8/1 新刊『日本画の絵具と色彩』発売されました!

【日本画】膠(にかわ)とは?作り方と使い方&種類を徹底解説【画材】

この記事で出来るようになること

・失敗しない最強の膠水が作れる!
・膠の濃度や溶かし方の疑問が解ける!

こんにちは、日本画家の深町聡美です。

日本画を描く上での超必須アイテム。
それが、です。

これがなければ、日本画ではないと
言っても過言ではないかも知れません。

膠の使用方法などは
以前の記事で軽く触れましたが、


まだまだ膠について語り切れません。


そんな奥が深い膠について
およそ10000字で説明させて頂きます!



とても長い記事になってしまったので
目次を活用して、読みたい所から
ご覧になるのをおすすめします!

前回の記事はこちら!

【日本画】狩野派流!ドーサ液の引き方を解説!【丹青指南現代語訳】

【日本画】狩野派のドーサ液の作り方とは?効果はあるの?【丹青指南現代語訳】

丹青指南のまとめは画像をタップ!

狩野派による日本画解説書「丹青指南」を現代語訳

日本画で使う『膠(にかわ)』とは?

イメージです

そもそも膠(にかわ)とは一体何なのでしょう?

その話に入る前に、
絵具の原料について知る必要があります。

皆さんも使ったことがあるチューブの絵具、
一体何で出来ているか知っていますか?





正解は
色の素である「顔料」

接着剤である「展色材」
です。


色々入っていそうな絵具ですが、
主な材料はこの二つなのです!

意外とシンプルでしょ?



そこで思い出して欲しいのですが、
皆さんが使う水彩絵具のチューブだと
ブニュッと出すと
ベタっと色が出てきますよね。



ですが実は色の素である顔料は
砂のようにサラサラで、
そのままでは紙にくっつきません。

つまり色の素である顔料だけでは
色が紙に付かないのです。






ちなみに↓写真が、日本画絵具の色の素
「岩絵具」です。

サラサラの粉末が、
色別に瓶に入れられています。

出典:Pixabay





そのままではくっつかない顔料を
紙に付ける役割を持つのが、
接着剤である展色材です。

この展色材の種類で
日本画
アクリル絵具
水彩絵具
などに絵の具の種類が変わりますが
それは別の記事にするとして、


日本画の場合の展色材が、
今回扱っていく膠なのです!

つまり膠とは、
なんかベトベトの接着剤なんです。





じゃあこの
「なんかベトベトの接着剤」の正体は
何なのでしょうか?


原材料や、ベトベトする理由、そして
有名な

「膠はヤバい。臭い。腐る。」


の正体を探って行きましょう。



膠とは顔料を紙に付けるための、接着剤である!

日本画で使う膠の種類と原料は?【膠の作り方と使い方】

鹿膠(筆者撮影)

ところで「にわか」
と言っている人を見かけますが
少しおしいですね。

正解は「にかわ」です。
覚えておいて下さい。




それで一口に膠(にかわ)と言っても、
形や原料は様々です。



先程出てきた
「膠は臭い、膠は腐る」という話。

それもそのはず、
膠の原材料は動物の皮や骨、腸や腱です。



それを煮出してコラーゲンを抽出し、
固めて乾燥させて作っています。

簡単に言ってしまうと
煮凝りやゼラチンのようなもので、
ナマモノなので腐ってしまうのです。


しかし後述しますが、丁寧に扱えば
腐ることはほとんどありませんので
あまり気にしなくても大丈夫です。





このように動物から作られる膠ですが、
原料になる動物によって特質が異なったり
形状が異なっていたりと
種類が細分化され、用途によって
使い分けられています。



今からは、膠の種類と特質を見比べながら
日本画にベストな膠をご紹介していきましょう!

三千本膠(さんぜんぼんにかわ)


日本画で最も多用されている膠
約6割が三千本ユーザーだそう!
一番オススメの膠です。


材料は牛の皮や腱です。
伝統的な手法で作られ、
存続の危機を何度も乗り越えながら
今まで伝わっています。



三千本膠の製法は2013年頃に
一度途絶えており、
それを模して造られているのが
現在の三千本膠です。

旧三千本膠は防腐剤が使われていませんが
現在の三千本膠がどうかは不明です。


名前の由来~なぜ三千本なの?~

名前の由来で有名なのが、
「一貫目から三千本作れるから」
というエピソード。

しかし本当に一貫目(約3.75kg)から
三千本も作れるのでしょうか?



