- 付立てとは輪郭線を描かない描き方!
- 没骨画法の日本語訳が付立て!
- 付立てを使う場面は草花を描く時!
- 付立て用の「付立筆」の種類
こんにちは、日本画家の深町聡美です!
皆さんご存じの通り、日本美術には
個性的な塗り方や筆が数多く存在します。
でも逆に言うと、
「用語が多い!」
先生に「付立てで描くと良いよ」と言われても
良く分からないし、聞きにくい…
そんな時のために、この記事では
日本画技法の「付立て」について解説致します!
「付立て」は、東洋画の鍵となる要素です。
ぜひ皆さん、しっかり意味を理解して、
実践してみましょう!
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Contents
日本画の伝統的な着色技法はこんなにたくさん!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/08/fukamaru._A_woman_in_kimono_drawing_a_picture_in_ink._bbdae321-4104-4932-80b7-e4a31702e0a2.png)
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日本画の着彩技法っていっぱいあるよね!
本ブログでは日本画の着色技法について
現在3つ解説しています。
でもやっぱり
「日本画の伝統的な塗り方って難しい…」
と、いう方も多いはず!
ですが、現在取り扱い中の技法は
近代狩野派の技法書『丹青指南』に書かれた
5つの技法だけ!
5つで大丈夫なので、もう一度見てみましょう!
- 裏具:絹の裏側から色を塗る方法
- 彫塗り:線を残して塗る方法
- 塗りつぶし:線の上全体に色を塗る方法
- 塗限り:彫塗りの上に加筆しない方法
- 付立て:輪郭線なしに直接色を塗る方法
これらの手法はそれぞれ異なる特性を持ち、
描く絵やその表現方法に合わせて選ばれます。
つまり、この技法を理解すれば、
あなたの絵にもすぐに応用できるということ!
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覚えられる自信がないよ~
用語は少し難しく感じるかもしれませんが、
一度イメージがつかめたら理解できると思います!
さて、今回の記事では、この中から
「塗りつぶし」の技法に注目して詳しく解説しますね!
日本画の『付立て』とは?日本独自の技法です!
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「付立て」って全くイメージできないよ…
どういう技法なの?
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水墨画のお花をイメージしたら、大体あってます!
付立ての技法を超簡単に説明すると、
水墨画の竹とか、花のような描き方です。
InstagramやYouTubeのショート動画で、
筆一本でササっと線を引いたと思ったら、
なんと、竹でした!お花でした!
というのを見たことがあるかもしれません。
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魔法みたいに絵が出来上がるから、人気な題材だよね!
ここで『図解日本画用語事典』を見てみましょう。
付立て
『図解日本画用語事典』
描骨ともいい、附立とも書く。下描きや輪郭線を用いず、筆致のふくらみや勢いを活かして墨や絵具の濃淡で対象を表現する技法。没骨画法の一種。
日本画には数多くの塗り、描き方が存在します。
その中でも特に「付立て」は独特。
なにしろ、日本画で大切とされている「線」ではなく
「面」がメインになるからです。
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ただ、やっぱり「付立て」は馴染みない言葉。
名前だけではピンとこない方も多いと思います。
でも実は美術館や教科書でよく見かける、
日本画の精髄とも言える技法なんですよ!
それではもう少し細かく、付立てを整理してみましょう!
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今回は日本画における付立ての話をします。
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水墨画、中国絵画などと関連した歴史については省いていますのでご了承ください。
付立ては、線を描かない彩色の方法!
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付立ては、輪郭線を用いない彩色方法です。
このような輪郭線を描かない塗り方は、
「無線画」「没骨画法」などと呼ばれます。
輪郭線に頼らず、色そのもので
形や質感を表現する技法と言えるでしょう。
付立ては「描骨」や「附立」と呼ぶ事もあります!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/08/fukamaru._Japanese_Ink_brush_painting_60bcf54d-542e-4722-8a51-e487aa179151.png)
付立ては「描骨」や「附立」とも
表記されることがあります。
これらは全て
- 下描きや輪郭線を一切使用せず、筆の持つ特性や動き、絵具の濃淡を最大限に活かして対象物を表現する方法
を示す言葉なんですよ!
描く時には、
- 筆の弾力や腹をいかす
- 墨の含み具合を利用する
という特徴があります!
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ちょっと書道っぽい描き方だよね!
付立ては東洋独特の技法!
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附立ては、線を使用しません。
色や墨を直接使って、
毛筆の特性や筆勢を活かして
軽やかに描写する技法でした。
この技法は東洋絵画特有のものだとされています。
また、一部の書籍では
- 日本独特
- 日本画独特
と言う表記が見受けられました。
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どちらにしても、東洋的なイメージになる画法なんだね!
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日本画の魅力を感じさせる描き方と言えるでしょう。
日本画の筆遣いを学ぶのにうってつけの付立て技法!
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日本画を描く上で最も大切なのは
「毛筆」と言っても過言ではありません。
付立ては、この筆の特性を最大限にいかす
技法と言えるでしょう。
日本画の基本は筆遣いにあります。
日本画においては、まずは筆を使いこなすことが大切なのです。
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デッサンのような「基礎の基礎」と例えられることも!
