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日本画の神髄を極める!金泥の使い方とオリジナル色の泥作り方法を完全解説

この記事の内容
  • 金泥の発色が良くなる使い方を紹介!
  • 箔からオリジナルの泥を作る方法!

こんにちは、日本画家の深町聡美です。


皆さんは金泥、使っていますか?


誰もが知っている日本の名画を彩ってきた金泥。


実は使い方にコツが要る画材なんです!




膠で溶いて混ぜただけではキレイな発色になりません。

正しい使い方を読んで、
あなたの作品をさらに美しくしませんか?





今回は

  • 日本画の金泥の使い方
  • オリジナル泥の作り方

を解説します。



最後まで読んで、
制作に役立てて頂ければ嬉しいです!


⇒金泥って知ってる?日本画で使われる輝く装飾の秘密と代替アイテム!

⇒知っておきたい!金泥・銀泥の色の種類とその理由【日本画】

日本画の金泥とはどんなもの?

UnsplashMUILLUが撮影した写真

「金泥」ってなに?なんて読むの?

DARENIHO

「きんでい・こんでい」と読みます!
「消し粉」「消」と呼ぶ事もあります!



金泥とは「きんでい」「こんでい」と読む、
非常に細かい金色の粉です!

原料は金箔

金箔を細かい粉にしたのが金泥なのです!

DARENIHO

箔ではなく金属の塊を細かくした物が「粉」(ふん)です。



金泥は日本画絵具と同じように
を混ぜて使うことが出来ます。




関東では「消し粉」(けしふん)とも呼ばれます。


日本画の金泥の色の種類はこんなに沢山!

筆者撮影
箔は硫化や染色で色を変えることが出来る

でも金泥って金色しかないんでしょ?
僕はカラフルなのが好きだなあ。


一口に金泥、銀泥と言っても、
原料になる箔は多数の色があります。


そのため、意外にも
泥の色数はバラエティに富んでいます!


多数ある泥の中でいくつかの色をリストにしました。

ぜひチェックしてみて下さい!

純金が多い泥の色

1号色純金97.66%,純銀1.35%、純銅097%
2号色純金96.72%,純銀2.60%、純銅0.67%
3号色純金95.79%,純銀3.53%、純銅0.67%
4号色純金94.43%,純銀4.90%、純銅0.66%
出典:『日本画用語事典』63頁

金と他の金属を混ぜて作った色

純金泥純金90%程度に純銀、純銅焼色とも呼ばれる
青金泥金75%、銀25%いろよし、常色(つねいろ)とも呼ばれる
水金泥金58.59%、銀41.4%定色(さだいろ)、水色とも呼ばれる
白金泥プラチナ
純銀泥
仲色純金と青金の間の色今日では少ない
出典:絵具屋三吉



銀を硫化させて作った色

薫銀泥1号暗い暖色系の灰色
薫銀泥2号やや暗い暖色系の灰色
薫銀泥3号暗い青緑
薫銀泥紺暗い青色
薫銀泥紫暗い赤紫
薫銀泥赤紫やや暗い赤紫
薫銀泥円子銅のような赤茶
薫銀泥茶山吹茶色
薫銀泥淡茶黄色みのある明るい茶色
薫銀泥焦茶やや暗い茶色

金属の比率や硫化で、こんなに沢山の色が作れるんだね!

DARENIHO

他にもラメ感がカッコいい、とてもカラフルな泥が開発されています!


さらに詳しく色を知りたい方はこちら!

⇒知っておきたい!金泥・銀泥の色の種類とその理由【日本画】




それでは次の章で金泥の使い方を見てきましょう!


単に膠と混ぜるだけでは金の無駄遣い!


正しい使い方で鮮やかな金色を生み出して下さいね!


日本画の金泥の基本的な使い方

DARENIHO

ここからは金泥の基本的な使い方を解説していきます!

まずは、

  • 金泥
  • 大きい絵皿
    (プラスチックNG)
  • 加熱できる器具
    (保温トレイ、電熱器等)

この五つの材料を用意します!


そして以下の手順で金泥を練り混ぜます。

金泥の溶き方①
  1. 金泥を皿に入れる
  2. 薄い膠を入れて練る
  3. 焼き付けを行う
  4. ぬるま湯を入れて上澄みを捨てる
  5. ②~④を数回繰り返す
  6. 膠と水を混ぜて使う

具体的な手順を見てみよう!



