8/1 新刊『日本画の絵具と色彩』発売されました!

アクリルガッシュとアクリル絵の具の違いはコレだけ!【画材】


こんにちは、日本画家の深町聡美です。


むかし、まだ筆者が高校生だったころ、

ある絵画教室に見学に行くことがありました。

 

「ここではアクリル絵具を使っています」

そう言われて見せられたのは

「アクリルガッシュ」

と書かれた絵具。

 

それ以来筆者は、アクリル絵具とはアクリルガッシュを指すものと10年近く思い込んできました。

 

 

 

ですが、ここに

「アクリルガッシュ 違い」などのキーワードで辿り着いた方はご存知でしょう。

 

 

昔の私にはかわいそうな話ですが

 

アクリルガッシュと普通のアクリル絵具は、

まったく異なる絵具だったのです!

 

(アクリル絵具の商品名がアクリルガッシュ
と思っていましたが、
そうですらなかったのです^^;)

 

 

 

この記事では、

  • 成分の違い
  • 向いている絵の違い
  • 使い心地の違い

 

を解説していきます!

皆さんの新しい表現に役立てば幸いです。

アクリルガッシュとアクリル絵具の違いは?

もしかしたら筆者と同じように、

絵の先生に「アクリルガッシュ=アクリル絵具」

と説明された方もいらっしゃるかもしれませんね。


これは全く間違いというわけではないのですが、

先にアクリル絵具とアクリルガッシュの違いを
端的にお話しします。

 

 

アクリル絵の具とアクリルガッシュの違いは、

 

色の素と糊成分の比率!

 

これだけなのです!

※正確には
ガッシュ=着色顔料:体質顔料+展色材
アクリル=着色顔料:展色材

 

 

顔料多めがアクリルガッシュ

顔料少なめが普通のアクリル絵具

 

と覚えておきましょう。

色の素と糊成分とは?


絵具の主な成分は、
色の素糊成分の二つです。

色の素というのは、例えば

青い色=ラピスラズリ
黒い色=黒トルマリン
黄色=砂


のように、「絵具の色そのもの」を作っている成分です。

この「色の素」を専門的な言葉で「顔料」と呼びます。



しかし、砂や、トルマリンを砕いた黒い粒。
これを紙の上に乗せただけでは、

紙を立てただけで、色の素となっている砂粒は
流れ落ちてしまいますよね。


色の素である砂つぶを、紙に貼り付ける糊。
これを専門的な言葉で「展色剤」と呼びます。



色の素である顔料と、糊成分(+体質顔料)の
比率の違いがガッシュと普通のアクリル絵具を
分けているのです。

まとめ

絵具の中に、色の素が多く含まれている方が
アクリルガッシュ。

少ない方が、
普通のアクリル絵具。

意外と分かりやすい違いではないでしょうか?




では色の素、つまり顔料の多さによって

使い心地や完成作品はどう変わるのか?



次は、

・アクリルガッシュを使った絵
・普通のアクリル絵具を使った絵
・二種類を併用した絵

を見比べてみましょう。

アクリルガッシュとアクリル絵具の作品の違い

アクリルガッシュとアクリル絵具。

それぞれの画材で、どのような作品が出来上がるのでしょうか?



Twitterとinstagramに投稿された作品を

引用してみました。


◯アクリルガッシュで描いた絵

◯アクリル絵具で描いた絵

今回は「リキテックス」
(普通のアクリル絵具の有名メーカー)
で検索した投稿を引用しています。

○アクリルガッシュとアクリル絵具を併用

なんとなく絵具による雰囲気の違いを
感じられたのではないでしょうか?



さて、違いのイメージが掴めたところで
使い心地の違いを見ていきます!

アクリル絵具とアクリルガッシュの使い心地の違いは?

アクリル絵具とアクリルガッシュの違いは
「 下の色を塗りつぶせるかどうか」

アクリルガッシュと普通のアクリル絵具の使い心地で大きく異なるのが、

隠蔽力

です。



アクリルガッシュは顔料が多いので

下にある色を塗りつぶすことができます。

つまり、隠蔽力が高いと言う意味ですね。




アクリルガッシュは隠蔽力が高いので、
下の色を生かして描くというより、

混色で色を作ってそのまま塗る方法が
向いています。





ただ、水を多めに含ませて塗れば、
アクリル絵具や透明水彩のように

下地を透かせて描けます。

(その塗り方をするならアクリル絵具を
使うと良いと思います。)


伝統的な油絵の技法では、グリザイユ技法が用いられている。

一方で、普通のアクリル絵具は
透明水彩のような透明感を出すことができます。



下に描いたものを、塗りつぶすことなく
鮮やかな色を乗せることができるんですね。




なので、白黒でしっかり描画した上から
不透明なアクリル絵具で着色……

というように、

油絵の古典技法「グリザイユ」を再現することも
できてしまいます。




↓わかりやすいグリザイユの解説↓

グリザイユ画法のやり方/画材の森

まとめ

・アクリルガッシュは下の色を隠すことが出来る!
普通のアクリル絵具は下描きをいかした塗りができる!