付立ては、毛筆による最初のスケッチやデッサン!
付立ての習得は日本画の基礎を学ぶ過程ともいえるのです。
- 輪郭線を使わずに描く方法!
- 筆の弾力・筆腹・動き・墨の含み具合を駆使する!
- 立体的で躍動感のある作品になる!
- 日本画の筆遣いの基礎を学べる!
以上が付立ての特徴でした!
付立てをマスターすれば、
といったメリットがあります!
ここからはさらに、付立ての魅力を深堀して
- 付立ての関連用語、没骨画法
- 付立てが使われたシーン
- 付立ての手順
- 付立筆について
を解説していきます!
日本画の付立てと没骨画法について解説!
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そういえば「没骨画法」って聞いたことあるけど、これとは関係ないの?
さて、付立ては日本画の技法の中でも
輪郭線を描かない描き方でしたね。
もうひとつ似たような言葉で
「没骨」という用語があります。
没骨、あるいは没骨画法とは、
東洋絵画における用語です。
没骨を和訳したのが「付立て」とされています。
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没骨の対義語として「鈎勒」があります。
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鈎勒はふつーに輪郭を描く描き方だよ!
付立ては没骨の和訳なので、
意味はほとんど同じでOK!
没骨法は、付立てと同じく、
初めに輪郭線を引くことなく、
直接墨や絵の具を使って
物の形や色彩を表現する描き方です。
要するに、
- 形と色を同時に描き出す
ある意味効率的な描き方なんです!
この「没骨」。
骨が沈没みたいな、難しい漢字ですが、
実は文字通りの意味なのは知っていましたか?
これは「骨、つまり輪郭線がない」ということ。
「なんだか分かりにくい…」
そんなイメージを持たれがちな日本画用語ですが、
意味を丁寧に理解することで、
用語の意味を覚えることも簡単になります!
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骨がないからボンヤリふにゃふにゃしている…的な連想ができるね!
以上が没骨画法の説明でした。
付立てとは没骨の日本語訳。
そして、
線が存在しないからこそ、
筆の持つ力強さや繊細さを
最大限に生かせる描き方
なのです。
もっと詳しく知りたい方はこちらの解説もおすすめです!
没骨・朦朧体/アートスケープ
日本画で『付立て』を使うシーンー狩野派はここに使っていた!
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付立ての描き方が一番映えるのって、なにかな?
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やっぱり草花がおススメです!
付立ては特定の絵柄に特に向いているとされています。
狩野派の技法書『丹青指南』では
- やわらかい雑草
- 草花
- 紅葉
が特にオススメされています!
付立ての筆使いやしなやかな線が、
草花の繊細さや風になびく動きを
上手に表現できるからです。
また、この描き方で紅葉を描くと
極めて優美になるとされています。
葉の細かな色の変化や、優雅な雰囲気を
表現できるというわけですね!
そして、この技法は絵画だけでなく、
屏風や衝立などの装飾品にも使えます。
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柔らかかつ、しなやかな絵柄に向いていますね!
日本画の付立て技法で描いてみよう!ーやり方と手順
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/04/FUKAMARU_Photo_of_a_Japanese_artist_painting_a_picture_f39e99bc-a014-443d-873f-591187357d44.png)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/06/疑問2.jpg)
付立てでどんな描き方をすればいいの?
付立ての技法は、日本画独特の彩色方法!
ここでは『丹青指南』をもとに
付立てを使った基本的な描き方の
やり方と手順を解説していきます。
- 好きな絵柄を選ぶ!
- 淡薄色の絵具で軽く描く!
- 固有色で描き起こし、加筆する!
まず、始めのステップとして、
好きな絵柄を選びます。
上でおススメされていた、花や草を
選ぶのが良いでしょう。
そして、絵柄の大まかな形を粗い線で軽く描いていきます。
淡い墨や白緑青のような淡薄色の絵具を
使うようにしましょう。
次に、花や葉などの詳細を描き足していきます。
花の部分にはその花の色を、
葉の部分には葉の色を用いて、
最初に描いた粗い線を補完しながら、
詳細を加えていきます。
この時には正確な着色を心がけます。
必要ならば
などの加筆を行い、
適切な彩色と緻密な仕上げをします。
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日本画の「付立て」は加筆のベースになる部分の描き方とも言えるんだね!
全ての手順を踏んで絵を描き上げれば、
付立て技法の魅力が溢れる素敵な作品が
出来上がるはずです!
付立てをする時の筆はこれ!付立筆の種類と洗い方!
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「付立て」は、絵を描く際の大切な手法の一つ!
そして、この技法を支えるのが
「付立て筆」です。
ここでは、その特性やメンテナンス方法について詳しく解説します!
