こんにちは、日本画家の深町聡美です。
私たちが小中学校で
使ってきた水彩絵具。
一体どんな材料でできているか
ご存じですか?
この記事では絵具の材料、成分が
何なのかをまとめました!
- 絵具の材料が気になった方
- 色が付く仕組みを知りたい方
- 化学が好きな方
- 自分で絵具を作ってみたい方
絵具の成分を理解すれば、
「絵具ってなんで食べちゃダメなの?」
「食べたらどんな害があるの?」
「絵具って自分で作れるって本当!?」
という疑問にも答えられるようになります!
絵描きさんなら
自分に向いた絵具の種類や
絵具の色の傾向
が分かるようになるかもしれません!
この記事をあなたの創作活動に
役立てて頂ければ幸いです。
成分ごとの詳細な内容は
こちらの関連記事からご覧下さい!
Contents
水彩絵具の成分①顔料










水彩絵具ってなんで色が付くの?
水彩絵具でなぜ色が付くのか?
その理由の一つが「顔料」です。







顔料とは色が付いた粉の事を言います。
顔料の詳細はここを読んでみよう!
皆さんはフェルメールという画家が
「ウルトラマリン」という青色を好んだことを
知っているでしょうか?


鮮やかな青色はラピスラズリという
青い宝石を砕いて作った物。
青い宝石を砕いたら、
青い色の粉が出来たんです。



ラピスラズリを砕いたら青い粉が出来た。
だからそれを絵具の材料にしたんだね。
このように、顔料とは色が付いた粉のことを
言います。
顔料の中でも石や砂からできた物を「天然無機顔料」と言います。







ほかにも科学的に作った「有機顔料」や「合成無機顔料」があります。
合成無機顔料は金属を化学反応させた
顔料です。
一方、有機顔料は石油や石炭から作った
顔料になります。
似たような色でもそれぞれ性質が異なり
- 無機顔料=落ち着いた色
- 有機顔料=透明度が高く鮮やか
という傾向があります。
なので画家さんによって
好む絵具が違うんですって!
同じ青でも
- 天然無機:ラピスラズリ
- 合成無機:コバルトブルー
- 有機:フタロシアニンブルー
など、好みに合わせて
有機系、無機系の絵具を使い分けると
お絵描きがもっと面白くなるかも!?







さらに機能性顔料、体質顔料という種類もあります。



機能性顔料はキラキラや耐錆など化学効果を付与するんだよ。
体質顔料は無色でかさましに使われるんだ。
顔料とは色が付いた粉のこと!
雲母などのキラキラも顔料の一種!
水彩絵具の成分②展色剤(アラビアガム)










展色剤って何?何のために使うの?
展色剤とは絵具の中の糊成分!
色の粉である顔料を紙に乗せてみたとします。
このままでは鼻息だけで
飛んでいきそうですよね。
紙を傾けたらすぐに落ちてしまいます。
そこで
「顔料を紙にくっつけるための糊成分」
が必要になるという訳ですね!







顔料を紙に付ける糊成分を展色剤と言います。
実は絵具の種類を決めるのも展色剤です。
水彩絵具の糊成分には
「アラビアガム」(又はデキストリン)
が使われていますが、
油絵具には入っていません。
油絵具は糊成分に「乾性油」を
使うのです。
- 水彩絵具:アラビアガム
(児童用はデキストリンという加工デンプン) - 油絵具:乾性油
- 日本画:膠
- アクリル絵具:アクリルエマルション
- テンペラ画:卵



展色剤が変われば絵具の種類も変わるんだね!
ちなみに水彩絵具の展色剤「アラビアガム」は
こんな形をしています。


アラビアガムはアカシアセネガル
という木の樹脂です。
なので琥珀や松脂のように
黄色で透明な固体なのです。
これを50度程度のお湯で溶かして
顔料と混ぜ合わせて作ったのが
水彩絵具です。



絵具を作るのって手間が掛かるんだね!
この固形アラビアガムは画材屋さんで
販売されています。
「興味があるよ!」
というあなたは是非、溶かして
絵具を作ってみて下さい!
- 展色剤とは顔料を貼りつけるための糊成分!
- 展色剤が変われば絵具の種類も変わる!
- 水彩絵具の展色剤はアラビアガムという樹脂!








