8/1 新刊『日本画の絵具と色彩』発売されました!

日本画で使う粒膠の溶かし方を詳細解説!



こんにちは、日本画家の深町聡美です。

日本画では絵具を膠で混ぜて
色を塗っていきます。


「でも膠って扱いが面倒でしょ?」
「楽に使える日本画絵具はないの?」


という方に使って頂きたいのが
「粒膠」です!



こんな人におススメ!
  • 楽に日本画が描ける方法を知りたい!
  • 三千本膠を溶かすのは時間がかかる…
  • 粒膠は知っているけど溶かし方が分からない…




今回の記事では粒膠の溶かし方
他の主要な膠と違う点、
溶かす時にあると便利な道具について
お話します!


ぜひ最後までお読み頂ければ
嬉しいです!



関連記事はこちら!

●【日本画】膠(にかわ)とは?作り方と使い方&種類を徹底解説【画材】

日本画で使う膠(にかわ)とは?



まず「膠」とは「にかわ」と読みます!


日本画を知らないと、
あまり耳なじみのない言葉ですよね。


ですが膠は日本画にとって、
無くてはならないモノなのです!




なぜなら膠は日本画の展色剤だから!



展色剤ってなに?



展色剤とは絵具の中に含まれる
色の素「顔料」を紙に貼りつけるための
糊成分のことです!



日本画における顔料とは
岩絵具や水干絵具の粉ですね。


絵具は、これらの顔料を紙に貼りつけて
動かないように固定しているから
色が付くという訳です!


展色剤と絵の具の種類

絵具の種類は展色剤の種類で
決まるとされています!

顔料+アラビアガム=水彩絵具
   膠=日本画絵具
   乾性油=油絵具

というような感じです。


展色剤の仕組みが違うことで
耐水性や速乾性等の特徴が
絵具に現れるんです。


絵具の中身はシンプルなのですが、
少し変えるだけで特徴が
全く変わるのが面白いですよね!

DARENIHO

粒膠も、溶かしたら糊のようにベタベタの液体になります。

膠みたいなベタベタ糊で顔料(色の粉)を紙に固定させてるんだね!



膠の材料って何?

「膠は腐る!」って言うけど、何でできているの?

膠の原料は、実は動物の皮や骨、腸や腱

それを煮だして抽出したコラーゲンを
固めた物が膠なのです。

DARENIHO

現在の日本画では牛膠が主流ですが、油絵では兎膠を使います。

にべ膠(魚)、魚膠(チョウザメ)などの膠もあります。
ちなみに、現在の鹿膠は牛から作られています。



なのでゼラチンで作ったゼリーのように
冷たくなると弾力を持って硬くなり、

熱すると液状になるんです。



そんな特性で顔料を紙に貼りつけている
わけですが、
「ゼリーと同じような物」という事は、

やはり放っておくと腐ってしまいます。



そのため、現在販売されている
多くの膠には防腐剤が使われています。




以上が膠の特徴でした。


では粒膠とそれ以外の膠は
どのような違いがあるのでしょうか?


ここからは最も一般的な三千本膠と
液状膠と比較して違いを見ていきましょう。


粒膠の特徴ー三千本膠、液膠との違いは?

粒膠にしかない特徴はあるの?


粒膠の特徴は何と言っても
その使いやすさにあります!



三千本膠という棒状の膠は
一度砕いて、湯煎をしないと使えません。



↓三千本膠はこんな形です↓




しかし粒膠なら最初から砕いてあるので
その手間が省けますよね。

あとは量って使うだけです!



その一方で、
「日本画 画材と技法の秘伝集」では
濃度が低いと接着力が激減する」
との記述がありました。



実際筆者の周りでも同じ意見は多く、
筆者自身も「三千本膠より薄い」
と感じています。


ただ粒膠の中でも播州粒膠は接着力が
比較的高く使いやすいです。




粒膠の前身ともいえる「パール膠」
「三千本膠と比べると不純物が少なく
接着力が強く、また固まりやすい」

と言われていますので、

こちらの復活を待ちたい所ですね。


DARENIHO

粒膠は気温が低くても固まりにくいともされています。

でも液膠のほうが扱いは簡単じゃないかな?


液膠は最初から液体、
つまり溶かしてある状態なので
扱いは簡単です。


ですが比較的接着力が低く
粗い岩絵具を使うには心もとないです。

DARENIHO

液膠は、水干絵具に使うには十分です。
水を加えなければ、11番以上の粒子が細かい岩絵具にも使えます。




粒膠は湯煎する手間はかかりますが、
接着力は十分あります!


手間と接着力のバランスがとれた
初心者に最もおすすめな膠と言えるでしょう!




粒膠を溶かす最強のアイテムを
後ほどご紹介しますので
ぜひそちらを使って楽々日本画を描いて下さい!







粒膠の特徴が分かったところで
次は粒膠の溶かし方を解説します!

粒膠の使い方①粒膠の分量を量ろう

Unsplashvictor muñozが撮影した写真

粒膠を溶かすにはまず何をするの?


まずは必要な物を揃えましょう!

溶かし方はほぼ三千本膠と同じです。

ただしキッチンスケールが必要ですので
準備してください。

※デジタルでもアナログでも構いません。

粒膠を溶かすのに必要な物
  • 計量カップ
  • ティッシュ
  • キッチンスケール
  • お湯
  • 耐熱瓶(膠鍋)



準備ができたら、
最初に適切な量になるよう
粒膠の重さをはかります。


キッチンスケールの上にティッシュを置き、
13~15g程度になるように
粒膠を乗せていきましょう。



この13~15gは
三千本膠一本分の重さ
です。



粒膠の使い方②粒膠に最適な水の量は?