金泥を皿に入れる


まずは、絵皿に金泥を入れましょう

こぼさないように気を付けて、
息を止めて慎重に行います!

薄い膠を入れて練る


薄い膠を少量入れて練ります!

多すぎると次の工程に時間がかかります。

膠で金泥がじゅうぶんに湿る程度がベスト!

③焼き付けを行う


絵皿ごと保温トレイなどで加熱し、
干上がらせます

これを焼き付けと言います。

ぬるま湯を入れて上澄みを捨てる


焼き付けを行った皿を覚ました後、
ぬるま湯を入れます

少し待って金泥が沈殿したら、
上澄を捨てます。

⑤②~④を数回繰り返す


2~4を、2,3回繰り返します。


何度も行うことで、
金泥の発色は良くなっていきます!

膠と水を混ぜて使う



金泥の発色が良くなったら、
少量の薄い膠と水を混ぜて使います!


濃い膠では発色が悪くなってしまいますので
多少薄めの膠で溶きましょう。


出来上がった金泥は、通常の岩絵具と同様に
筆や刷毛ですくい取って使います。

あとは普通の日本画絵具と使い方は一緒なんだね!



DARENIHO

金泥の使い方手順はほかにもあります



金泥の使い方は、
今回紹介したやり方の外にもあります。


焼き付けを行ったり、膠で溶いたり、
おおよそは同じですが、やりやすそうな方で
やってみるのが良いですよ!


金泥の溶き方②
  1. 金泥を皿に入れる
  2. 薄い膠を少量ずつ入れて練る
  3. 絵皿ごと保温トレイなどで加熱し、焼き付ける
  4. 再び薄めの膠液を入れて練り混ぜる
  5. ぬるま湯を加えて良く練り混ぜる
  6. しばらく置き、上澄みを捨てる
  7. 少量の膠と水を入れよく混ぜて使う

好きな方で試してみてね!

狩野派はこうやっていた!昔の金泥の使い方!

不明 – e国寳, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4852583による

コンロや保温トレイがない時代はどうやって泥を使っていたの?

DARENIHO

それでは、狩野派の金泥の使い方を見ていきましょう!



狩野派の金泥の溶き方
  1. 絵皿にやや多めの膠を溶かす
  2. 乾いたら水をすくって湿らせる
  3. 皿を火であぶって練り混ぜる
  4. これを二、三回繰り返しよく混ぜる
  5. 充分に水を入れて溶いて使う


基本的な作り方は現代と同じですね!


金泥を作る絵皿は
「粗焼きで、なるべく大きい物」
と指定されていました。



ここからは、具体的な手順を見ていきます。

絵皿にやや多めの膠で溶かす


まず「やや多くの膠で絵皿に溶かす」
必要があります!

DARENIHO

現代では「少量の膠」でしたが、この頃は「やや多くの膠」という表現がされています。



そして、現代と同じく
絵皿に入れた金泥を中指と薬指で
丁寧に練り混ぜます。


乾いたら水をすくって湿らせる


指で混ぜていると、摩擦熱で乾いてきます。


水が減ってきたら人差し指で水をすくい、
水を中指から伝い落とし、皿を湿らせます。


皿を火であぶって練り混ぜる



充分に練り混ぜたら、皿を火であぶ
もう一度練り混ぜましょう。

皿が冷めてから練ってね!


これを二、三回繰り返しよく混ぜる


①~④をを二度、三度と繰り返し、
さらによく練り混ぜましょう。


金泥が良く練り混ぜられ、発色が良くなります。

充分に水を入れて溶いて使う



ちょうど良く練れたら、
先ほどのように人差し指で水をすくい、
中指から伝い落としつつ、
充分に水を注いで溶いて使います。


これで金泥が完成です!

DARENIHO

以上が狩野派の金泥の使い方でした!

昔から変わらない使い方なんだね!



欲しい色がない!?金泥を自分で作る方法を伝授!

UnsplashPhotoholgicが撮影した写真

好きな色の箔はあるんだけど、泥は売っていないみたい。

DARENIHO

それなら自分で泥を作ってみるのはどうでしょうか?



狩野派の技法書『丹青指南』では、
好きな色の箔で泥を作る方法が掲載されています!

この技法は箔を細かく解(ほぐ)して作るので
「箔解」(はくけし)と呼ばれています。


この章では自作の泥の作り方を、
現代語訳をしながら解説いたしますね!


