こんにちは、日本画家の深町聡美です。
知ってるとカッコいい日本の伝統色!
でも漢字が読めなかったり、
どんな色かイメージできなかったりしますよね。
今回は
蘇芳色(すおういろ)
をテーマに、
- 蘇芳色は高貴な色
- 由来は木の色素
- 漢字の意味
- 蘇芳絵具の作り方
について解説していきます!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/12/写真-2022-12-13-11-30-55-e1701993103566.png)
色の由来や歴史をたどれば、色の名前も簡単に覚えられますよ!
Contents
蘇芳色ってどんな色?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/phonto-11-1024x592.png)
読み方 | すおう |
16進数 | #94474B |
RGB | (148,71,75) |
マンセル値 | 4R 4/7 |
蘇芳は少し暗い赤紫色です。
8~9世紀ごろの律令制の中では
身分によって使える色が決まっており、
蘇芳も高貴な身分にしか許されない色でした。
また、天皇しか着られない絶対禁色である
黄櫨染(こうろぜん)はハギと蘇芳で染めた色です。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/animalface_inu.png)
蘇芳は高貴な色だったんだね!
蘇芳色は血の色でもあった!?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/chaozzy-lin-4DAzYHVEqd8-unsplash-1024x665.jpg)
高貴な色と言われる一方で、
蘇芳色は血の色とも言われていました。
今昔物語 第27巻 第10話では、
怪物が残した乾きかけの血を
「蘇芳色」と表現しています。
確かに染料の色は血のような赤黒さ。
ですが、
血の色とは古来から生命力を表します。
漢方では蘇芳は蘇木(そぼく)と呼ばれ
止血、鎮痛剤の薬とされているそうです。
また、仏具の染料としても使われており、
決して縁起が悪い色とは考えられていないようです。
今昔物語の第29巻第4話では
謎めいた大金持ちの衣服の色として登場します。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_1_idea.png)
平安時代の物語にも登場している色なんだね!
蘇芳色の色言葉、誕生日色は?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/bison-1171794_1920-1024x831.jpg)
蘇芳色は11/19の誕生日色のひとつとされています。
蘇芳色の色言葉は
現在は定義されていないようですが、
近い色であるクリムソンは
「 経験・才能・行動力」
臙脂色は
「支持・向上心・弾力的」
という色言葉があります。
蘇芳色は花じゃなくて木から採れる赤!
蘇芳色は木の芯材から採れる!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/rejaul-karim-jI45R7Tgsx4-unsplash-1024x683.jpg)
UnsplashのRejaul Karimが撮影した写真
蘇芳は
インド東南アジアのマメ科の小高木(sappan)
から採れる染料です。
蘇芳の木は平たい豆がなります。
よく似た赤系色である朱や岱赭と異なり
砂や鉱物のような顔料ではなく染料です。
この鮮やかな赤は、蘇芳の木の
芯材に含まれる色素「ブラジレイン」
(ブラジリン)
によるもの。
蘇芳の木を椿やヒサカキなどの灰汁を
媒染にして布や木を染めると
美しい濃い赤紫色になるのです。
ミョウバンを媒染にすると鮮やかな赤になり
こちらを赤蘇芳と呼びます。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_2_surprise.png)
豆の木と布をぐつぐつ煮たら蘇芳色に染まるんだ!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/12/写真-2022-12-13-11-30-55-e1701993103566.png)
褪色しやすい色としても有名です。
蘇芳はいつから輸入されたの?
上述のように古くから尊い色として
使われてきた染料で、
飛鳥時代から輸入が始まりました。
蘇芳の木は日本で育たないので
あの鑑真も中国から持ち帰ったと言います。
蘇芳色って花蘇芳の色じゃないの?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/chinese-judas-tree-gcc92d70e4_1920-1024x768.jpg)
Hands off my tags! Michael GaidaによるPixabayからの画像
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
蘇芳色って花蘇芳の色じゃなかったんだ?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/12/写真-2022-12-13-11-30-55-e1701993103566.png)
蘇芳色の花だから、「花蘇芳」なんです!
おなじマメ科の木に
「花蘇芳」(Cercis chinensis)があります。
そのため蘇芳色の語源は花蘇芳と思われがちですが、
蘇芳色が先なんです!
花蘇芳は江戸初期に渡来した中国原産の木。
蘇芳の木の方が1000年近く前に渡来しています。
日本人にとって高貴な色である蘇芳色。
その色の花を咲かせるので「花蘇芳」と
名づけられたのです。
蘇芳という漢字の意味は?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/25414545_m-1024x683.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
蘇芳ってかっこいい漢字だよね!
この漢字には意味があるの?
「蘇芳」はマレー語のsapang(サパン)に
中国語の音を当てた言葉です。
そのため漢字の意味は
重視されていなかったと思われます!
