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黄土とはどんな色?日本の伝統色を知ろう【日本画絵具解説】

こんにちは、日本画家の深町聡美です。


日本の伝統色のひとつ「黄土色」


なんとなく使っている黄土色ですが、


実は1色ではないことをご存じでしたか?


今回の記事では黄土色の原料や
語源を紐解きながら、


日本画絵具の黄土の作り方の詳しい手順
図解付きで解説していきます!


冬~春に飛来するアレも黄土なんです!


アクリルガッシュで作りたい時はこちら!

⇒黄土色をアクリルガッシュで作る方法4選!【画像付きで解説!】

黄土とはどんな色?黄色い土の色!


黄土色とは
「くすんだ赤みの黄」のこと。
「黄褐色」「らくだ色」と同じとされています。


そして、
読んで字のごとく黄色い土の色です。

えっ、それだけ?
どこの黄色い土なの?


という感じですよね。


黄土とは世界中どこにでもある
黄色い土の色なんです。


実際、正解中の黄色い砂が
「黄土」という絵具で売られています。
(これは次の章でお話します!)



赤土と同じく世界最古の絵具(顔料)
のひとつでもあるんですよ。


日本画絵具の黄土は種類が多い!

HansによるPixabayからの画像


日本画絵具の黄土は
大きく分けて二種類あります。

  • 岩黄土(岩絵具)
    碧玉(ジャスパー)等が原料の絵具
  • 黄土(水干絵具/泥絵具)
    黄色い土が原料の絵具



この記事では水干絵具の黄土について
お話します。



水干絵具の黄土の主成分は含水酸化鉄
Fe2O3・nH2Oです。
さらに、珪酸塩鉱物も含んでいます。



主な原料は世界中の砂!


春先に中国から飛んでくる黄砂だって
黄土の原料なんです!



ほかにも以下の黄土があります!

その他の黄土
  • 敦煌黄土
  • 独逸黄土
  • 仏蘭西黄土
  • モロッコ黄土
  • 聚楽黄土
    (京都 聚楽第付近で採れる土)
  • 稲荷山黄土
    いなりやまきづち
    (京都 伏見で採れる土)

本当に世界各地で採れるんだね!



また、加熱すると赤茶色になる
とされています。



気を付けたいのが、
黄土は固い水干絵具
・沈殿しやすい絵具
ということ!


これに気を付けて、
水干黄土を作ってきましょう。

水干絵具の黄土の作り方

①よく擦りつぶす



まずは絵皿に黄土を出し、
乳棒でよく擦りつぶします。


前述したように黄土は固い絵具!


破片状になっていてそのままでは溶けません。

もし粒が大きいまま使うと
絵に粒が付いて汚れてしまいます!


乳棒がない人は水干絵具の瓶で潰しましょう!


また、黄土を紙に挟んで鉛筆や瓶を転がし擦る
ということもできます。

②膠で練る



十分細かくなったら
膠を加えて指で練ります。

乾燥した部分が残らないようにしましょう!



通常は粉末に膠を浸し、
接着力を高めてから水で溶きます。


しかし、
先に水を入れて練りやすくすると良い
という話もあります。


③水を加えて溶く



その後は水を加えて使いやすい濃さに調整。

④ティッシュで濾す


それをさらにティッシュで濾して、
不純物を取り除きます。



濾さなくても使えますが、
不純物を濾過することで発色が良くなります。

ひと手間かけて、綺麗な絵を描きたいね!




以上で水干黄土が完成!

他の水干絵具、泥絵具も同じ作り方です。

色々な絵具を試してみましょう!


丹青指南での黄土の作り方

DARENIHO


狩野派の技法を伝える本「丹青指南」

大正時代の本ですが、
この本にも黄土の使い方は掲載されています。

ここからは狩野派の黄土の使い方を
ご紹介していきますね!

ちなみに丹の作り方とほぼ同じです!


①よく擦りつぶす


まずは乳鉢に入れて、乳棒で丁寧に粉状にします。


乳鉢に入れていますが、
基本は先ほど紹介したやり方と一緒ですね!


本には
乳鉢の底に付着するくらい細かく
と書かれています。

②膠で溶く



乳鉢の黄土に、膠を入れて良く練ります。

指でも乳棒でも構わないと思います。

黄土の粉末全体にしっかり膠が付いたら
水を注いで溶きましょう!


③上澄みを絵皿に取り分ける


さて、黄土は丹以上に沈みやすい顔料
されています。


今回も、丹同様に沈んだ
上澄みだけを絵の具皿に取り分けましょう!


④皿を炙る


黄土の上澄みを絵皿ごと弱火にかけます。
半乾きになるまで待ちましょう!


※完全乾燥しないように注意!


こちらも電熱器や保温トレイで加熱するのが
一般的だと思われます。


⑤また膠で溶く



炙って半乾きになったら、
膠を少量加えて、再度指で練ります。



最後にお好みの濃度に水で溶かして完成!


まとめー日本の伝統色 黄土の作り方

撮影:DARENIHO


以上、黄土色の作り方を解説してきました。


黄土色が、本当に黄色い土の色というのは
驚きですよね!


皆さんの近くでも黄土色の絵具が採集できるかも!?



採取できたらぜひ、膠を混ぜて絵具として
使ってみて下さいね!

  • 黄土色は世界中の黄色い土の色
  • 黄土色は世界中の黄色い土が原料
  • 日本画の黄土色はよく潰して使うのがコツ!


初心者にオススメの少量黄土!!


日本最高峰とも言われる
美しい黄土です


黄色すぎない黄土がいい!?
そんな筆者はこれが好き。



丹青指南現代語訳

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による


今回も狩野派の技法書「丹青指南」を
独自に現代語訳しました。

ただ、使い方は丹と同じとのことです!

⇒丹とはどんな色?日本の伝統色を知ろう!【日本画絵具解説】


ちゃんど原文を読むにはどうすればいいの?


そんな時は国立国会図書館のサイトでチェック!

全文を無料で読むことが出来ます!


また、正確な訳や詳しい図解が欲しい!
という方は画材と技法の秘伝集がおススメです!


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原文が本で読めるようになりました!

一、黄土(おうど)


この絵具は土質のまま作った物なので、
水に沈殿しやすいのは丹以上です。

しかし、練り方、使い方などは
すべて丹と同じです。


日本画グッズまとめ!

溶けてる膠!


最初から液体だから、
溶かさず使える便利な膠!

初心者から上級者まで
オススメの膠です。
(ちょっと薄いかも?)

絵具を使う時の必需品


日本画絵具を溶くときは
パレットじゃなくて
絵皿を使います!

大きさもいろいろ!


絵具を擦りつぶせる便利な道具


固い絵具を潰す時に使うのが
乳棒と乳鉢!
胡粉を練る時にも使うので
一個は持っておくと良いですね!




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