8/1 新刊『日本画の絵具と色彩』発売されました!

知っておきたい!金泥・銀泥の色の種類とその理由【日本画】

この記事の内容
  • 純金だけでなく銀やプラチナの泥もあるんです!
  • 偽物の金泥を見分けるときは、商品ページを見ること!
  • 金泥の番号や青、水とは色の種類!成分の違いと色リストを紹介!
  • カラフルな金泥銀泥の世界


こんにちは、日本画家の深町聡美です。

ちょっとハンドメイドをしようと思って
ハンズに行ってみたら、
ズラリと並ぶ金泥の種類!

若干名前が違うけど、一体これは何!?」
「この番号は一体なんなの!?



そんな謎に包まれた金泥の名前の意味が
この記事でまるっと分かります!


今回は金泥、銀泥の色の種類と名前について解説致します!


⇒日本画の神髄を極める!金泥の使い方とオリジナル色の泥作り方法を完全解説

金泥とは純金から作られた日本画の絵具である!

不明 – Kyoto National Museum, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7846694による

ところで金泥ってあんまり馴染みがないよね。
一体どんなものなの?


金泥とは、日本画で使う金色絵具です!

ほかにも漆工芸の金継ぎなどで使われていますね。


しかしただの金色絵具ではありません。


最高級の物では99%の純金の金箔を細かく砕き、
ごく微粒子にしたものなのです!


DARENIHO

この細かい金粒にを混ぜたりして絵具にして使うんですよ!



そんな高級感溢れる金泥

普通の文房具店には売っていないので、
あまり馴染みがないと思います。


ですが、誰もが教科書で見たことある
仏像や絵巻にも使われている
んですよ!



例えば、この富士山。

Original art of Taikan Yokoyama2 (November 1868 – 26 February 1958).Stamo of Japan Post) – own stamp collection, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=12157372による


これは「無我」で有名な横山大観が描いた絵です。


横山大観は数多くの富士山を描きましたが、
背景の金の雲霞は金泥で描かれているのです。

不明 – Kyoto National Museum, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7846694による


この仏様の絵も全身に金泥が使われています。

鎌倉時代ごろに金泥や金箔をふんだんに使った
超キラキラな仏画が発達しました。

日本史の教科書にもキラキラした感じの仏画が載っていた気がする!

金泥は、仏様の金色の身体を視覚的に、
リアルに表現するために使われていたのです。


金泥と銀泥だけじゃない!泥の色は、実はたくさん!

UnsplashMUILLUが撮影した写真

今の絵具みたいな、銀色の絵具はなかったの?

DARENIHO

銀箔を原料にした銀泥もあります!
現代ではもっと沢山の色が揃っていますよ!


金泥は金を細かくしたものです。

なので、金属の種類を変えれば様々な泥が出来るという訳です!


そのため金銀だけでなく、

  • プラチナ
  • 真鍮
  • アルミ

など様々な泥があります。



こちらはプラチナ(白金)の泥です。

泥は「消し粉」と呼ぶ事もあります。


プラチナは銀と似た色をしていますが、
錆びることがなく永遠に白いままです。




こちらは「代用銀消粉」と書かれていますが
実はアルミで出来ています!





ほかにも銀泥を燻して色を変えた泥
アルミや真鍮を加工して色を変えた泥、
また同じ金泥でも純金の比率で色を変えた泥もあるんです!
(詳しい解説は次の次の章で!)


思ったよりたくさんの色があるんだ!

DARENIHO

老舗日本画材店、喜屋さんのカタログでは22色の泥が掲載されていました!




あれ?
でもさっき見た銀泥、
実はアルミ泥でしたよね?

「アルミを銀やプラチナと偽っている!?偽物?!」
「もしかして金泥の偽物もあるの!?」



と不安になった方もいるかもしれません。


そんなあなたのために、
ここからは「なんちゃって金泥」についてお話していきます!


金泥にも偽物がある!?見分け方はこれ!

Stefan SchweihoferによるPixabayからの画像

いままで使っていた金泥って偽物だったかもしれないの!?
それって詐欺じゃない!?

DARENIHO

結論、偽物や、騙している、犯罪ということではない!
あくまで別物、代用品という位置づけです!



結論から申し上げると、
「金泥」という商品名で
真鍮やアルミを使っている物はあります。


ただ、ちゃんと書いてあります!



例えば先ほどの代用銀消粉 10g入り (加飾材料) 漆工芸用品

商品ページを見たら
「アルミ紛」と書いてありますよね。



ほかのお店でも、
「青金粉泥(真鍮加工)」
など、分かるように書いてあるはずです。



つまり、ちゃんと商品を見れば書いてあるので
偽物とか騙すとかはありえないんです。



体感ですが、日本画等の古い技法では
絵具の成分等が明確に決めているのではなく、

色が金色だから金泥。
銀色だから銀泥。


的な雰囲気です。

もちろんお店は誤解がないように成分を明記しています



なので、商品ページやパッケージを
きちんと確認しましょう!


違う成分の泥を買ってしまうのを防げますよ!

商品ページを見て、理解してから買わないといけないね!

でも偽物なんじゃないの?」と思うあなたへ!

同じ白系の泥でも、プラチナ、銀、アルミがあります。
ですが、それぞれ色や性質が異なります。

銀はプラチナやアルミと異なり温かみのある白です。
また、変色させることが出来るので、
それを狙った場合、アルミ泥は代用になりません。

プラチナは冷たい光沢で若干色が暗い白です。

アルミはプラチナに似た色ですが、
光沢が少し違います。


金泥もまた、真鍮とは色が異なります。


つまり、
「偽物で安く済ませよう」
「騙して高く売ろう」
ではなく、意図的に安価な泥を使っている場合もあるのです。

DARENIHO

至善堂さんのHPで色や特徴が確認できます!