現代の三千本膠は10~13gです。
もし1貫目から3千本を作るとしたら1.25g。
昔と違うとは言え、
これはあまりにも細すぎます。

そのため
「日本画 画材と技法の秘伝集」
の小川幸治氏は
これはちょっと違うんじゃないかと
別の説も紹介しています。



ひとつは
俵一俵の原料から三千本作れる説。

もうひとつは
製造過程で煮凝りを作る時に使う
木箱から、三千本作れる説。


日本画画材店の紹介ページでも
店ごとに説が違ったりするので
見比べてみるのも面白いですね。



筆者は牛一頭から
三千本作れると思っていました。

粒膠(つぶにかわ)/パール膠

粒膠(筆者撮影)


粒状に細かく砕かれて
販売されている膠です。


三千本膠と同じく
牛の皮や腱、骨を原料にしています。
防腐剤が含まれているそうです。




「図解 日本画用語辞典」によると

「三千本膠と比べると不純物が少なく
接着力が強く、また固まりやすい」

という特徴が挙げられていて
一見すると完全無欠のように見えますね。



しかしこれは、恐らく
製造中止になった「パール膠」の
特徴ではないかと思われます。



現在手に入るのは、2007年から
販売され始めた「粒膠」です。


残念ながら、こちらは筆者の周りでは
接着力の低さで有名でした。

「日本画 画材と技法の秘伝集」によると
やはり濃度が低いと接着力が激減するとの事。


筆者も一度作品をボロボロにしたことが
あるので使っていませんでしたが、

「播州粒膠」という商品名の粒膠を
濃い目に作れば問題なかった
ので
最近はこれを使っています。




寒い日も固まりにくいらしいです。


鹿膠(しかにかわ)


なんと!
鹿が原料ではありません!

三千本膠と同じく牛の皮や骨
腱が原料です。

「鹿膠」というのは商品名なのです。



これは、日本では昔から
鹿の膠が高級な膠として
多用されていた事の名残です。

武将の武具などにも鹿の膠は
使われていました。


ですがこれが鹿膠という名称で
作られたのは大正初期から。

少し不思議な感じがしますね。



主な特徴は
他の膠より接着力が強い点です!

そのため、三千本膠に少量混ぜて
接着力を強化するのにも使えます!

粒膠の接着力の弱さをカバーするのにも
便利です!



液状の物もあれば
サイコロ状で売られている物もあります。
サイコロ状だと、1個約1g。

板膠(いたにかわ)

牛などの皮を煮て抽出した原料を、
板状に固めた膠です。

接着力が高く、透明度が高い膠です。


狩野派の伝統的な日本画技法書
「丹青指南」では、
こちらの膠が使われていました。

鰾膠(にべにかわ)


にべという魚の浮袋から作る膠ですが、
他にもサメや鯉、うなぎなどからも
作られます。

粘着力が強いので
箔を貼る時に使用されます。


名前や分類が分かりにくい膠で、
魚膠と書いて「にべにかわ」と読んだり
魚の浮袋を「にべ」と言ったり
三千本膠の原料を「にべ」と呼んだり
膠のことを「にべ」と呼んだり
なんだか大変です。

三千本膠の原料はにべ膠とは違います。

魚膠と同じ物とされることがありますが
魚膠は黒海産チョウザメの浮袋で
作られている膠を言うとか。

兎膠(うさぎにかわ)


こちらは西洋画で使われる膠です。

兎膠は主にフランスで生産され、
キャンバスの下地作りで使われています。


テンペラや白亜地の絵画制作にも
用いられます。

樹脂系膠(じゅしけいにかわ)


アートレジンやアートグルーなどの
名称で売られている、動物を使わない膠です。


アクリル絵具に近く、耐水性を持つので、
画面の絵具を水で落とすことは出来ません。

また、基本的には一度出した絵具を
再度使う事も出来なくなります。





アートグルーのレビューはこちらの
記事からご覧いただけます。

【日本画】アートグルーの使い方と使用感をレビュー!






胡粉(白い絵の具)の発色が
悪くなるという説もあります。



接着力がかなり強いので、
荒い絵具を塗る時に使ってみるのが
オススメです。


樹脂系というとアクリル樹脂など
科学的な物が思い浮かぶかも知れませんが
古くから、桃膠という
桃の樹脂を使った膠は存在していました。





以上、7種類の膠を紹介しました!

