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【呪術廻戦】「獄門疆(ごくもんきょう)」の元ネタと正体を、源信の史実から解説&考察!【獄門彊】

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結論

獄門疆は世界間を区切る」結界だった!?

今回は渋谷事変編のキーアイテムである
「獄門疆(ごくもんきょう)」
について解説します!

呪術廻戦の中では
「生きた結界 源信の成れの果て」
と説明されていましたね。



そこで賢い皆さんは、

「源信ってなに?」
「なんで源信が結界なの?」



と疑問を持ったのではないでしょうか?



この記事では、

「獄門疆と源信、結界はどんな繋がりが
あるの?」



という疑問に、

  • 現実に存在した僧侶である源信、
  • 彼が書いた 「地獄・極楽を書いた本」

をひも解きながら、解説・考察します!




呪胎九相図の元ネタ考察・解説は
↓こちらの記事から!↓

➡【呪術廻戦】元ネタから「呪胎九相図は」なぜ「受胎」する必要があったのかを考察!

【閲覧注意!】呪術廻戦「呪胎九相図」の元ネタは○○を描いた衝撃の日本美術だった?!【元ネタ画像付き】

【元ネタ】呪術廻戦の「獄門疆(ごくもんきょう)」とは? 【源信】

呪術廻戦(じゅじゅつかいせん)とは
『週刊少年ジャンプ』で2018年から
連載されている、芥見下々(あくたみげげ)氏
による漫画作品です。

ストーリーを簡単に言うと

『呪術師』という、呪いを扱う仕事の少年少女
たちが、現代日本を渦巻く呪いを祓い、
陰謀を解決していく異能力バトル漫画

です。


さて、この呪術廻船の中に登場する

「獄門疆(ごくもんきょう)」

こちらは、前に記事にした


「呪胎九相図」



【閲覧注意!】呪術廻戦「呪胎九相図」の元ネタは○○を描いた衝撃の日本美術だった?!【元ネタ画像付き】

【呪術廻戦】元ネタから「呪胎九相図は」なぜ「受胎」する必要があったのかを考察!



と同じく、呪いアイテムの一つです。



作中では、最強キャラの一角である
五条悟を封印し、異世界のような場所に閉じ込め
無力化に成功していました。

引用:芥見下々「呪術廻戦11巻」集英社 2020年



獄門疆の効果はシンプルです。

獄門疆から4メートル以内に
術対象者を、対象者の脳内で1分間とどめておくだけ。


これだけで


対象を異空間に閉じ込めることが出来る
=封印できる


というものでした。




さて、そんなアイテム獄門疆が
「『世界間を区切る』結界」
とはどういうことなのでしょうか?

【呪術廻戦】「獄門疆(ごくもんきょう)」の元ネタと正体を漢字の意味から考察【源信】

引用:https://mojinavi.com/




「獄門疆(ごくもんきょう)」
=「『世界間を区切る』結界」


といえる理由を説明する為に

まずは、「獄門疆」という漢字の意味から
理解する必要があります。


まずは
「獄門」の意味から解説していきます。


「獄門疆」の「獄門」の意味とは?



