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【能舞台も】朱土とはどんな絵具?日本画絵具の使い方を解説!



こんにちは、日本画家の深町聡美です。

日本画絵具の朱土ってどんな絵具なの?
水銀朱(辰砂)みたいに毒とかないの?

DARENIHO

朱土は黄土を焼いて作った赤茶色の絵具です!
使い方も黄土と同じだし、毒もありません!



こんにちは!

今回は日本画絵具の朱土について
解説していきます!


朱と聞くと、勉強熱心な方だと
「朱って硫化水銀…毒だよね?」
と思ってしまうかもしれません。


でも朱土は身近な土で出来た、
安心して使える赤い絵具なんです!


この記事では

  • 朱土が安全な理由
  • 朱土の使い方
  • 狩野派は朱土をどう使ったか?

を図入りで紹介します!


ぜひ皆様の制作にお役立て下さい!


水銀朱の使い方と
アクリルガッシュで混色する方法はこちら!



日本画絵具の朱土は黄土を焼いたもの!

UnsplashJosh Boazが撮影した写真



日本画の朱土は、
黄土を焼いて作った絵具です。


黄土は世界中で採取できる黄色い土のこと!

フランス、ドイツ、中国、モロッコなど世界中で採れるんだ!
もちろん日本でも採れるよ!


この黄土を焼いて酸化させることで
赤くなったものを朱土と言います。



「絵具を焼くの!?」

と思った方もいるかもしれません。


なんと、日本画の天然の絵具は
加熱して色を変えることが可能です!


ですが新岩絵具のような人口の絵具は
焼いても変色しませんのでご注意下さいね!

天然岩朱土=朱土?

「朱土」で検索すると、
「天然 岩朱土」の販売ページが出てきます。


実は今回の記事の朱土と岩朱土は別物!


岩朱土は赤大理石を砕いた岩絵具ですが、
この記事の朱土(天然水干朱土/泥絵具)は、

黄土を熱した泥!


全く別の成分なので購入時はご注意を。


↓こちらが赤大理石の方です。


天然水干朱土は得應軒で購入ができます。
気になる方は上のリンクからジャンプして下さい!


朱土の成分は?有毒なの?

砕く前のヘマタイトは銀色
György Károly TóthによるPixabayからの画像


朱土の主成分は酸化第二鉄【Fe2O3】です。

これは赤鉄鉱(ヘマタイト)と同じ成分。


有毒で取り扱い注意
というものではありません。


安心して使えますね!


一方で水銀朱は有毒で加熱はできません
間違えないように気を付けましょう!


朱土は使いやすい絵具!

Photo by Arthur Hickinbotham on Unsplash


ほぼ黄土と同じ使い方の上、
岱赭とも同じ成分です!

岱赭の代用品としても使われます。


また、日本画用語事典によると

変色がなく安定している

日本画用語事典 p43 朱土

と書かれています。



さらに、丹や黄口朱と比較して箔が剥がれにくい
というメリットもあるそうです!


赤系の絵具は箔の下地によく使われます。


もし
「箔を敷き詰めてみたい!」

という方は朱土を使うと良いですね!

日本画絵具の朱土の使い方

pixabay


前述の通り、黄土を焼いたものなので
黄土の作り方と同じでOK!


そして黄土の作り方も
丹の作り方と同じです…



基本的に水干絵具は最初の砕きやすさ以外
同じ溶き方で問題ありません。


DARENIHO

ここからは朱土を含めた水干絵具の溶き方を見ていきます!

画像は黄土の解説から流用しているけど、使い方は同じだよ!


①よく擦りつぶそう!


まずは水干絵具を絵皿に出して、
乳棒や水干の瓶で粉になるまで砕きます。



皿に出す前に紙に包んで鉛筆等で
擦りつぶすのも良いですよ。


水干絵具は破片状に固まっている絵具です。


そのままでは使いにくいし、
大きい粒が残っていると
絵にツブツブが付いてしまいます。

必ず細かく砕いて使いましょう!

DARENIHO

大きい粒が絵を汚してしまうんです!

②膠で練ろう!