意外と多かったでしょうか?
それとも少なかったですか?


種類が多く感じた方も、
三千本膠を覚えておけば
ひとまずOKです!





材料や接着力など、特色は違いますが
どの膠にも共通点があります。

それは、
膠は劣化する物ということ。


どの膠も古くなると定着力が無くなるほか、
二年以上経ったものは溶けにくくなります。



もし長期保存をする場合は、
風通しの良い冷暗所で保管するといいですよ。




試しに初めて描いてみる!という時は、
すでに溶けている膠水を使ってみるのも
オススメです!





そして最後に大事な共通点が

これらの様々な膠は、
どれも最初は固体です。
(樹脂系を除く)


固体の膠を溶かして
膠水(にかわすい)にすることで
ようやく顔料(日本画絵具)と混ぜて
接着剤として使えるようになるのです!





では次の章から、膠を溶かし、
使っていく方法をご案内いたします!




・膠の原料は主に牛のコラーゲン。

・日本画では三千本膠が一番メジャー

・膠は固体。溶かして膠水にして使う

日本画の膠を溶かすのに必要な道具は?【膠の作り方と使い方】




それでは膠を溶かすのに
必要な道具をそろえましょう!

・電熱器などの加熱器具
(要するに熱湯)
・鍋

(耐熱の大きい器)
・膠匙

(スプーン、マドラー)
・膠鍋

(耐熱ビン)
・ガーゼ
(クッキングペーパー)

+はかり、計量カップ



一見専門的な名前が並びますが、
カッコ内の道具で代用可能です。

要するに湯煎でゆっくり温めましょう!

ということを覚えておいて下さい。



それでは、一つ一つおすすめの代用品などと
合わせて、用途を説明していきます。

電熱器などの加熱器



膠は熱で液状に溶け
接着剤の役割を果たします。

だからと言って直火はNG!




ゼラチンを溶かす時のように、
ゆっくりと湯煎する必要があります。



そこで日本画でよく使われるのが
電熱器です。




電熱器を使って鍋の水を温め、
その中に膠を入れた膠鍋を入れて湯煎します。


こうすればキッチンに行かなくても
お湯を作ることが出来ますね。



他によく使われる物は
東芝製の保温トレイです。

筆者は耐熱ボウルの熱湯を取り換えながら
膠を溶かしていました。
今は湯煎機を使っています。

熱湯は冷めたら取り換える



湯煎の際に熱湯を入れる器です。

大型の鍋のほか、
耐熱ボウルなどで代用可能です。

電熱器の代わりに保温トレイを使う場合は
下図のように磁器製の筆洗を使う事が
出来ます。



ただしプラスチック製の筆洗は
絶対に使ってはいけません。

TOSHIBA 保温トレイ シルバー HW-91(V)posted with カエレバ楽天市場

膠匙(にかわさじ)



膠を溶かす際に、器の底に沈殿した膠を
溶かす為の匙(スプーン)です。



膠水を絵具に注ぎ加える時にも使います。

通常の匙と異なり柄が長く
カーブが付いています。


筆者は普通のロングスプーンを
使っています。
安価なプラスチック製は汚れやすいので
金属製が良いでしょう。

膠鍋(にかわなべ)


鍋というより、土瓶蒸しのような
見た目の素焼きの土鍋です。


この中に膠と水を入れて溶かしたり、
そのまま保存するのに使います。



これを大きい鍋に入れて
湯煎にかけて使うのが一般的ですが、
丹青指南では直火にかけているようです。



土鍋は熱が緩やかに伝わるので
膠を溶かすのに適しており、
さらに保温性に優れているのが便利な点です。


冬に放置していると寒気で
膠は固まってしまいますが、
それを防ぐことができるのです。



耐熱ガラスのビンなどで代用可能ですが、
冷蔵庫で保存している物をすぐに
熱湯に入れると破損してしまいます。

筆者は百均の立派なガラスビンを使って
熱湯で底が抜けました。

ガーゼ・はかり



これはどちらも一般的なガーゼとはかりで
問題ありません。


ガーゼは膠水を濾す(こす)ための物で
ナイロンストッキングが最適だとされていますが
入手の簡単さから、
ガーゼをオススメしています。



他にも、茶こしを使用する作家もいますが
目が細かい物でないと意味がありません。
購入するときは気を付けてください。



はかりは粒膠を使う場合、
重さを計るのに使います。


三千本膠を使う場合は必要ありません。



計量カップは膠を溶かす水を計るために
使います。
三千本膠でも粒膠でも使いますので
必ず用意しておきます。


専門用具は色々あるけれど、家にある物で十分代用はできる!
身の回りのもので準備してみよう!

