
絵具の原料が違います!
前述したように、群青色はウルトラマリンと訳されます。
- ウルトラマリンはラピスラズリが原料
- 群青=ウルトラマリン
ということから、
- 群青(絵具)の原料はラピスラズリ
と誤解されがちです。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_2_surprise.png)
群青の絵具ってラピスラズリじゃないの!?
日本画で使う「群青」という絵具は
「天然」と書かれている場合は
「アズライト(藍銅鉱)」という鉱物が原料です。
一方、ウルトラマリンの原料であるラピスラズリは
「ラズライト(青金石)」が主成分です。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
天然群青の原料はアズライト、ウルトラマリンの原料はラズライト。
成分的には全く別の絵具なんです。
色としては、
天然群青は天然ウルトラマリンより、若干赤みが少ない
とされています。
美しすぎる鮮やかな青!
天然の絵具ってなに?
日本画の絵具には「天然」と表記があるものがあります。
これは「天然自然の物由来」ということ。
土とか、岩、天然石が原料という意味です。
現在、多くの絵具が化学的に作られていますが、
群青や緑青など天然由来の絵具もあります。
天然の絵具は人工的な絵具よりも
落ち着いた色合いと言われています。
⇒【関連】絵具の顔料とは何だろう?種類を分かりやすく解説します!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/animalface_inu.png)
ここからは群青の原料「アズライト」とウルトラマリンの原料「ラピスラズリ」について見ていこう!
日本画の天然群青(絵具)の原料「アズライト」
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/03/dulcey-lima-qsVdNQubLrQ-unsplash-1024x683.jpg)
アズライト(藍銅鉱)の主成分は
2CuCo3.Cu(OH)、塩基性炭酸銅、比重は3.8です。
アズライトはマラカイト(孔雀石)と
いっしょに産出されます。
マラカイトも日本画絵具の「天然 緑青」として
使われているんですよ。
ただしマラカイトよりも安定性が低く、
貴重な鉱物です。
アズライトがマラカイトになることはあっても、
その逆は無いのだとか…
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
絵具としてはどんな特徴があるの?
絵具としては
飛鳥時代に中国から渡来したと言います。
色味によって金青(紺青)や
空色、白青と呼ばれていました。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
同じアズライトからできた絵具でも、色が違ったんです。
そして、天然の絵具最大の特徴が、
「加熱したら色が変わること」
アズライトからできた群青(絵具)は
加熱すると黒青色になります。
つまり、同じ「群青」という名前の絵具でも
まったく違う色の絵具として使えたのです。
ウルトラマリンの原料「ラピスラズリ」
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/ring-g63cad4969_1280-1024x682.jpg)
ラピスラズリの主成分、ラズライト(青金石)は
(Na,Ca)8(AlSiO4)6(SO4,S,Cl)2
比重は2.4です。
天然ウルトラマリンの原料である
ラピスラズリも非常に美しい天然石です。
「地中海のかなたから」という意味で
ウルトラマリンと呼ばれているのは有名な話ですよね。
日本では「瑠璃」と呼ばれていました。
正倉院には「瑠璃の杯」が収められていますが、
初めて色名として文献に登場したのは鎌倉時代!
現在のラピスラズリはアフガニスタン産が多いですが
日本にやってきた当時のラピスラズリ(瑠璃)は
インド原産でした。
日本画の岩絵具としての評判は
アズライトの群青に劣るとされ、
日本画 画材と技法の秘伝集
- 絵具を焼いても黒く変化しにくい
- 筆の澱が悪く、筆に溜まるので困る
と言われています。
まだ読んでないですが
おもしろそうなので張り!
日本画の群青で何を描いていたの?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/KORIN-Irises-L-1024x429.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
群青と白群の絵具はどんなところで使われていたの?
狩野派の指南書「丹青指南」によると
岩石または、日本、中国の男女の服装、
そのほか諸々の器具等の着色に使用していたと言います。
ですが、一般的に有名な物では
下記の三点があげられます。
- 尾形光琳の「燕子花図屏風」(18世紀初め)
- 酒井抱一の「夏秋草図」(19世紀)
- 福田平八郎の「漣(さざなみ)」(1932年)
これらの作品には日本画の群青絵具が使われています。
白群は、薄紫の花で使われていたと記録が残っています。
藤および野菊のような、薄い紫色の草花では、
丹青指南
初めに浅葱を塗って、それを臙脂で隈取り、
その上を、この白群青で隈取りして完成させる。
ただし、この彩色方法は、
他の様々なものにも施せる。
日本画の群青の種類
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/blue-1048752_1920-1024x768.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
白群色も紺青色も群青色も、同じアズライトが原料ってどういうこと?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
アズライトの質や、砕いたときの粒子の細かさで、色が変わるんです!
