こんにちは、日本画家の深町聡美です。
日本画では絵具を膠で混ぜて
色を塗っていきます。
「でも膠って扱いが面倒でしょ?」
「楽に使える日本画絵具はないの?」
という方に使って頂きたいのが
「粒膠」です!
- 楽に日本画が描ける方法を知りたい!
- 三千本膠を溶かすのは時間がかかる…
- 粒膠は知っているけど溶かし方が分からない…
今回の記事では粒膠の溶かし方や
他の主要な膠と違う点、
溶かす時にあると便利な道具について
お話します!
ぜひ最後までお読み頂ければ
嬉しいです!
関連記事はこちら!
●【日本画】膠(にかわ)とは?作り方と使い方&種類を徹底解説【画材】
Contents
日本画で使う膠(にかわ)とは?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/02/honey-924174_1920-1024x683.jpg)
まず「膠」とは「にかわ」と読みます!
日本画を知らないと、
あまり耳なじみのない言葉ですよね。
ですが膠は日本画にとって、
無くてはならないモノなのです!
なぜなら膠は日本画の展色剤だから!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
展色剤ってなに?
展色剤とは絵具の中に含まれる
色の素「顔料」を紙に貼りつけるための
糊成分のことです!
日本画における顔料とは
岩絵具や水干絵具の粉ですね。
絵具は、これらの顔料を紙に貼りつけて
動かないように固定しているから
色が付くという訳です!
展色剤と絵の具の種類
絵具の種類は展色剤の種類で
決まるとされています!
顔料+アラビアガム=水彩絵具
膠=日本画絵具
乾性油=油絵具
というような感じです。
展色剤の仕組みが違うことで
耐水性や速乾性等の特徴が
絵具に現れるんです。
絵具の中身はシンプルなのですが、
少し変えるだけで特徴が
全く変わるのが面白いですよね!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
粒膠も、溶かしたら糊のようにベタベタの液体になります。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog2_1_idea.png)
膠みたいなベタベタ糊で顔料(色の粉)を紙に固定させてるんだね!
膠の材料って何?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/12/animal-gfc046e373_1920-1024x683.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
「膠は腐る!」って言うけど、何でできているの?
膠の原料は、実は動物の皮や骨、腸や腱。
それを煮だして抽出したコラーゲンを
固めた物が膠なのです。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
現在の日本画では牛膠が主流ですが、油絵では兎膠を使います。
にべ膠(魚)、魚膠(チョウザメ)などの膠もあります。
ちなみに、現在の鹿膠は牛から作られています。
なのでゼラチンで作ったゼリーのように
冷たくなると弾力を持って硬くなり、
熱すると液状になるんです。
そんな特性で顔料を紙に貼りつけている
わけですが、
「ゼリーと同じような物」という事は、
やはり放っておくと腐ってしまいます。
そのため、現在販売されている
多くの膠には防腐剤が使われています。
以上が膠の特徴でした。
では粒膠とそれ以外の膠は
どのような違いがあるのでしょうか?
ここからは最も一般的な三千本膠と
液状膠と比較して違いを見ていきましょう。
粒膠の特徴ー三千本膠、液膠との違いは?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/02/IMG_5713.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
粒膠にしかない特徴はあるの?
粒膠の特徴は何と言っても
その使いやすさにあります!
三千本膠という棒状の膠は
一度砕いて、湯煎をしないと使えません。
↓三千本膠はこんな形です↓
しかし粒膠なら最初から砕いてあるので
その手間が省けますよね。
あとは量って使うだけです!
その一方で、
「日本画 画材と技法の秘伝集」では
「濃度が低いと接着力が激減する」
との記述がありました。
実際筆者の周りでも同じ意見は多く、
筆者自身も「三千本膠より薄い」
と感じています。
ただ粒膠の中でも播州粒膠は接着力が
比較的高く使いやすいです。
粒膠の前身ともいえる「パール膠」は
「三千本膠と比べると不純物が少なく
接着力が強く、また固まりやすい」
と言われていますので、
こちらの復活を待ちたい所ですね。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
粒膠は気温が低くても固まりにくいともされています。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
でも液膠のほうが扱いは簡単じゃないかな?
