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日本画の着色技法ー彫塗(ほりぬり)と塗限り(ぬりきり)をやさしく語る!




こんにちは。日本画家の深町聡美です。


日本画には、たくさんの彩色技法があります。

「いつもこの塗り方をしていたけど、
そんな名前があったんだ!」


という技法も結構あるんですよ。


今回は、着色技法の中でも
彫塗ほりぬり」塗限ぬりきりに注目します!


簡単に言うと、
これはどちらも線を残す塗り方です。

でも具体的にはどう違うの?
どんな場面で使うの?



今回はそんな疑問を解消しながら、
この二つの技法を深堀りしていきます。

ぜひ、最後までお付き合いくださいね!


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日本画の着色技法はどんなのがある?

日本画の着色技法にはどんなのがあるの?

日本画や水墨画と言えば、
「塗り方や筆遣いに様々な名前が付いている…」
「技法が多くて、なんだか難しいイメージ…」


という方もいらっしゃると思います。

そして実際、たくさんの着色技法が存在しています。


しかし、この着色技法は難しいだけでなく、
絵の表現を豊かにしてくれる。

そんな「カッコいい絵を描く秘訣」でもあるのです。



今回は『丹青指南』という、
近代狩野派の日本画技法書を見てみましょう。

ここには
裏具「彫塗り」「塗りつぶし」「塗限り」「付け立て」
という方法が挙げられています。

  • 裏具
    絹に描く際に裏側から色を塗る技法。
  • 彫塗り
    線を活かしながら塗る技法。線を残してを塗ることで、線を際立たせる。
  • 塗りつぶし
    線の上にも色を塗る技法。線を隠しながら塗り進める。
  • 塗限り
    彫塗りに加筆しないでおいておく技法。
  • 付け立て
    輪郭線を描かずに、色を直接塗りつける技法。


この記事では、特に
「彫塗り」「塗限り」に焦点を当てます!


それぞれの特性や適用される場面について
詳しく解説していきますね!


日本画の彩色方法「彫塗り」ー線を残す普通のぬりかた!

引用:YoutTube ナカガワ胡粉のチャンネル

彫塗り。
一言で言えば「線描を活かす彩色技法」です。

線描を活かす?

それではここで、
図解日本画用語事典 [ 東京芸術大学 ]
の解説を見てみましょう。

彫塗り
線描を活かすために線描を塗り残して彩色する方法

図解日本画用語事典 [ 東京芸術大学 ]p.106


とてもシンプルな答えです。

線の上に絵具を塗ってしまうと、
塗りつぶされて見えなくなっちゃうね!

だから線にかからないように、
周りを丁寧に塗ろうね!

ということですね!


言葉で言うと簡単です。
ですが、日本画の彩色の中でも、
彫塗りは特に丁寧さと正確さが求められるのです!

色が線にかかると、それだけでダメなんだね!

DARENIHO

「濃い絵具が誤って墨の描線にかかると描線の勢いを損ずる」のだそうです。



日本画の技法「彫塗り」の特徴は”線のコントラスト”!



彫塗りの特徴は、

  • 墨で描かれた線を塗り残し、その線描の周りを正確に彩色すること!


線描をキープしつつ、その間々、
つまり線と線の間を塗るのです!

彫塗りをするメリットは何なの?

彫塗りのメリットといえば、
線の存在感を出すことが挙げられます。


線は日本画表現の重要なポイント!


その線を活かしつつ色彩を加えることで、
より繊細な作品が出来上がるのです!

実際、彩色が終わった後は、
墨の線だけが白く浮き出て、
彩色された部分とのコントラスト
が生まれます。


この効果は、
染色のロウ染にも例えられる美しさなんです。

墨の線が白っぽく残って見えるんだね!

DARENIHO

有彩色と白のコントラストを生み出すのです!



日本画の「彫塗り」はこんな時に使おう!カラフルな絵に最適!

彫塗りのイメージとしてはぬりえが近いだろう

彫塗りはどんなシーンで使うのが良いの?

彫塗りは墨で描いた線を残して
彩色を進めていく技法でしたよね。

そのためこの技法は、線を重視した作品にオススメ!


とはいえ、彫塗りはそれだけではありません。


昔の技法書には様々な彫塗りのテクニックが
紹介されています!

『アトリエ美術大講座』にでは

  • 彫塗りは鮮やかな色彩の絵を描く時に使う
    (低彩度の絵には使わない)
  • 紺や青、朱等の色が強い部分に使う

といったことが書かれているそうです。

これは墨と絵具による彩度のコントラスト
活かした技法だからでしょう。

淡彩や中彩色では使用されないのが一般的なんだって!


そのほかにも以下のモチーフに使われていました!

  • 人物画
  • 花鳥画
  • もろもろの器具


人物画においては、彫塗りは主に

  • 人物の服装
  • 持ち物

に使われていました。

これにより、色の中に線の美しさが残るんですね。

また、草花の絵、特に

に彫塗りを施したと記録されています。

このように彫塗りは日本画の中で様々な場所で使われてきたんです。

陰影に頼らない、平面的な作品を作る際にも活用できる技法なので、ぜひ新しい表現の一つとしてお試しください!