DARENIHO

手順は以下の通りです。

金泥の作り方
  1. 絵皿に大量の膠を入れる
  2. 火で温めて皿一面に膠を広げる
  3. 金箔を一枚入れて指で擦って細かくする
    これを繰り返す
  4. 乾いてきたら水を加え、火で温める
  5. 少量の膠を入れてさらに力を入れて練る
  6. 垢抜きを行う
  7. ①~⑥を三、四回繰り返す



まずは箔を用意しよう!



まずは原料となるを用意しましょう。


数種類の箔を混ぜて使ってもOKです!
オリジナルの泥を作ってみましょう!

50枚以上あると充分な泥がつくれますよ。
少ないと発色が悪くなるので、多めに用意しておくのがいいですね!


狩野派では、基本の色として「青金泥」を使っていました。

DARENIHO

当時は、青金泥以外の泥は売られていなかったようです。

だから自分で箔をほぐして作っていたんだね!



絵皿に大量の膠を入れる

まずは絵皿に多量の膠を入れます。

絵皿はできるだけ大きいものを使いましょう!

箔をたくさん入れるので小さいと溢れてしまいます。

かさが増えていくことを考えて、大きい絵皿を使うのが良いね。



火で温めて皿一面に膠を広げる

火で温めて動かしゆすり、膠を皿一面に広げるように流します

DARENIHO

現代では保温トレイやコンロなどを使いましょう。

金箔を一枚入れて指で擦って細かくする

箔を一枚取って皿に入れ、それを中指と薬指でゆっくり擦ります

この際、小指を使っても構いません。

すると箔は細かいきれぎれの破片になります。

さらに、もう一枚の箔を取ってその上に置き、
同様に数回擦ります。

乾いてきたら水を加え、火で温める


指で擦っていると摩擦熱で水が乾いてきます。

皿に水を入れ、また火で温めましょう

少量の膠を入れてさらに力を入れて練る

④の皿に少し膠を入れて、二、三回練ります。

そして指に強く力を入れて、更によく練ります

箔片が徐々に粗い粉となったら、第一回目の箔解が終了です。

細かくなるまで指で擦るということだね!

⑥垢抜きを行う



指で擦っていると、手の汚れで発色が落ちてしまいます。

そこで、「垢抜き」という方法で箔をきれいにしましょう!

指で摩擦した際に汚れた金色は、
垢を除去することで発色が回復します。

垢抜のやり方
  1. 箔解をした皿に白湯か水を充分注ぐ
  2. それを火にかけて煮沸する
  3. 火からおろし、蓋をして一晩置く
  4. 皿の水を捨てる
  5. その皿を火にかけて乾かす
DARENIHO

箔の油分を落として綺麗にするんですね。



①~⑥を三、四回繰り返す


垢抜きをした後、再度皿を温めます。


そして、多量の膠を入れて、
4回ほど繰り返し擦りましょう。


2、3回で少し泥状になり、

3、4回でほぼ金泥を完成させられます。



まだ完全に金泥になっていないときは、
繰り返し擦って金泥を作り上げましょう!


注意
普通の金泥・銀泥でも、
箔が汚れることがあります。

その時はすぐに煮沸して
垢抜きをして下さい。

これでオリジナルカラーの金泥が出来上がりだ!



まとめー日本画の神髄を極める!金泥の使い方とオリジナル色の泥作り方法を完全解説



最後までお読み頂きありがとうございます!


今回は金泥の使い方と作り方を解説してきました。

まとめ
  • 金泥は焼き付けを行いながら何度も練って作る!
  • 金箔からオリジナルの金泥を作ることが出来る!


金泥は膠と混ぜて
普通の日本画絵具のように使えます。

ですが、それでは良い発色は得られないのでしたね。

そのために「焼き付け」を行い、
何度も練る必要がありました。




また、泥は箔を使えば好きな色が作れました。


今回の記事が参考になれば嬉しいです。

みなさんもぜひ、
金泥を使って作品を作ってみて下さいね!

描いた作品は、SNSやコメントで見せてくれると嬉しいな!


泥の使い方はもちろん
日本画のすべてが分かる!



金泥をもっと知りたいあなたへ!

⇒金泥って知ってる?日本画で使われる輝く装飾の秘密と代替アイテム!