液膠は最初から液体、
つまり溶かしてある状態なので
扱いは簡単です。
ですが比較的接着力が低く
粗い岩絵具を使うには心もとないです。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
液膠は、水干絵具に使うには十分です。
水を加えなければ、11番以上の粒子が細かい岩絵具にも使えます。
粒膠は湯煎する手間はかかりますが、
接着力は十分あります!
手間と接着力のバランスがとれた
初心者に最もおすすめな膠と言えるでしょう!
粒膠を溶かす最強のアイテムを
後ほどご紹介しますので
ぜひそちらを使って楽々日本画を描いて下さい!
粒膠の特徴が分かったところで
次は粒膠の溶かし方を解説します!
粒膠の使い方①粒膠の分量を量ろう
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/11/victor-munoz-nDJeJye6y_A-unsplash-1024x684.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
粒膠を溶かすにはまず何をするの?
まずは必要な物を揃えましょう!
溶かし方はほぼ三千本膠と同じです。
ただしキッチンスケールが必要ですので
準備してください。
※デジタルでもアナログでも構いません。
- 計量カップ
- ティッシュ
- キッチンスケール
- お湯
- 耐熱瓶(膠鍋)
- 鍋
- 匙
準備ができたら、
最初に適切な量になるよう
粒膠の重さをはかります。
キッチンスケールの上にティッシュを置き、
13~15g程度になるように
粒膠を乗せていきましょう。
この13~15gは
三千本膠一本分の重さです。
粒膠の使い方②粒膠に最適な水の量は?
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/02/nikawa2-1024x550.jpg)
次に粒膠を耐熱瓶に入れて
水を注ぎます。
水の量は、作家や製作工程によって
異なります。
と言っても難しいので、
一例を掲載しておきますね。
この中から自分に合った物を選ぶように
するといいですよ。
・水は2~3本に対し200cc
(図解日本画用語辞典)・3本に対し水120~900㏄
(日本画 画材と技法の秘伝集)・一般には1本に対し70~100㏄
https://nihongago.com/nikawasui
(日本画 画材と技法の秘伝集)
恐らく、東京藝大系の作家さんは
粒膠13~15gに対して水100ccで
制作されているようですね。
また、
粒子が荒い岩絵具を使う時は濃い膠で、
細かい岩絵具を使う時は薄い膠を
使うのが良いですよ。
最初に塗る荒い岩絵具はしっかり固着
させなくてはならないので
濃い方が良いのです。
逆に、表層部分で塗る細かい岩絵具は
薄い膠で塗る事で、発色が良くなります。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
膠が濃いと、膠の色で黄色っぽくなってしまうのです!
もし岩絵具がパラパラ落ちてしまうようであれば
膠の濃度が薄いので、
濃くなるように作り直すのがベストです!
粒膠の使い方③粒膠を溶かしてみよう!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/02/nikawa-1024x675.jpg)
瓶に水と粒膠を入れたら湯煎をします。
鍋に水を張って、
水と粒膠を入れた瓶を入れます。
そして、沸騰しないように
加熱していきます。
理想は水温60~70度ですので
可能であれば水温系で計って下さい。
電熱器なら火を使わないので
少し安全です↓
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
膠は80度以上で固まりにくくなり、沸騰すると接着力が低下します!
粒膠の使い方④濾過したら完成!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/02/nikawa5-1024x637.jpg)
ところが最後にやるべきことがあります。
それは濾過すること!