付立て筆。
別名「附立筆」や「没骨筆」とも呼ばれるこの筆は、
日本画や水墨画での没骨画法において欠かせないもの。
没骨画法とは、輪郭線を使わずに物を描写する技法でしたね。
この技法は、筆の持つ特性を最大限に生かします。
筆の力で、多彩な表現を可能にする描き方なのです。
これはつまり、
筆選びが作品の仕上がりに影響するということ。
付立て筆は、その種類が非常に豊富です。
- 長流
一番よく見る - 玉蘭
練習用 - 山馬
固めでざらつきがある - 如水
穂先が細長い
引用:付立筆/造形ファイル
中でも「長流」という筆が一番一般的です。
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まれに「付立」ではなく「長流」としか書かれていない筆もあります。
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きっと、それくらいメジャーな筆なんだね!
これは羊毛を主に使用しており、
その腰の強さを出すために馬毛や鹿毛を混ぜています。
また、墨の含みが非常によく、
筆の膨らみを最大限に活かして描けます。
他にも「玉蘭」や「山馬」「如水」といった筆もあり、
用途や好みに合わせて選べるのがいいですね!
どの筆を選ぶかは、
- 穂先の整い
- 腰の強さ
- 墨の流れ具合
などを基準にして判断すると良いでしょう。
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「腰が強い」とは紙に対して弾力があるという意味です!
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腰が強いと、描く時にバインバインした感じがあって、コントロールしやすいよ!
付立筆のメンテナンス方法
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付立て筆のメンテナンスも非常に重要!
使用後は水やぬるま湯で洗い、
水分をしっかりと切ることが必要です。
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墨などの膠分が含まれる絵具を使った後は、ぬるま湯で丁寧に洗おう!
そして
- 直射日光の当たらない
- 風通しの良い環境
で乾かしましょう。
あとは筆の置き方に注意しましょう。
穂先は下にして乾かすのがおススメです!
穂先を上にして立てると
筆の根元に水分が溜まってしまい、
筆が傷んでしまう恐れがあります。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
最悪の場合ではカビたり、先がすっぽ抜けたりします。
これらの付立て筆は、
日本画専門店だけでなく、
一般的な画材店でも取り扱いがあります。
技法に適した筆を選ぶことで、
より深く、より美しく、
日本画の世界を表現することができますよ!
メジャーな筆「長流」
まとめ:日本画の彩色技法『付立て』(つけたて)ー日本ならではの、筆を活かした画法を解説!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/08/ライトグレーと黒-シンプル-モーニングルーティン-Vlog-YouTubeサムネイル-1024x576.jpg)
最後までお読み頂き、ありがとうございました!
付立て技法は、日本画の重要な技法の一つ。
そしてそれを支える「付立筆」もまた、
墨の線の力強さを最大限に引き出すための
必須アイテムとなっています。
筆の選び方からメンテナンス方法まで、
その知識は日本画を描く上での
基礎と言えるでしょう!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/01/AF670F0D-5F2E-4032-99EF-8C9CC0AEAD26.png)
参考動画はいっぱいありますので、簡単な物から真似してみるといいかもですね!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/06/ひらめき.jpg)
ぜひ他の日本画技法にも挑戦してみてね!
個人的に超オススメ!
水墨画小説
原作小説がオススメ!
日本の美術で大切な考え方
「生きている様子を描く」
を丁寧に書いた超良書!
経験者にこそ読んでほしい!
経験者じゃなくても読んでほしい!
ちがう!そうじゃない!
けど良く分かる!
筆者は映画館で観ました!
映像で見れるので水墨画の線の美しさや
線描の迫力は大満足!
でも「生きている」という主題が
良くも悪くも「分かりやすく」
なってしまった感がありました。
丹青指南現代語訳ー附立
![狩野永徳唐獅子図](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/Kano_Eitoku_002-1024x515.jpg)
ここからは狩野派の隈取の方法について原文で見てみましょう!
こちらの原書は『丹青指南』という絵の描き方の本です。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2023/06/困惑.jpg)
原書を読むにはどうすればいいの?
そんな時は国立国会図書館のサイトでチェック!
全文を無料で読むことが出来ます!
また、正確な訳や詳しい図解が欲しい!
という方は画材と技法の秘伝集がおススメです!
一、附立(つけたて)
この「ツケタテ」という塗り方は、
前に記した三つの塗り方と違って、
いわゆる無線画(※輪郭線がない描き方)
に属する彩色方法です。
描き方および塗り方は以下の通りです。
最初に、何でもいいので好きな絵を、
淡い墨や白緑青のような淡薄色の絵具を使って、粗い線で軽く描きます。
そして花は花の色、
葉は葉の色の絵具を使い、
粗く描かれた線を補いながら描き起こします。
正しく着色しましょう。
隈取り、括り、描き起こしに至るまで全て、
適切な彩色と仕立てを行い、
その絵を完成させます。
この附立彩色に最もふさわしい絵柄は、
やわらかい雑草や草花の類です。
また全ての紅葉を描くときは
特に優美に見える彩色方法です。
また、屏風衝立などの全部、
もしくはその一部に応用が可能です。
加筆修正版はこちら!
丹青指南の現代語訳を
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![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/日本画のきじはこちら!.jpg)
前の記事はこちら!
➡『塗埋』(ぬりつぶし)ー日本画の伝統着彩テクニックを学ぼう!
次の記事はこちら!
乞うご期待!