こんにちは、日本画家の深町聡美です。
「顔料系の方が色がいい…」
「染料系は色があせる…」
などの話を聞いたことはないですか?
絵具だけでなく、化粧品や印刷など
多くの分野で「顔料」という言葉は使われます。
ですが、顔料の意味や種類を答えられる方は
結構少ないかもしれません。
この記事では顔料の意味と
顔料の6つの種類について解説します!
- 絵具について詳しくなれる!
- 顔料と染料の違いがわかる!
- 顔料の種類がわかる!
Contents
顔料とは色の粉のこと!
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顔料は色の素である粉末の事なんだ!
顔料(がんりょう)は
絵具の「色の素」になる成分です。
皆さん、
「フェルメールの好んだ青色は、
ラピスラズリから出来ている」
という話を聞いたことがありませんか?
ラピスラズリとはアフガニスタン等で
採掘される、美しい青色の鉱物です。
不透明な青色に金の粒粒が散りばめられた
夜空のような石。
上質なものはジュエリーに加工されます。
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このラピスラズリを砕いて青い粉末にしたのが
青い絵具の素。つまり顔料なのです。
要するに顔料=色の粉です。
顔料=色の粉
ただし水や油に溶けないもののみ
顔料と呼びます。
水や油に溶ける色の素は「染料」と呼ばれます。
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顔料系、染料系っていうのは
こういう事だったんだね!
顔料=色の粉
ここまでわかれば大丈夫です!
ここからは少し応用編。
顔料の種類について解説します。
顔料の種類①ー着色、体質、機能性顔料
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/08/IMG_3407-1024x598.jpg)
顔料には大きく分けて3つの種類があります。
- 着色顔料ー色の素
- 体質顔料ーかさまし剤
- 機能性顔料ーラメやパール素材
着色顔料は「ザ・色の素」です。
ちょっと想像してみてくださいね。
あなたは絵具職人です。
手元には青い顔料、
ラピスラズリを砕いて粉にした物があります。
着色顔料=色の素
ですがラピスラズリは高価な鉱物。
あなたは少しの粉末しか入手できませんでした。
これでは十分な量の絵具が作れません!
そこで出てくるのが「体質顔料」!
体質顔料は白~透明の顔料です。
少ないラピスラズリの粉末に透明な体質顔料を
混ぜれば、少量のラピスラズリでもたくさんの
青い粉が出来上がりますよね!
油絵の技法、「白亜地」の代用にも使われる
「炭酸カルシウム」も体質顔料として使用できます。
日本画では水晶末、方解末などが使われます。
体質顔料=かさまし剤
ラピスラズリ粉末と体質顔料で
十分な青い絵具ができそうです。
しかしあなたは、キラキラしたラメ効果も
入れたくなりました。
そんな時に使うのが「機能性顔料」!
機能性顔料=ラメやパール素材
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機能性顔料は蛍光、耐水など化学的な
効果を持った顔料全般を指します。
この中でもラメ、パールなどのキラキラ系顔料は
光干渉系顔料、光輝顔料、エフェクト顔料等と
呼ばれていますね。
ラピスラズリ:着色顔料
炭酸カルシウム:体質顔料
ラメ:機能性顔料
ハンドメイドショップでも見かける
手作り絵具。
作家さんが特別な手法で作っているのですが、
基本はこの3種類の顔料を混ぜ合わせることなのです。
顔料の比率や種類によって
好みの色や効果を作ることができるので、
既存の絵の具にない色も作れるというわけなのです。
まれに混ぜると化学変化で有害物質が発生する
組み合わせがあります。
顔料の種類②ー無機、有機顔料
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顔料にはもう一つ、メジャーな分け方があります。
それは無機顔料と有機顔料。
絵具作りをイメージしやすいのは
「着色、体質、機能性顔料」ですが
教科書に載っているのはこちらの分類方法です。
無機顔料は天然鉱物のほか、
金属を化学反応させて作った顔料です。
要するに、
無機顔料=金属とか鉱物からできた顔料
ということ。
先ほどのラピスラズリの絵具や
日本画の天然岩絵具も無機顔料ですね。
一方有機顔料とは石油などから化学的に合成された
顔料です。
有機顔料=石油系からできた顔料
有機物は炭素を含んだものを言いますから
石油とか石炭とかそういった物をイメージすれば
分かりやすいです。
無機顔料=金属とか鉱物からできた顔料
有機顔料=石油系からできた顔料
天然無機顔料(天然顔料)
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無機顔料ですが、
さらに二種類に分けられます。
- 天然無機顔料
- 合成無機顔料
「天然の無機顔料と、
合成でできた無機顔料がある」
ということです。
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よくわからなくなってきた!