粒膠は不純物が少ないですが、
それでも湯煎の間に混入したホコリは
取り除くべきです。
これだけで発色が良くなります。
やり方は簡単で、
別の器の上にガーゼやペーパータオルを置き
その上から膠を流すだけです。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
結構ホコリが入っていることが分かると思います。
さあ!これであなたの膠水が完成です!
粒膠を簡単に溶かすアイテムはこれだ!
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/IMG_6863-edited-1024x576.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/05/dog3_1_question.png)
でも鍋やお湯の用意って大変だよ。
もっと簡単に溶かせないの?
そこでお勧めしたいのが、
- チョコレーター
- 保温トレイ(カップウォーマー)
特にチョコレーターは非常に便利!
その名の通り、チョコを溶かす=湯煎する
ための道具で、本来なら料理に使われます。
チーズフォンデュにも使えるようです。
湯煎専用道具なので長時間利用でも沸騰しません!
まさに膠にぴったりの道具です!
小サイズでも一度に200ml程度の膠を
溶かせますから普段の制作に丁度良いですよね!
この量なら腐らせることもありません。
冬場は「保温」にしておけば
いつでも溶けた状態の絵具が使えるのも
助かるポイントです。
↓大サイズなら
研究室でシェアも可能に!?
次点の保温トレイは、
東芝製のものが人気なようで
SNSの作業風景でもお見掛けます。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2021/02/nikawa3-1024x615.jpg)
しかし現在この型は製造しておらず
Amazonでも非常に高値で売られています。
そのため、購入するなら中古がおススメ!
筆者はメルカリで2000円未満で購入しました。
↓一万円近くします
また、表面が高温になるので
使用時は気を付けるようにしてください。
電源のオンオフがコードでしかできないのも
残念なポイントです。
オン⇒コンセントに刺す
オフ⇒コンセントから抜く
なので、少々面倒に感じてしまいました。
関連記事はこちら!
●【日本画】冬に固まる膠の保温に必携!便利アイテムを一挙紹介
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/thedog-2.jpg)
現段階ではチョコレーターが一番です!
粒膠は電子レンジで溶かせるけれど…
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/03/スクリーンショット-742-1024x473.png)
粒膠は電子レンジでも溶かせます!
やり方は、
耐熱瓶に水と膠を入れてふやかし、
600Wで10秒チンするだけ!
かき混ぜても溶けない場合は
10秒ずつ加熱してください。
ただ
「接着力が落ちるので良くない」
という意見もあります。
筆者は粒子11~白の岩絵具に使いましたが
剥離は起きませんでした。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/animalface_inu.png)
…もっと簡単にできないかな?
そんな効率重視なあなたには
こちらの「アートグルー」がおススメ!
まとめー粒膠の使い方と溶かし方
![狩野永徳唐獅子図](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2020/12/Kano_Eitoku_002-1024x515.jpg)
最後までお読みくださり
ありがとうございます。
日本画の粒膠は三千本膠と同じ方法で
溶かすことが出来ます。
しかし初めに重さを量るのが
違う点でしたね。
ですが、三千本膠一本と大体同じ重さに
なるように量れば困ることはありません!
いつもの膠と同じようにお使いくださいね!
また、粒膠や液膠の接着力が物足りない方は
「アートグルー」「アクアグルー」
も良いですよ!
今回の記事があなたの日本画ライフの
一助になりましたら幸いです。
紹介した道具をまとめました!
粒膠はこれがおすすめ!
薄くならずにしっかり着く!
三千本に劣らない接着力です。
小さくて便利!
はかりはデジタルの方が
場所を取らずにしまえて便利!
食用とは別にするのが良いですね。
全自動膠温め器
沸騰に気を付けなくても、
適温で温め続けてくれます!
火を使わない&超高温にならないから
安心して使えます。
日本画で一番必須な書
日本画の基本技法を網羅した
究極攻略本!
日本画するなら必読の書です。
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/02/analogillust.jpg)
![](https://nihongago.com/wp-content/uploads/2022/01/日本画のきじはこちら!.jpg)
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