次に粒膠を耐熱瓶に入れて
水を注ぎます。



水の量は、作家や製作工程によって
異なります。




と言っても難しいので、
一例を掲載しておきますね。

この中から自分に合った物を選ぶように
するといいですよ。

水は2~3本に対し200cc
(図解日本画用語辞典)

・3本に対し水120~900㏄
(日本画 画材と技法の秘伝集)

・一般には1本に対し70~100㏄
(日本画 画材と技法の秘伝集)

1本半に対し200cc

1本に対し水50~100cc

https://nihongago.com/nikawasui

恐らく、東京藝大系の作家さんは
粒膠13~15gに対して水100cc
制作されているようですね。



また、
粒子が荒い岩絵具を使う時は濃い膠で、
細かい岩絵具を使う時は薄い膠
使うのが良いですよ。



最初に塗る荒い岩絵具はしっかり固着
させなくてはならないので
濃い方が良いのです。


逆に、表層部分で塗る細かい岩絵具は
薄い膠で塗る事で、発色が良くなります。


DARENIHO

膠が濃いと、膠の色で黄色っぽくなってしまうのです!



もし岩絵具がパラパラ落ちてしまうようであれば
膠の濃度が薄いので、
濃くなるように作り直すのがベストです!



粒膠の使い方③粒膠を溶かしてみよう!


瓶に水と粒膠を入れたら湯煎をします。

鍋に水を張って、
水と粒膠を入れた瓶を入れます。


そして、沸騰しないように
加熱していきます。


理想は水温60~70度ですので
可能であれば水温系で計って下さい。



電熱器なら火を使わないので
少し安全です↓

DARENIHO

膠は80度以上で固まりにくくなり、沸騰すると接着力が低下します!

粒膠の使い方④濾過したら完成!


ところが最後にやるべきことがあります。


それは濾過すること!


粒膠は不純物が少ないですが、
それでも湯煎の間に混入したホコリは
取り除くべきです。



これだけで発色が良くなります。



やり方は簡単で、
別の器の上にガーゼやペーパータオルを置き
その上から膠を流すだけです。

結構ホコリが入っていることが分かると思います。



さあ!これであなたの膠水が完成です!

粒膠を簡単に溶かすアイテムはこれだ!

でも鍋やお湯の用意って大変だよ。
もっと簡単に溶かせないの?


そこでお勧めしたいのが、

  • チョコレーター
  • 保温トレイ(カップウォーマー)



特にチョコレーターは非常に便利!


その名の通り、チョコを溶かす=湯煎する
ための道具で、本来なら料理に使われます。

チーズフォンデュにも使えるようです。



湯煎専用道具なので長時間利用でも沸騰しません!


まさに膠にぴったりの道具です!



小サイズでも一度に200ml程度の膠を
溶かせますから普段の制作に丁度良いですよね!

この量なら腐らせることもありません。



冬場は「保温」にしておけば
いつでも溶けた状態の絵具が使えるのも
助かるポイントです。




↓大サイズなら
研究室でシェアも可能に!?





次点の保温トレイは、
東芝製のものが人気なようで
SNSの作業風景でもお見掛けます。

このように使うと絵具が溶かせる



しかし現在この型は製造しておらず
Amazonでも非常に高値で売られています。



そのため、購入するなら中古がおススメ!
筆者はメルカリで2000円未満で購入しました。



↓一万円近くします



また、表面が高温になるので
使用時は気を付けるようにしてください。


電源のオンオフがコードでしかできないのも
残念なポイントです。

オン⇒コンセントに刺す
オフ⇒コンセントから抜く


なので、少々面倒に感じてしまいました。

関連記事はこちら!

●【日本画】冬に固まる膠の保温に必携!便利アイテムを一挙紹介


DARENIHO

現段階ではチョコレーターが一番です!

粒膠は電子レンジで溶かせるけれど…



粒膠は電子レンジでも溶かせます!


やり方は、
耐熱瓶に水と膠を入れてふやかし、
600Wで10秒チンするだけ!



かき混ぜても溶けない場合は
10秒ずつ加熱してください。


ただ
「接着力が落ちるので良くない」
という意見もあります。



筆者は粒子11~白の岩絵具に使いましたが
剥離は起きませんでした。


…もっと簡単にできないかな?


そんな効率重視なあなたには
こちらの「アートグルー」がおススメ!

●【日本画】アートグルーの使い方と使用感をレビュー!



まとめー粒膠の使い方と溶かし方

狩野永徳唐獅子図
狩野永徳 – [1], パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4210868による


最後までお読みくださり
ありがとうございます。


日本画の粒膠は三千本膠と同じ方法で
溶かすことが出来ます。



しかし初めに重さを量るのが
違う点でしたね。


ですが、三千本膠一本と大体同じ重さに
なるように量れば困ることはありません!


いつもの膠と同じようにお使いくださいね!



また、粒膠や液膠の接着力が物足りない方は
「アートグルー」「アクアグルー」
も良いですよ!


今回の記事があなたの日本画ライフの
一助になりましたら幸いです。





紹介した道具をまとめました!

粒膠はこれがおすすめ!


薄くならずにしっかり着く!
三千本に劣らない接着力です。


小さくて便利!


はかりはデジタルの方が
場所を取らずにしまえて便利!
食用とは別にするのが良いですね。


全自動膠温め器


沸騰に気を付けなくても、
適温で温め続けてくれます!
火を使わない&超高温にならないから
安心して使えます。



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