砕いた朱土を絵皿に入れて
膠を入れて指で練ります。

  • 膠は全体にしっかり行き渡る程度で十分です


本来は朱土の微粒子に膠を染み込ませて
接着力を高めてから、
水で濃度調節をします。


しかし、練りやすくするために
先に少量水を入れる
という考え方も
あるようです。


この辺りはお好みで試すと良いでしょう。


③水を加えて濃度調節


全体に膠が行き渡ったら、
水を加えて濃度を調節します。


水を加えつつ、
指で丁寧に溶きおろします。


④不純物を取り除く


水で溶き下ろせたら、
ティッシュで濾します。

これにより朱土内のホコリやゴミが
取り除かれ、より鮮やかな発色になります。


朱土の伝統的な作り方

https://www.photo-ac.com/main/detail/25414545


以上が現在一般的な朱土(水干絵具)の
使い方です。


ここからは、伝統的な朱土の使い方
見ていきましょう。

今とは少し作り方が違うんだね!

①よく擦りつぶす


まずは乳鉢に朱土を入れて
乳棒で砕きます。



乳鉢に付着する位、細かくします。

ここは今と変わらないね!

②膠で溶く


次は乳鉢に入れたまま膠を入れて、
よく練ります。


大きい乳鉢なら乳棒で練るのがおススメ!


その後、
上澄みが出来るくらいの水を入れます。


ずいぶん水が要るんだね

③上澄みを絵皿に入れる


朱土が沈殿して、上澄みが出来たら
それを絵皿に移します。



沈んだ絵具は使いません。

④皿をあぶって半乾きにする


上澄みを入れた皿ごと
弱火にかけます!


半乾きになるまで熱しましょう!

完全に乾燥しないように気を付けて!

DARENIHO

火の扱いが不安な人は電熱器や保温トレイがおススメ!


↓美大で見かけたのはこちらですが
プレミアがついています。



↓大きさが合えばこちらの方が良いかも?



⑤膠で溶きなおす


半乾きになった絵具に再び膠を入れて
指で練ります。



最後にお好みの濃度に調整すれば完成です!

朱土は能舞台に使われていた!?

https://www.photo-ac.com/main/detail/25007373

昔から朱土が使われていたんだね!

DARENIHO

狩野派の絵師も朱土を愛用していました。


長い歴史を誇る狩野派の絵師たちは
朱土を大和絵専用の絵具にしていました。

大和絵ってなに?
超簡単に言うと源氏物語絵巻みたいな絵の事です。

俯瞰構図で全体を見渡せるような絵を言う事が多いですが、時代によって画風は様々です。

墨で描いた山のような、中国風の描き方の対としてよく使われます。



おもしろいのは
能舞台の松の幹に使われていたこと!

能舞台背景にある松は、
身近な絵具で描かれていたんですね!


ほかにも人物の服を描くのに
使われていたそうです。

他に赤い絵具はなにがある?

辰砂の原石
Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash

日本画で使われる赤い絵具は他にあるの?

日本画の赤い絵具で
最も有名なのがでしょう。

これは辰砂や水銀朱とも呼ばれます。


一番最初に述べたように、
水銀朱には毒があります!


ただ、神社の鳥居に使われる等
鮮やかな赤が人気です。


毒性ゆえに今後規制の方向にありますので
入手はお早めに!


DARENIHO

近い種類である泥絵具の中では、岱赭、丹、弁柄があります。



岱赭(たいしゃ)
は赤茶色、
弁柄(べんがら)は岱赭より若干赤っぽい茶色です。


とは言え岱赭も弁柄もほとんど
朱土と変わらりません。


岱赭は弁柄と混同されてきましたし、
朱土は岱赭の代用にもされました。


一方で丹(たん)は鮮やかなオレンジ色。

DARENIHO

まさに雲丹(ウニ)のような色をしています!

↑こんな感じの色です。

まとめー朱土とはどんな絵具?日本画絵具の使い方を解説!


最後までお読み頂きありがとうございます!

以上が日本画絵具の朱土の使い方でした。

  • 朱土は黄土を焼いて赤くした絵具!
  • だから毒性はありません!
  • 水干絵具と同じ溶かし方でOK!

という事が分かりましたね!


朱土以外にも日本画絵具は
焼いて変色してある色があります!


ぜひ他の色でもお試しくださいね!

DARENIHO

でも辰砂を焼くのはダメです!



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どうにかなる!


朱土の使い方
(黄土の使い方ですが)
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丹青指南現代語訳

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による

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一、朱土(しゅど)

この絵具は黄土を焼いて作った物なので、
全て黄土と同じように使っても構いません。


そして、狩野家ではこの絵具を
大和絵に限って使い、

能舞台の壁画の松の幹および、
すべての大和絵の松の幹、
そのほか大和人物の服装、
または代赭の代用として使っていました。






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⇒黄土とはどんな色?日本の伝統色を知ろう【日本画絵具解説】

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