日本画の膠の溶かし方とは!?【膠の作り方と使い方】

膠の溶かし方は以前の記事で
少しだけ触れましたね。

【初心者向け】日本画のドーサ液の引き方、作り方をイラスト付きで解説!



ただ、こちらの記事では現代語訳が
主な目的だったので、具体的な
解説を載せていませんでした。


なので、ここからは改めて
膠の溶かし方を順序立てて整理します。


いまから丹青指南の現代語訳を読む方は
こちらの記事で溶かし方を確認しながら
読むと、理解が進むはずです!



さて

原材料の話の中で出てきましたが、
膠の成分を覚えているでしょうか?





そうです、動物の皮などから抽出した
コラーゲンでした。



要はゼラチンの仲間ですね。


ではゼリーを作る時、
ゼラチンをどうやって溶かすか
知っていますか?



これも道具の説明に出てきましたが
湯煎
しなくてはいけませんでしたね。

というわけで、
道具の説明と多少重複しますが
湯煎の手順をお話しして行きます。


注意点も多いので
必ず一度目を通してから始めて下さい!





①まず膠を一本砕きます!

三千本膠はガチガチの棒状です。
このままでは溶かすのに時間がかかるので、
細かくしましょう。


筆者は
布(タオル)で包んで手で折りますが、
力に自信が無い方は

  • 布に包んで金槌で叩き割る
  • ビニール袋に入れてニッパーで切る


などが怪我をしなくてオススメです!





粒膠を溶かす場合は、
三千本膠一本分より少し重めの

約12~15gを計っておきます。


同じ重さにすると全く貼り付かないので、
最初は濃く作るべきです。



やること

三千本膠を一本砕くか、粒膠を15g測る!

制作をするとき室内の湿度が80%を超えていたら、
湿度を下げるか場所を変えるかして下さい。

②膠と水を膠鍋や耐熱ビンに入れます!



次は砕いた膠と、水を耐熱ビンに入れます。


ですが、ここが結構くせものです。
膠を水で溶かして丁度いい濃度にするのが
目的なのですが、


作家や制作の具合によって
水の濃度が異なります。





例をいくつか挙げますね。

・水は2~3本に対し200cc
(図解日本画用語辞典)

・3本に対し水120~900㏄
(日本画 画材と技法の秘伝集)

・一般には1本に対し70~100㏄
(日本画 画材と技法の秘伝集)

1本半に対し200cc

1本に対し水50~100cc



おそらく藝大系の作家は200ccに膠2本、
つまり1本に対し水100㏄を使っています。


ほかにも気温や湿度で接着力が変わる
特性に合わせて、
乾燥する冬は10%水を多めにするのが
良いでしょう。

ただ、
逆に夏に10%水多めという説もあります。



加えて、粒子が荒い岩絵具は濃く
逆に細かい物は薄くします。



膠の濃度が濃いと、膠の黄色で発色が
落ちてしまいますので、
最初は濃い膠でしっかりと土台の絵具を
紙に付着させ、
最後には薄い膠で発色を良くする

という進め方が一般的です。




膠の濃度の
メリット、デメリットだけでまとめると

  • 濃いメリット…剥落しない
     デメリット…発色が悪い
  • 薄いメリット…はがれやすい     
     デメリット…発色が良い

となります。






……と、
かなり複雑な膠の濃度です。

しかしここまで考える段階は、
慣れと感覚が身に付いてから。

・日本画を始めたての頃は、
細かい粒子(11~白)の岩絵具を使う


・その上で、

制作の初めの段階は三千本膠1本に対し水100㏄

・最後の段階では1本に対し水200cc


というようにやってみるのが
オススメです。



もし、この濃度でやってみて
「触ると絵の具がパラパラ落ちる!」
となったら、それは膠の濃度が薄いためです。


少し水を減らした濃い膠を作って
再度やってみましょう。






やること

耐熱ビンに、砕いた膠と水100㏄を入れる

【余談】この濃度は間違いだ!?