獄門の意味。

これは晒し首の刑罰という意味があります。

Wikipediaには

「こうした刑罰は平安時代後期から存在し、平安京の左右にあった獄の門前に斬首された罪人の首を晒した事が「獄門」の語源であると言われている。」

引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%84%E9%96%80

と書かれています。



しかし、獄門疆の「獄門」の意味には
刑罰の意味に加え、

晒し首にした場所、つまり実在した「獄の門」

……というより

「門」そのものに意味があるのではないか
考えます。


「獄門=刑罰×門」と考えた理由は
二つあります。


①晒し首にされていない


まず五条は晒し首にされていないですよね。
晒されるどころが、閉じ込められていますね。

よって、「斬首の上、晒し首」という刑罰だけが
由来とは言い切れないでしょう。



しかし一方で、獄門の対象である犯罪者は
牢屋に閉じ込められます。

獄門疆もまた、対象を閉じ込める結界です。


そのため、
獄門疆の「獄門」とは
「打ち首ではないが、刑罰によって閉じ込められる」
を印象付けさせるためのネーミング
ではないかと
考えられます。


②「生きた結界 源信の成れの果て」の意味



獄門疆は、作中では
「生きた結界 源信の成れの果て」
と説明されています。

引用:芥見下々「呪術廻戦11巻」集英社 2020年



ここで突如あらわれる、源信こそが
獄門疆を理解する上での最大のポイント
言えるでしょう。


その源信後述する理由によって
「境界」(結界)を作りました。




……ところで、門が区切ったのは、人の往来や
土地だけではありません。




鬼門は、あの世とこの世を繋ぐ場所です。

鳥居は、神様の世界と人の世界を繋ぐ門です。


門には、異世界と人間の世界を区切る役割
あったのです。



つまり獄門疆の「門」は

獄門+門

罪人を閉じ込めるイメージ

異世界との境界

のふたつの意味を持つと言えます。

まとめ

獄門疆の「獄門」には

①罪人を閉じ込めるイメージ
②異世界との境界

のふたつの意味があると言える。

「獄門疆」の「疆」の意味とは

手書きで書くのが大変そう
引用:芥見下々「呪術廻戦11巻」集英社 2020年

「獄門疆」の


こちらは
かぎる/かぎり/さかい/土地のさかい
などの意味を持ちます。

一番身近な使い方では
新疆ウイグル自治区の「きょう」ですね。




まれに「彊」という漢字と間違って解説されている
ことがあるので、注意しましょう。

こちらは
しいる/強制する/つとめる/
努力して事を行う/つよい/つよい弓

と、まったく意味の違う言葉になってしまいます!

まとめ

「疆」には、かぎる/かぎり/さかい/土地のさかいの意味がある。

以上、獄門疆を漢字の意味から考察しました。



獄門には
罪人を閉じ込めるイメージ+異世界との境界。


疆には
かぎり/さかい

などの意味があると分かりましたね。



どちらの漢字にも
「境界」をイメージさせる意味があります。

これだけでも
閉じ込められそうなイメージが
湧きますが、

夏油が突如として言及した源信
なんと実際に「境界」(結界)を作りだしていたのです。


「呪術廻戦のネタバレ?」

いいえ、本当の話です。


実在した源信が結界を作ったとは
どういうことなのか?!

次の章からじっくり解説していきますね!

【呪術廻戦】「獄門疆(ごくもんきょう)」の元ネタ、源信を史実から解説【考察】

恵心僧都源信像 滋賀 延暦寺
引用:「1000年忌特別展 源信 地獄極楽への扉」p21 奈良国立博物館2017年




源信は平安時代の僧侶です。
恵信僧都とも呼ばれます。



日本史では「往生要集」作者として習いますね!




日本史に出てくると言うことは、
それだけ往生要集が日本に与えた影響が
大きいということなのですが、


皆さんは、往生要集がどんな本かご存知でしょうか?






ということで、往生要集を簡単に説明すると、
「地獄と極楽っていうのがあります!」
と紹介した本となります。




そしてそれが平安時代の貴族に大はやりします。



「えっそれだけ?」

と思いますよね?



ではこれのどこが重要なのか、
今から明らかにしていきましょう。

あの世とこの世は 繋がっていた!?

往生要集が書かれる前、
古代の日本に、浄土や地獄はありませんでした。



死後の世界、
いわゆる「あの世」があったとしても、

「あの山の向こう」

とかそんなものだったのです。



よく昔話でききませんか?

「悪い鬼は山の向こうへ逃げて行きました」

今でも
「痛いの痛いのとんでいけ、山の向こうへとんでいけ」

と言いますよね。



昔は、死後の魂が行く異世界は、
山の向こうだったのです。




「なんだ、山の向こうなら近くじゃん」

と思ったあなた!