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狩野派の金泥の技法を現代語訳で読もう!

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による

ちゃんど原文を読むにはどうすればいいの?


そんな時は国立国会図書館のサイトでチェック!

全文を無料で読むことが出来ます!


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という方は画材と技法の秘伝集がおススメです!

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原文が本で読めるようになりました!

金泥の使い方()

(※原書では「金泥使用方並びに箔解の仕方」)

一、金泥を使うには、
まず絵の具皿にやや多く膠を入れて溶かし、
絵皿に入れた金泥を中指と薬指で
綿密に練り混ぜます。


その熱によって皿の水分は乾くので、
人差し指で水をすくい、
水を中指から伝い落とし、皿を湿らせます。



さらに皿を火で(あぶ)って練り混ぜて、
それを再三繰り返し、さらによく練り混ぜます。

すると金泥はだんだん良く練り混ぜられてきます。




程よい具合になったら練るのをやめ、
先ほどのように人差し指で水をすくい、
中指から伝い落としつつ、
充分に水を注いで溶いてから使います。



ただし金泥の皿は(あら)()きで、
なるべく大きいものが必要になります。


箔解(はくけし)のやり方



この箔解のやり方は、
ある場合では数種の金泥を使用することがあります。



その箔の種類の中で、
一番色が濃いのは(こげ)(いろ)」で、
その次は(いろ)(よし)(※原書では色よし)」、
その次は「中色(なかいろ)
(※現代はあまり見られない。純金と青金の間の色)
その次は「(つね)(いろ)(現代の青金泥)、
その次は「青」と呼び、やや銀色に近い色です。



この五種類の色のうち
常に使うのは「色吉」で、
他の四種には既成品はなかったと思います。


そのため技術者は必要なときに、
好みの色の金箔を求めて、
その箔を自分でほぐして金泥を作るのです。



そこでここに箔のほぐし方を示しておきます。

(本文金泥「色吉」の分は
既製品がないと記しましたが、
今は既製品がいろいろ増えたと言います)



これからほぐす金箔は間紙(あいし)に置いたままにして、
そばに置いておきます。


そして絵の具皿に多量の膠を入れ、
それを火で温めて動かしゆすり、
膠を皿一面に広げるように流します。




その後、側に置いた金箔(きんぱく)を一枚取って皿に入れ、
それを中指と薬指で(小指を使ってもよい)
ゆっくりと摩擦すれば、
箔はだんだん砕けて細かいきれぎれの破片になります。



さらに、もう一枚の箔を取ってその上に置き、
それを先程のようにして擦るのを数回行います。


すると摩擦の熱で水が乾くので、
皿に水を濡らし、また火で温めます。



それにも少し膠を入れて二度三度と
繰り返し摩擦し、
その次に各指に強く力を入れて更によく練ります。


切れ切れの箔片は、
だんだん砕けて粗い粉となるので、
これで第一回目の箔解を終わります。



指で摩擦した際に汚れた金色は、
(あか)を除去することで発色が回復します。
(この煮沸する方法を「垢抜き」と言います)



まず(はく)(けし)をした皿に、
白湯もしくは水を充分注ぎ、
火にかけて煮沸します。


その皿を火からおろし、
それに(ふた)をして一晩置いておきます。



最後に、翌日になって冷えた皿の水を捨て、
次にその皿を火に掛けて水分を乾かします。




そして、二回目の箔解を行う時には、
まだ皿の熱気が冷めないうちに
多量の膠を入れて、前述の方法で
また二回三回と繰り返し摩擦します。




すると粗い粉は更に砕け、
少し泥状に近いものとなります。



その後、また前と同じ方法で三回目、
四回目の箔解を行います。



これで大抵は金泥を完成させられるのですが、
まだ完全に金泥になっていないときは、
前同様の方法で何回も繰り返して箔解を施し、
完全な金泥を作って下さい。


ただしこの箔解を施す時には五十枚以上の金箔で作ること。


少数で作るとその色相は良くありません。


この方法で作った金泥に限らず、
普通の金泥および銀泥でも、
使うにはその度に多量の膠を入れて摩擦するため、
その時々で箔が汚れることがあります。



その時はすぐに煮沸して垢抜きをして下さい。

銀泥(ぎんでい)の使い方

一、銀泥を使う時でも
すべての方法は金泥と同じです。

そして銀泥でも、
場合によっては銀箔から作ることもあります。








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