でも乾いてこんなにカチカチになっちゃったら使いにくくない?
そこで展色剤と顔料にさらに加えるのが
保湿剤です。
水彩絵具の成分③保湿剤(グリセリン)










絵具に保湿剤ってどういうこと?
上述の通りアラビアガムだけでは
カチカチになっちゃいます。
そこで固まりにくくしたり
滑らかで使いやすくするのが保湿剤です。
特に水彩絵具にはグリセリンや蜂蜜が
使われています。


えっ!保湿クリームの成分や蜂蜜まで入っているの!?
グリセリンは水分の蒸発を防ぐだけでなく
水分を浸透させる効果があります。
高い保湿力で化粧品に用いられるほか
甘味料としても使われる安全性が高い
成分なのです。
蜂蜜もグリセリンと同様に
絵具の保湿成分として用いられます。
蜂蜜は空気中の水分を吸収する性質が
ありますが、
それだけでなくカビや腐敗を防ぎます。
そのため、後述する防腐剤としての
役割も持っています。







蜂蜜やグリセリンを入れることで滑らかな絵具になります。
- 絵具がカチカチになるのを防ぐのが保湿剤!
- 水彩絵具の保湿剤にはグリセリンや蜂蜜が使われる!
水彩絵具の成分④界面活性剤










絵具に洗剤?どうして?
ここでの界面活性剤は洗剤ではなく
「分散材」としての役割です。
分散材とは細かい顔料を散らすための物。
絵具に使われるような超微粒子の顔料は
何もしないと凝集してダマになって
しまいます。
それではキレイに絵具が広がらなかったり
ムラができてしまったりするのです。
それを防ぐために分散材として
界面活性等が使われています。
ハンドメイド水彩絵の具界隈では
オックスゴールを使うことが多いようです!







オックスゴールとは牛の胆汁のことです。
紙が絵具を弾くのを防いだり、水彩の滲みの技法に使われます。
水彩画家さんあるあると言えば、
紙が風邪をひく⇒にじみ止めを引く⇒絵具を弾きすぎる
の流れではないでしょうか?
絵具を弾きすぎるときに塗るといいのも
オックスゴールです。
絵具にもオックスゴールを混ぜることで、
- 顔料が分散する
- 紙で弾かれない
という特性を与えられます。
- 顔料の分散と弾き止めのために界面活性剤が使われる!
水彩絵具の成分⑤防腐・防カビ剤










絵具に防腐剤?絵具が腐るってこと?
「映画で画家が絵筆を舐めているのを
見ました。」
「絵具って口に入っても良いですよね?」
と質問を頂いたことがあります。
ですが絵具には防腐剤や防カビ剤が
入っているので食べない方が良いですよ。
絵具の材料にはアラビアガムが
使われています。
なので腐敗やカビの発生が
起きてしまうのです。
一方で蜂蜜は防腐剤になると
言われています。
絵具作家さんの中には
保湿剤、防腐剤の両方のために
蜂蜜を使う人もいらっしゃいます。
- 絵具はカビが生えたり腐る場合がある!
そのため防カビ防腐剤が入っている!
まとめー水彩絵具の成分


最後までお読み頂きありがとうございます!
以上、絵具の材料について解説してきました!
皆さんが何となく使ってきた水彩絵具ですが
様々な材料によって作られていることが
分かりましたね!
- 顔料(色の素になる粉)
- 展色剤(アラビアガム、デキストリン等の糊成分)
- 保湿剤(グリセリン、デキストリン)
- 界面活性剤(オックスゴール等)
- 防腐、防カビ剤
これから画材屋さんに行くときは、
- この絵具はどの展色剤が使われているのかな?
- 無機顔料かな?有機顔料かな?
と考えながら選んでみて下さい!
あなたが好きな絵具の傾向が
分かるかもしれませんよ!
関連記事はこちらです!
透明水彩の成分を使ってみよう!
カチカチ!アラビアガム!
身体だけじゃなく
絵具にも!
絵具が弾かれるときは
紙に塗ろう!
保湿にも防腐剤にも使えます




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