筆者の後輩には、高校時代に日本画を
やっていた学生がいました。

大学での日本画の授業中。
そこで授業で指示された膠の濃度が
高校で習った濃度と違うことに気付き、
後輩はこう言ったのです。


「この膠の濃度は間違い!
高校の時の先生は東京藝大出身だった!
だから今習った〇○美大(この教授の出身校)の

日本画のやり方は間違っている!」



濃度が間違っている?
それは本当でしょうか?



先に説明したように、
膠の濃度は作家によって異なります。


もっと言うと作家によって、
使う岩絵具の粒子の大きさは違いますし、
厚塗りか薄塗りかも異なり

さらに遡れば
目指している美しさも違う訳です。


そして作家個人の作風以前に、
流派ごとに受け継がれてきた
描き方、考え方も違います。


そうなると、当然色の付き方を
左右する膠の濃度は、
作家によって異なって当然なのです。


古代エジプトの芸術と、
古代メソポタミアの芸術を比べて
どっちが偉いかと言っているのと同じです。




もしどなたかの先生に日本画を
教わっている方はがいれば
先生のルーツや師匠について聞いてみると
良いでしょう。

自分の勉強にもなりますし、
様々な視点を持てるようにも
なるかもしれません。

③膠をふやかす!


「膠をゆっくり湯煎すると、
膠水になりますよ~」

と言われて始めてみたが……

「10分、20分たっても溶けません!」


そうなのです。
現代人からすると非常につらいですが
固体から膠水にするには一時間以上かかります。


ですが諦めないで下さい!

あらかじめ水に入れて
ふやかしておくと時短になります!

ふやかす時間は6時間くらいがベスト!


10時間以上で粘着力が低下してしまうので
寝る前に水に入れて置き、
朝一で溶かすのが良いですね!



本によっては一晩と書かれていることも
あります。

もし、6時間で足りないと感じた時は
自分で様子を見ながら
ベストな溶かしやすさを探してみましょう!



筆者は
ふやかし時間に神経質になってしまう事と
新三千本膠の接着力への疑いで
パフォーマンスが落ちている実感がありました。

なので、ふやかし時間が少なくなる
播州粒膠を使っています。


やること

6時間ほど放置し、ふやかしておく

④膠を湯煎をして溶かそう!


これができたら、湯煎するだけ!

電熱器に水を入れた鍋を置き、
膠鍋や、耐熱ビンをいれて温める!

ですがこの時、絶対に沸騰させないで下さい。



膠は、

  • 80℃以上で固まりにくくなる
    (乾きにくくなる)
  • 沸騰すると接着力が低下する



という特徴がありますので、
日本画では大体60℃~70℃のお湯が
ベストな温度です。



ただ水温計が無い事が多いと思いますので、

とにかく何より沸騰は厳禁!

と覚えておきましょう。





ところで膠の濃度に引き続き
お湯の温度も、
作家や分野によって異なるようです。


ネットでの検索ですが、

70℃ (絵)

60℃以上NG (絵)

80℃ (バイオリン)

60~70℃ (バイオリン)

75℃ (ピアノ)


と、わずかながら差がありました。




上記の水温は一例として紹介しましたが、
60~70℃と説明している技法書が多いので
本ブログではそちらをベスト水温として
採用しています。



電熱器の代わりに保温トレイを使うときは、
鍋の代わりに
耐熱ボウルや磁器の筆洗も使用可能です。



ふやかした膠を、レンジで30秒チンする
方法を使う作家もいます。
こちらは早くて便利な方法ですね。

ですが、
「日本画 画材と技法の秘伝集」
では、粘度が弱いとされていますので、
当ブログではお勧めしません。

やること

耐熱の膠を、沸騰しない程度の水度で湯煎する

⑤膠水をこして、不純物を取り除く!



やっと膠が液体になり、
膠水と呼べるようになりました!
お疲れ様です!


ですが最強の膠水の作成のためには
最後にもう一つ、工程が残っています。

それは、ろ過すること!

膠には製造途中に不純物が混入しています。

そのままでは腐りやすくなったり、
思い通りの色にならなかったりします。

なので、ろ過して不純物を
取り除いていきましょう。



ガーゼやペーパータオル、
ナイロンストッキング
が良く使われています。

筆者はガーゼかペーパータオルを使う事が
多いです。



こした膠水は、耐熱ビンに戻しましょう。


やること

膠水をろ過して、耐熱ビンに入れる。

おめでとうございます!
これであなたの膠水が完成です!!