日本画の「彫塗り」の隠されたテクニック!


シンプルな彫塗りの技法ですが、
実はさまざまなアプローチや種類があります!


たとえば、『アトリエ美術大講座』では、
彫塗りの手法に順序が指定されています!

  1. 淡い色を描線の上を含めて全体に塗る
  2. その後、濃い色で描線を避けるようにして塗る

最初に淡い色を全体に塗る方法なんだ!

この方法では、淡い色を塗る時は
線が隠れても問題ないとされています。

淡い色を塗った後に施す、
濃い色で彫塗りをするわけですね!

DARENIHO

このやり方だと、墨の線にも色が付きます。
線だけ目立ちすぎてしまうことがなくなりますね!




また、最近の技法として、
絵具がまだ半乾きの状態の時に、
パレットナイフを使用して絵具を削り取る方法

も試みられています。


この技法を用いることで、
「線に強い運動感やダイナミズムを与えることができる」
のだそうですよ!

いつもと違う表現ができるんですね!

ただし、紙を傷つけないように気を付けようね!

DARENIHO

筆者は学生時代に、これをやって紙に穴を開けました。



これらの情報を見てみると、
彫塗りは時代や技術の進化とともに、
多様な手法で行われてきたことが分かりますね。


まだまだ新しい彫塗りは生まれているようです。

皆さんも自分なりの「彫塗り」を
探求してみると、もっと楽しくなるかもしれません!


日本画の「塗限り」技法は彫塗りとほぼ同じ!



日本画の多様な着色技法の中には
塗限ぬりきり」という方法もあります。

DARENIHO

表記に迷いましたが、この記事では「塗限り」と書きますね。

塗限りを理解するには、
まず彫塗りが分かっていないといけません!


塗限りとはどんな技法なのか見てみましょう。

この「ヌリキリ」という塗り方は、彫塗りをしてある場所を区切り、その部分は塗ったままにして、後から隈取り、括りなどの加筆を施さない彩色法です。

現代語訳 丹青指南


塗限りは、
「彫塗りをした部分に加筆を行わない」
描き方なのです。

陰影や輪郭線を描き加えないってことだね!



塗限りで使用される絵具は

  • 金泥
  • 銀泥
  • 岩絵具全般
  • 粉絵具(朱、丹、キエンジ、艶墨、胡粉など)

があります。


基本的に彫塗りの後に加筆はしないことが「塗限り」とされていますが、絵柄やデザインによっては、金泥でを施すこともあります。




この塗限りの技法は、

  • 人物画の冠、靴、携帯品
  • 室内装飾
  • 祭典具、仏具

などを描く際に多く採用されています。

金泥や銀泥をよく使う、祭典具や仏具で見られるんだね!



彫塗りと比べて、塗限りは、よりシンプルで洗練された表現を目指す技法といえるでしょう。


それぞれの方法が持つ特色を理解し、
適切に適用することが大切なんですね!

金泥ってなに?
という時はこの記事!

まとめ:日本画の着色技法ー彫塗(ほりぬり)と塗限り(ぬりきり)をやさしく語る!



最後までお読み頂きありがとうございます!

「彫塗り「塗限り」の技法を、
もっと深く知れたのではないでしょうか。

  • 線を大事にしながら色をのせる彫塗り
  • 加筆をしないで色で区別する塗限り


この2つの技法はいろいろな日本画で見ることが出来ます!

次回、日本画に出会うとき、
ぜひこれらの技法にも注目してみて下さい!

新しい発見や感動がきっと待っているはずです!

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狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による

ここからは狩野派の隈取の方法について原文で見てみましょう!



こちらの原書は『丹青指南』という絵の描き方の本です。

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一、彫塗(ほりぬり)

この「ホリヌリ」という塗り方は、
正確に()()きした描線を正確に保って、
このキワから離れないよう、
また汚れないように塗り、
最も丁寧に行う彩色の方法です。


彫塗は人物画であれば、
その服装および冠や靴、
または携帯品などに行います。

草木の絵柄であればその葉、茎などに施します。
その他、諸器具の類にも施す塗り方です。


塗限り

この「ヌリキリ」という塗り方は、
(ほり)(ぬり)をしてある場所を区切り、
その部分は塗ったままにして、
後から隈取り、(くく)りなどの
加筆を施さない彩色法です。



これに使う絵具の種類は金泥や銀泥、
すべての岩絵具、
また粉絵具では朱、丹、
「キエンジ」、(つや)(ずみ)、胡粉などです。



その絵柄によっては、描線に並行して、
金泥を使った細い線で括りをすることもあります。


この塗限を応用する絵は、
日本および中国男女の冠、
靴および携帯品です。


また室内用品、そのほか祭典具、
仏具などにも使います。

加筆修正版はこちら!

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➡金粉と金泥、何が違うの?価値の違いを徹底解説!

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