皆さんは天然石アクセサリーや
鉱物標本を見たことがありますか?
同じ名称の石でも、見た目が違いますよね。
アズライトも天然の鉱物です。
なので、同じアズライトでも
- 色が濃い石
- 色が薄い石
があるんです。
これが一つ目の「色の違い」です。
もう一つは、「粒子の細かさ」。
砂場の砂は、細かいと白っぽく、
粒が大きいと茶色っぽく見えますよね。
アズライトを砕いたときも同じです。
- 粒子が大きいと、濃い青
- 粒子が小さいと、白っぽい青
というように色が変わります。
これによって
「白群(白群青)」や「群青 甲・乙」などと
呼ばれ方が変わるのです。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
特に濃いアズライトの粉末を紺青と呼び、
粒子が細かく白っぽいのは白群などと呼びます。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/animalface_inu.png)
現在は粒子の大きさごとに番号が付けられているね。
日本画の群青の作り方
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/4E88F894-1B76-4378-A43D-561EC00B07DA-1024x672.jpeg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
日本画で群青を作る時の手順は?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
紺青と同じ手順でOKです!
基本的には、紺青を使う時と同じ!
つまり普通に岩絵具を使う手順で
溶けばOKです!
ムラなく塗るには膠の濃淡や
筆の水加減が大切ですが、
そこは実際に塗って覚えましょう!
ひとつ違うテクニックがあるとすれば
「二度溶き」がおススメされている所です!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
では、二度溶きのやり方を解説していきます!
日本画の群青で二度溶きをしてみよう!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/IMG_0586.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
まずは以下の手順で岩絵具を溶きましょう!
- 絵皿に群青を出す
- 膠を入れて指でよく混ぜる
- 水を適量加えて指で溶く
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/animalface_inu.png)
ここから二度溶きの手順になります。
- 上記の③で水を加えたまま放置する
- その上澄みを捨てる
- 絵具を乾かす
- 再び膠を加えて指で練る
- 適量水を加えて、混ぜる
この方法で群青の二度溶きは完了です。
天然群青の絵具を使う時は、
このやり方で使ってみましょう!
まとめーアズライトを使った美しい岩絵具「群青色」の世界
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/02/IMG_6022.jpg)
最後までお読み頂きありがとうございます。
以上が群青および白群の色の秘密、
そして日本画絵具の使い方でした!
群青も紺青も白群も、
実は「アズライト」という同じ鉱物からできた絵具でしたね!
ですがウルトラマリンは「ラピスラズリ」という
別の鉱物からできた絵具でした。
絵具の名前と色の名前が混乱しやすいですが、
「深い青色」にこれだけ多くの名前があるのは
世界的にに人気がある色だからです!
天然アズライトやラピスラズリは
日本画材屋さんで入手できるので、
みなさんも天然絵具を使ってみて下さいね!
天然の群青を使ってみよう!
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天然ウルトラマリンの作り方を
研究した本です!
天然ラピスの油絵具!
天然成分を使った絵具のシリーズ!
ラピスラズリを使った高級絵具です。
天然アズライトの岩絵具!
これぞ日本古くから使われた
天然岩群青の絵具です!
鮮やかな青を楽しみましょう!
丹青指南現代語訳
![狩野永徳唐獅子図](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/Kano_Eitoku_002-1024x515.jpg)
超充実なのに
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一、群青
この絵具は、紺青と同質で、
色がやや薄いだけのものなので、
使い方塗り方ともに、紺青と同様でよい。
岩石または、日本、中国の男女の服装、
そのほか諸々の器具等の着色にも使用する。
ただし、岩絵具の粒が粗いものを
ムラなく塗るには、膠の濃淡、および、
筆に含める絵具の加減を覚えることが大切だ。
しかし、この加減は文章化が難しい。
塗る部分が細かく小さい時は、単に一回で塗って完成させる。
一、薄群青 甲
この絵の具は、群青よりは少し色が薄く、粒が細かい。
使い方は全て群青と同様で良い。
一、薄群青 乙
この絵の具は甲種よりも、さらに色が薄く粒が細かい。
全て甲種と同様で良い。
一、白群青
この絵の具は、群青の中で最も色が薄く、
粒が細かいもので、全て薄群青と同様に使って良い。
藤および野菊のような、薄い紫色の草花では、
初めに浅葱を塗って、それを臙脂で隈取り、
その上を、この白群青で隈取りして完成させる。
ただし、この彩色方法は、
他の様々なものにも施せる。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/04/phonto-15-1024x397.png)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/02/analogillust.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/日本画のきじはこちら!.jpg)
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