電子レンジでも溶かせる!【2022/03/12追記】

瓶に入れた三千本膠(筆者撮影)

電子レンジでも膠を溶かせると聞き、
実際にやってみました!

膠をレンジで溶かす手順
  1. 膠と水を耐熱容器に入れ、数時間ふやかす。
  2. 電子レンジ600Wで10秒ずつ温める。



三千本膠か、粒膠かでふやかす時間は
変わると思います。



今回やってみた時には、上の写真ぐらい
の柔らかで、電子レンジにかけましたが

10秒温めるだけで完全に溶けきりました。


電子レンジで溶かした膠は、
接着力が多少落ちるという説もあります。

多くの美大で行われている方法の
ようなので問題はないと思いますが、
気になる方はご注意ください。

日本画の膠水を保存するときの注意点!【膠の作り方と使い方】



完成した膠水は、どんどん使って下さい!

一週間も一か月も、後生大事に使わないで下さい!


なぜってそれは、
膠はナマモノだからです!
腐ります!



使用期限は夏は3日
冬であっても
1週間~10日が限度です。



古くなると、まず腐る前に、
膠の接着力が落ちてしまいます。

室温でプルプルに固まらなくなったら
完全に寿命と思って差し支えありません。




そして、保管時は冷蔵庫に必ず入れること!

冷凍庫はNGです。
コラーゲンが破壊されて、接着力が
なくなってしまいます。




冷やされた膠液は、
ゼリーのようにプルプルになります。


さて、このままでは絵を描くときに
使えませんね。

なので、ここは温めて液体に戻しましょう。



夏は常温で液体に戻りますが
冬はそのままでは戻りません。

そのため、再度お湯などで容器を温め
液体に戻す必要があります。



冬の室温でプルプルの固形に
なってしまう時も同様です。

ときどき温めて、液状にしてから
使いましょう。

↓こちらの記事も参考にして下さい!↓

【日本画】冬に固まる膠の保温に必携!便利アイテムを一挙紹介

日本画における膠の作り方と使い方、種類のまとめ



①三千本膠1本を砕く!
②水100ccと一緒に耐熱ビンに入れる!
③沸騰しないように湯煎する!
④ガーゼでろ過してビンに入れる!



まとめると、この5つの手順で
膠水を作ることが出来ます。


途中で複雑な説明が入りましたが、
始めは作ってみるところから
スタートするのが一番です。



発色や使い心地の違いが分かってきたら
改めて解説を読んでみてくださいね。

【日本画胡粉】丹青指南での作り方・使い方の訳文【おまけ】

狩野永徳唐獅子図

電子書籍&
ペーパーバック発売中!


原文が本で読めるようになりました!



狩野派が代々伝えてきた丹青指南にも
もちろん日本画胡粉の作り方、使い方が
掲載されています!

その文章を現代語訳していますので、
ぜひ皆さんで、この記事の知識を
思い出しながら活用して下さいね!




膠の使用方法
一、膠の性質および溶かし方については
前に記したドーサのくだりで述べたので、
ここには書き示しません。

※↓以前の記事を参考にして下さい↓






絵具に用いる膠の濃度の加減は
通年1 同じです。

まず一枚の板膠におよそ一八〇ml (一合)
の熱湯を注いで煮沸し、
あたかも種油のようにドロドロに溶かします。


その膠液が九月中旬(中秋の秋)から
翌年初夏頃までは、煮凝りのようになるように
濃く解かすこと。

ただし、膠を煮る鍋は煮沸している間は
金属製で問題ありませんが、
溶いた後は土鍋を用いるのがいいです。


これは冷気によって膠が凝固したときに、
その土鍋のままで数回火の上であぶっても
破損しないのと、
蒸気が発生しないためです2 。

そしてこの膠液には少しばかりも
ミョウバンが入らないように注意すること。




1 四季とともに同じにて、
2 気の発せざるとの為めとす、

日本画の膠水の作り方に関する参考文献



現代版丹青指南!日本画のバイブルです。

丹青指南のまとめは画像をタップ!

狩野派による日本画解説書「丹青指南」を現代語訳

前の記事はこちら!

次の記事はこちら!