顔料の種類をまとめるとこうなります。
- 無機顔料ーー天然無機顔料
ー合成無機顔料 - 有機顔料
天然無機顔料はとてもシンプル!
天然で採れる無機顔料のことですから、
ラピスラズリのような天然鉱物の顔料です。
砂とか、土とか、鉱物を砕いて
精製して作った顔料のことなんですね。
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天然無機顔料にはどんな特徴があるの?
色の特徴としては、
自然物なので彩度が高い色は少なく
落ち着いた色が多い事が挙げられます。
また、鉱物そのものの色なので
色褪せしにくいのが特徴です。
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どんな色があるの?
ラピスラズリの他に有名なのは
アズライト、マラカイトですね。
アズライトは日本画絵具(岩絵具)の
群青・紺青に使われます。
マラカイトは日本画絵具(岩絵具)の
緑青ですね。
クレオパトラが眼病予防として目の周りに
塗っていたことでも知られています。
合成無機顔料(合成顔料)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/06/スクリーンショット-780.png)
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合成顔料って何?
以降は完全に化学の世界なので、
詳細が気になる方は専門書をご購入されるのが
いいですよ。
合成顔料は化学的に作った顔料です。
コバルトブルーが有名ですね。
他に馴染み深いのはカドミウムイエローでしょうか。
1704年に紺青(プロシアブルー、ベルリンブルー)
が作られて以降、さまざまな色が開発されました。
色褪せがしにくいためペンキにも使われます。
有機顔料
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有機顔料って何?
有機顔料とは石油から化学的に作った
顔料のことを言います。
現在使われている顔料のほとんどは
有機顔料なんだとか。
絵描きさんはアゾなんとかや、
フタロシアニンなんとかとかという絵具を
聞いたことがあるのではないでしょうか。
これらも有機顔料です。
筆者が(名前が)好きなキナクリドンも
有機顔料です。
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絵具には有機顔料と無機顔料がある。
有機顔料は石油から作られた化学的な顔料で、
合成無機顔料も化学的な顔料。
天然無機顔料は自然物。
という事だね。
顔料はどこで買えるの?
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顔料は画材屋さんの日本画コーナーで
見つけることができます。
油絵コーナーでも取り扱いがある場合も
ありますが、置いていない店もありますね。
ラメやパールはネイル用品として100均でも
取り扱いがありますので
画材屋さんが近くに無い方も要チェックです!
ですが顔料を最も入手しやすいのは通販!
特にPIGMENT TOKYO(ピグモン トーキョー)
では4500色もの顔料を取り揃えているそう。
※「PGMENT」が「顔料」という意味です。
ぜひじっくりとオンラインショップを
覗いてみてくださいね。
いろいろなものを顔料にしてーしばたゆり
現代美術作家のしばたゆりさんは
色々なものを顔料にしています。
しかしただの石や砂ではありません。
鹿や猪の毛皮に、自分の髪の毛、
ぬいぐるみ…
日常のありとあらゆる物質を顔料にして
絵ー顔料ー元になったなにか
の関係を作品にしています。
しばたゆりさんのHP
しばたゆりさんの作品画像
まとめー絵具の顔料とは?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/09/DBA3EF23-C8B8-4907-9C9E-0DC665101677-1024x623.jpeg)
最後までお読み頂きありがとうございます。
以上が絵の具に使われる顔料の意味と、
顔料の種類についての解説でした。
顔料とは決して難しい物ではありません。
皆さんの身の周りにある砂、石も
色の素、つまり顔料なのです。
化学物質などの難しい話もありました。
ですが基本的な分類さえ覚えておけば、
ハンドメイド絵具作りや新しい表現に役立ちますよ。
ぜひ今回の知識をご活用ください!
絵具に関するおすすめの書籍はこちら!
ホルベイン監修!
対談形式だから読みやすい!
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絵具って毒!?
薬が毒になるように、
絵の具も使い方次第では毒になる!
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