金泥でも色が違う?〇号色の意味とは?

待って!この金泥、番号が付いているよ!
水とか青とか書いてあるのもある!

どういう意味!?


青金泥とか、水金泥とか、
純金泥でも1号とか2号とか…

想像以上に色数が多いのが金泥です。

  • 純金泥〇番
  • 青金泥、水金泥
  • 定色、常色

これらは色を示す言葉です。

「カサアリ」「コマカ」等の形状を示す言葉もあります。

泥は、混ぜ合わせる金属の種類、その比率。
そして加工等で色を変えているのです。


DARENIHO

次の章では色の名前と金属の種類、比率をまとめました!
購入前にチェックしてみて下さいね!



【日本画】金泥、銀泥の種類一覧

金、銀、プラチナ!リッチな泥

五毛色金98.91%、銀0.49%、銅0.59%「ごもう」と読む
純金泥金90%程度に銀、銅焼色とも呼ばれる
青金泥金75%、銀25%いろよし、常色(つねいろ)とも呼ばれる
純金より白い
水金泥金58.59%、銀41.4%定色(さだいろ)、水色とも呼ばれる
金とプラチナの中間の色
白金泥プラチナ
純銀泥
仲色純金と青金の間の色今日では少ない
出典:絵具屋三吉


「金100%がないじゃないか!」

と怒らないで下さい!

金は非常に柔らかく扱いにくいので、
通常は銀や銅を混ぜてあります。

至善堂では24K(金99.99%)の泥
販売されています!

一見の価値ありです!




また、金の含有率が高いものは
「〇号色」と番号で区別されています。

1号色純金97.66%,純銀1.35%、純銅097%
2号色純金96.72%,純銀2.60%、純銅0.67%
3号色純金95.79%,純銀3.53%、純銅0.67%
4号色純金94.43%,純銀4.90%、純銅0.66%
出典:『日本画用語事典』63頁



真鍮やアルミで作った金色銀色の泥!

Image by PublicDomainPictures from Pixabay
本金粉泥銅89%、亜鉛11%
準金泥銅85%、亜鉛15%
金彩泥アルミ加工
青金粉泥真鍮加工
白金粉泥アルミ加工
黒泥真鍮泥の色調を調整して作る
出典:絵具屋三吉、至善堂、喜屋


これらはアルミや真鍮、亜鉛合金等で作られた比較的安価な泥です。


ほかにも「洋金」「洋銀」と名前が付いているのは、真鍮やアルミを原料にした物なので、覚えておくと役立つかもしれません。


銀泥だけどカラフルな泥!薫銀泥!

画像はイメージです
UnsplashNikが撮影した写真


泥は金と銀しかない?
という既成概念を打ち壊すのが、
この「薫銀泥」(くんぎんでい)です。


こちらは銀泥を硫黄で燻して色を変えた泥です。

シルバーアクセサリーも燻して黒っぽく色を付けますよね?

それと同じような方法で色味を調整したものです。

DARENIHO

原料は銀なので、経年で変色するそうです。
使用後はドーサでコーティングをしておくと良いでしょう。

薫銀泥1号暗い暖色系の灰色
薫銀泥2号やや暗い暖色系の灰色
薫銀泥3号暗い青緑
薫銀泥紺暗い青色
薫銀泥紫暗い赤紫
薫銀泥赤紫やや暗い赤紫
薫銀泥円子銅のような赤茶
薫銀泥茶山吹茶色
薫銀泥淡茶黄色みのある明るい茶色
薫銀泥焦茶やや暗い茶色
出典:絵具屋三吉、至善堂、喜屋


ほかにも銀泥に樹脂と顔料で着色した、
銀彩泥という品物も販売されています。




ちょっと粒子が大きいお手軽な泥!

↑金継ぎ用の紛。使用したことはないが参考の為掲載。

泥じゃなくて「粉」と書いてある物もあるよ。
泥と粉は何が違うの?



泥の仲間として「粉」(ふん)という物があります。

粉は、箔から作られた泥と異なり、
金属の塊(地金)から作られています。


特徴として、泥よりも粒が大きいことが挙げられます。

洋金粉 赤口真鍮
洋金粉 青口真鍮
アルミ紛アルミ
銅粉

「粉」として売られているのはアルミや真鍮などが多い印象です。

DARENIHO

楽天やAmazonで売っている安い金粉は、ほぼ雲母の類が主成分ですね。




まとめー知っておきたい!金泥・銀泥の色の種類とその理由【日本画】

Hon’ami Koetsu and Tawaraya Sotatsu, died XVII century – Scanned from a book, パブリック・ドメイン,https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=26444554による


最後までお読みいただきありがとうございました!


この記事では、日本画において使用される
金箔や銀箔の色の多様性について詳しく解説してきました。


金箔や銀箔は、その美しい輝きと独特の色合いによって
古くから作品に独特の輝きを与えてきました。


金泥にも水金泥や青金泥などの色の違いあるほか、
純度が高い金泥でも五毛〇号などで色が区別されています。


また、現代では銀を燻して色を変えた物、
銀に着色したもの、他の金属から作った代用泥など
様々な泥が存在しています。


皆さんも金泥だけでなく、
いろいろカラフルな泥で制作してみて下さいね!








前の記事はこちら!

金泥って知ってる?日本画で使われる輝く装飾の秘密と代替アイテム!

次の記事はこちら!

⇒日本画の神髄を極める!金泥の使い方とオリジナル色の泥作り方法を完全解説