そこがポイントです。




異世界といっても所詮山の向こう。
なので、行き来だって簡単なんです。

山じゃありませんが、
日本神話のイザナギだって、
死後の世界にイザナミを助けに行きました。

ご先祖さまは山の向こうから
見守ってくれていました。



つまり、

むかしむかしのあの世(異世界)は、
この世と地続きで、往来可能な場所だったのです。


でも、いまではあまりそんなこと
言わないですよね。

だって山の向こうは隣の県だもの。



たしかに現代では山が切り開かれて
車でトンネルを抜ければすぐに山の向こう。

住んでる人は鬼でも魂でもなく、普通の人です。




しかし、
いま、あなたがあたりまえと考えている
「あの世は山の向こうにない」
というのは、


科学の進歩だけでなく
ある立役者がいたからなのです!



その立役者とは・・・・・・




源信だったのです!

源信が世界を分断した!

地獄草紙 部分 奈良国立博物館
引用:「1000年忌特別展 源信 地獄極楽への扉」p83 奈良国立博物館2017年



源信は、

「山の向こうにあの世があって、
ご先祖さまが見守っているんだよ〜」

という水平の死生観




「地獄と極楽とこの世の三つの世界があって、
行き来は超難しいですよ〜」

垂直の死生観へ変えてしまったのです!





つまり、

「繋がっていた世界を分断させた
=境界(結界)を作った」


ということなんですね。

では一体どうやって、源信は世界に
境界(結界)を作ったのでしょうか!?

……実はそのキーアイテムが
「往生要集」だったのです!

源信が結界づくりに使った「往生要集」とは?

画像:pixabayより





往生要集を超簡単に言うと
「地獄と極楽っていうのがあります!」
と紹介した本

でしたね。



もう少し具体的に言うと、

  • 地獄がどんなに恐ろしいか
  • 浄土がどんなにすばらしいか
  • 浄土に行くには修行や念仏が必要ですよ!


というのを中国の経典などを引用しながら
まとめた本と言えます。

Wikipedia往生要集




言うなれば
「あの世ガイドブックー地獄・極楽の行き方あるき方」
ですね。

地獄草紙 部分 奈良国立博物館
引用:「1000年忌特別展 源信 地獄極楽への扉」p83 奈良国立博物館2017年




「あの世ガイドブックー地獄・極楽の行き方あるき方」
である往生要集が、
あの世には地獄と極楽がありますよ
と日本に紹介しました。



まず初めに
「厭離穢土―地獄はこんなに怖い!」の章。


ここでは六道地獄、

つまり人道、餓鬼道、畜生道、地獄道、
修羅道、天道、修羅道、天道の
六つの地獄の様子を説明しています。



この様子を描いたのが「六道図」や
「地獄草紙」ですね。


往生要集が説く地獄がどんな場所かは、
以下の記事↓ でも少し触れています。



次に
「欣求浄土―極楽浄土の素敵ポイント!」

で、極楽浄土がいかに素晴らしく、
綺麗で素敵な所かを解説しています。



そして
「極楽に往生するには?」
ということで、さまざまなイメージ瞑想のやり方、
念仏の唱え方、心構えなどの説明が入ります。




まさに
「あの世には地獄と極楽がある!」
という解説書、紹介本

なんですね。

まとめ

往生要集は、浄土と地獄の様子を紹介した本。
日本に浄土と地獄を紹介したのが往生要集

それでは源信が往生要集を出す前には
日本の仏教では、地獄も極楽もなかったので
しょうか?

源信が「往生要集」を出す前の仏教は地獄がなかったの?

當麻曼荼羅(貞享本) 部分 奈良當麻寺
引用:「1000年忌特別展 源信 地獄極楽への扉」p226 奈良国立博物館2017年

一応、奈良時代には極楽浄土への
信仰自体はあるようでした。


しかし、源信が「往生要集」を書く前の
平安仏教は、

  • 国を守るためだったり
  • 安産祈願や敵を呪い殺したりなど


現世でのご利益が基本です。




貴族たちにとって当時の仏教は

政治的に邪魔な人を呪い、
逆に敵に呪い殺されないように
身を守るための呪術でした。



そこにやってきたのが


「死んだら地獄、死んだら極楽浄土」

という、新しい価値観だったのです!





呪った相手が怨霊になって、祟り殺されるのを
恐れていた貴族たちは、地獄と極楽を

  • 死んだら地獄!→祟られたから地獄に行く!
  • 死んだら浄土!→でも仏教を信じれば大丈夫!