サパン(マレー語)⇒スーファン(中国語)⇒スオウ(日本語)
と、音を表すための名称だったのです。
しかしながら
「蘇木」として血止めの薬になっているあたり、
赤色と「蘇」の漢字をかけて
「よみがえりの薬」と考えることも
あったのかも知れませんね。
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「蘇」という字には苔やシソの意味があるようです。
日本画で蘇芳色を使おう!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/paint-g9f6077b1d_1280-1024x597.jpg)
Rudy and Peter SkitteriansによるPixabayからの画像
日本画でも蘇芳色の絵具を使います!
古くは「キエンジ」とも呼ばれたようで、
この絵具は蘇芳の煎じ汁に、胡粉を混ぜて、
弱火にかけて極限まで煮詰めたものである。
と書かれています。
ここでは「丹青指南」という
日本画の古い指南書を訳して、
蘇芳色の絵具の作り方を探りました!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/12/写真-2022-12-13-11-30-55-e1701993103566.png)
実際に蘇芳の絵具を作ろうとしたら大変なようです!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_2_surprise.png)
大正時代にはすでに失われた絵具だったみたい!
①蘇芳を煮だす
まずは蘇芳の木片をお湯に入れて
ぐつぐつ煮出します。
東京藝術大学の実験では
蘇芳の粉末を蒸留水に入れて加熱しています。
②煎じ汁に胡粉を混ぜて煮詰める
十分煎じた物を濾過し、
煮汁に胡粉を混ぜます。
それをさらに弱火にかけ
極限まで煮詰めます。
③絵皿で溶かして使おう!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/IMG_0516-1024x672.jpg)
- 細かく砕く
- 膠を入れて練る
- 水を加える
- 筆にとって使う
以上の手順になります!
または粉状にした物を貯めて置き、
使用の度、朱を練る方法で使うのも良いとされています。
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蘇芳はどんな場面で使われていたの?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/japan-ga4748366f_1280-1024x701.jpg)
umehanayuukiによるPixabayからの画像
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
蘇芳ってどんな場面で使われる絵具なの?
蘇芳は染料ですので、主に
- 衣類
- 木材
を染めるのに使われます。
参考:美術図書出版紫紅社
現在はスカーフや漆工芸制作で使われています。
狩野派では顔料(絵具)として
大和絵専用に使っています。
特に
- 女官や人物の服
に使っていたという記録が残っています。
鈍色に使う時には朱土を
混ぜて使っていたんだとか。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_1_idea.png)
染物のほかに、絵でも使われていたんだね!
まとめー蘇芳とはどんな色?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/phonto-11-1024x592.png)
最後までお読み頂きありがとうございます!
以上が蘇芳色の由来や歴史、
絵具の作り方でした!
- 蘇芳色は木から採れる赤色!
- 花蘇芳の語源は蘇芳色から!
- 蘇芳色の絵具を作るのは大変!
ということが分かりましたね!
皆さんも木をぐつぐつ煮出して
じゃぶじゃぶ布を入れて、
蘇芳染めに挑戦してみて下さい!
筆者もやったら追記します!
それでは最後に
日本画の古い(けど知らないとヤバい)
技法書を現代語訳して終わろうと思います!
丹青指南現代語訳
![狩野永徳唐獅子図](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/Kano_Eitoku_002-1024x515.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/12/写真-2022-12-13-11-30-55-e1701993103566.png)
詳しい&正確な情報が欲しい方は
新装版 日本画画材と技法の秘伝集
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![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/animalface_inu.png)
原文は国会図書館のHPで無料で見られます!
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原文が本で読めるようになりました!
一、キエンジ
この絵具は蘇芳の煎じ汁に、胡粉を混ぜて、
弱火にかけて極限まで煮詰めたものである。
なので使わず時間が経つと退色する。
猪口の中に溶かす時は、
丹または黄土と同じ方法でよい。
または粉状にした物を貯めて置き、
使用の度、朱を練る方法で使うのも良い。
この「キエンジ」は狩野家では
大和絵専用の絵具として、
女官および大和人物の服装に使い、
そして鈍色(灰色?法衣?)には
少しの朱土を混ぜて使っていた。
この「キエンジ」の有無について
絵具商に尋ねたところ、
今は使う人がいないために、皆無であった。
この間、その筋からお尋ねがあったが、
納品できなかったとのこと。
参考リスト
・花蘇芳の語源について
・蘇芳色/wikipedia
・蘇芳の英語表記について
・JIS慣用色名16進数
・禁色/wikipedia
・蘇芳染めについて
・木工と蘇芳染め
・蘇芳色の壁紙!
・新装版日本画画材と技法の秘伝集
・日本画用語事典
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/04/phonto-15-1024x397.png)
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