と考えました。




しかもキラキラした美しい仏様の絵
まで見せられるので、
貴族の間で大ブームになったわけです。

極楽浄土の様子を描いた絵が、作られ始めました。




こうして往生要集の考えが拡がることで、

日本の死生観そのものがガラッと変わったのです。


そして山の向こうに平行にあったあの世は、
行き来できない垂直の地獄と極楽になり、




あの世とこの世の間には
境界(結界)が作られたの
です。


 

まとめ

・昔の仏教は現世利益のおまじないだった!
・往生要集が広がって、あの世とこの世の間に結界ができた!

【呪術廻戦】「獄門疆(ごくもんきょう)」の元ネタ、源信が結界を作ったって言い過ぎじゃない?【考察・解説】

引用:芥見下々「呪術廻戦11巻」集英社 2020年

ここまで読んで、
「源信があの世とこの世を紹介したのはわかったよ」

「……でも浄土と地獄が分断された?
境界(結界)ができた?

それって言いすぎじゃない?」



と思いませんでしたか?

そうなんです。
現代では葬式をしたら極楽往生、
のような感じになっていますよね。




しかし、平安時代、
源信がいた頃の仏教では極楽浄土に行くのは
並大抵のことではありません!



ちょっと呪術廻戦を思い出してみて下さい。



獄門疆は封印されてしまうと、
100年でも1000年でも
自力での脱出は不可能とされていましたね。

引用:芥見下々「呪術廻戦11巻」集英社 2020年


言ってしまえば、獄門疆の中と外は
完全に分断されて、互いに干渉できない
という状態でした。

まさに、地獄
(※ちなみに仏教では人間世界も地獄に含まれます)
から極楽浄土に行くのは

獄門疆から出るくらい難しいことだったのです。





どれだけ浄土に往生するのが難しかったか
分かる絵があります。

二河白道図 光明寺本



これは平安末期から鎌倉時代によく描かれた
「二河白道図」という画題です。

上が立派な極楽浄土。
阿弥陀さんがいますね。

下には地獄(人の世界)。



その間にあるのは…
わかりますか?

火と水の河、
そして地獄と浄土をつなぐ
細い道。



ちなみにこの細い道、10cmなんですが、


みなさん、この道渡れますか?


渡り切れますか?







それだけ浄土に行くのは難しい!

来るのはともかく、
当時の一般人には行くなんて無理なんですね。

まとめ

この世(地獄)から自力で極楽浄土に行くのは無理!

以上、
源信が書いた往生要集によって

平行の死生観から、垂直死生観に分けられる
=世界が境界(結界)によって分断された


ちょっと納得できたのではないでしょうか?



地獄、極楽という考えを日本にもたらし、
みんながそれを信じ当たり前になる。



こうして完全に、あの世とこの世は
干渉できなくなってしまったと言えるでしょう。



まさに獄門疆の内と外なのです。

まとめー【呪術廻戦】「獄門疆(ごくもんきょう)」の元ネタと正体を、源信の史実から解説&考察!【獄門彊】

引用:芥見下々「呪術廻戦11巻」集英社 2020年

最後にもう一度、
獄門疆について振り返ってみましょう。

漢字の意味

罪人を閉じ込めるイメージ

異世界との境界

効果

対象を封印する

骸骨だらけの時間経過のない場所に閉じ込める

夏油の説明

「獄門疆は生きた結界、源信の成れの果て
獄門疆に封印できないモノはない」

その源信
往生要集によって、
あの世とこの世を分断=境界(結界)を作った。

※もちろん結果的に日本人の死生観が変わっただけで
源信の意図は知りません。



なんとなく繋がってきたのがわかりますか?


つまり、獄門疆とは

  • 源信が変えた死生観
  • 地獄(この世)と極楽(あの世)の間に出来た境界(結界)


を元ネタにして



「世界を区切る=封印する」
の意味が込められたアイテムなのではないでしょうか。

まとめ

獄門疆は「『世界間を区切る』結界」と言える。

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【2022/02/14追記】
テレビアニメ版第2期の放送決定おめでとうございます。

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