アクリル絵具とアクリルガッシュの違いは
「色むらの有無」

アクリルガッシュのような隠蔽力が高い絵具は、
汚れやミスを最初からなかったかのように、
カバーして隠すことができます。



つまり、普通のアクリル絵具色では透明感が
高いからこそ色むらや滲みができましたが



アクリルガッシュは色むらを無くし、
マットで均一な絵を描くことができるのです。



マットで均一な見た目になるので、ポスターなど
反射で見にくくなるのを防ぐときに
使うといいですね。



ポスターカラーの代わりとして使うこともあります。


デザインの作品展でよく見る、
作品保護用のビニールカバーをつけても
元々が均一なので、アクリル絵具と比較すると
見やすくなるそうです。






マットで均一、そして速乾性ということで、
美術大学の試験でも使われています。





一方で、普通のアクリル絵具は、
塗りムラや滲みを生かした水彩のような
作品を作ることができ、
ツヤツヤと光沢が出ることも特徴です。



そのため、ツヤや透明感を生かすために
完成後には艶出しニスを塗る人も多いようです。




リキテックス グロスバーニッシュ 120ml ニス ワニス仕上げ用 保護ニス アクリル絵具用 メディウムLiquitex Acrylic Colors 絵の具 絵具 Gloss Varnish バーニッシュposted with カエレバ楽天市場



U-35 マットバーニッシュ250ml 982 ターナー ACRYLICS アクリル絵具posted with カエレバ楽天市場





以上のように、両者は
ツヤなしとツヤあり
異なった質感になります。

ポスターはマットで見やすいアクリルガッシュ、
絵画は艶やかで透明感あるアクリル絵具
と使い分けるのがオススメです。

まとめ

・アクリルガッシュはマットな仕上がり
・アクリル絵具は光沢のある仕上がり

アクリル絵具とアクリルガッシュの違いは
「作品が丈夫かどうか」

絵具が剥がれてしまった昔の絵

作品を販売する人にとっては、
絵が丈夫かどうかは気になるところですよね。

アクリルガッシュはその点では
難点が多いといえます。




まず、一番問題なのが、
「ひび割れしやすい」
ことです。


厚く盛る、何度も重ねる

などをすると、あっという間に
絵具が剥がれ落ちてしまいます!

制作後3~4年で剥離してしまった。




せっかくいい作品を作ったのに
ボロボロ剥がれてしまっては悲しいですよね。


作家さんに聞いた話では、
「箱に入れて保存していたのに、
数年前の作品の絵具が
ボロボロ剥がれていた……」


ということも!

また、耐光性が低く直射日光が当たる場所では
色が褪せてしまうこともあるそうです。




よって、アクリルガッシュは耐水性があり
水彩よりも丈夫と言っても
屋外での使用は避けるべき画材と言えます。

逆に、普通のアクリル絵具はどうでしょうか?



最初に書きましたが、
アクリルガッシュとアクリル絵具の違いは
「展色材と顔料の比率」

普通のアクリル絵具は展色材が多く
含まれているので、
薄くのばしやすくなっています。


アクリルガッシュと比べて
ゴムのように柔らかな絵具というわけです。

ということは
アクリルガッシュと比較して割れにくい
絵具と言えます。




しっかりと顔料が貼り付くので
温度や湿度の変化が激しい屋外でも
展示する事ができそうです。

まとめ

・アクリルガッシュはひび割れ、退色に注意!
・丈夫さは普通のアクリル絵具が上!

アクリル絵具とアクリルガッシュは
「どちらも乾燥が速い!」

アクリルガッシュと普通のアクリル絵具は、
ともに非常に早く乾燥します

ほとんど「乾燥の待ち時間」はありませんので
初めて使う方は驚いてしまうかも知れません。


スムーズに作業ができますが、
キャンバス上で混色したい人には難しく
思われるかも知れませんね。


そんな時には乾燥を遅らせるこちらが
おすすめです!!

ターナー アクリルガッシュ リターダー 60ml 乾きを遅くしますposted with カエレバ楽天市場
ターナー アクリルガッシュ 7リターダー 60mL AG060907 透明




このリターダーを混ぜれば、アクリル絵具の
乾燥を遅らせることができるのです!


「乾きを遅くします」
という言葉が頼もしいですね!



ほかにも絵具を盛り上げるモデリングペースト

モデリングペースト 50ml 容器入 リキテックス・メディウムposted with カエレバ楽天市場






質感を変えることが出来るメディウムなど

U-35 ヘビージェルメディウム500ml 944 ターナー ACRYLICS アクリル絵具posted with カエレバ楽天市場



マットメディウム 35ml スクイズボトル ホルベイン・メディウムposted with カエレバ楽天市場





さまざまなアタッチメントがあります。
全部買って、表現を探索してみたくなりますね!

まとめ

アクリルガッシュもアクリル絵具も、乾燥が速い!
アクリルガッシュもアクリル絵具も、表現が多彩!

アクリルガッシュとアクリル絵具の違いまとめ

アクリルガッシュと普通のアクリル絵具の違いは、
展色剤と顔料の比率の違いでしたね。

アクリルガッシュは顔料が多めなので、
ポスターカラーのようにマットで不透明になります。



普通のアクリル絵具は展色剤が多めなので、
伸びが良く、透明水彩のように下の色が
透けて見える作品になります。




というわけで、この記事を三行にまとめると
こうなります!

まとめ

・アクリルガッシュとアクリル絵具の違いは展色剤の量

・アクリルガッシュはポスターカラー風に描きやすい

・普通のアクリル絵具は透明水彩風に描きやすい

アクリルガッシュとアクリル絵具、
どちらも違う魅力がありますよね!

皆さんはどちらの絵具が好きですか?

よければ普段使っていない方の絵具にも
挑戦してみてくださいね!

おすすめアクリルガッシュとアクリル絵具

オススメのアクリルガッシュ①ターナーアクリルガッシュ

【お買い物マラソン限定ポイント2倍】 ターナー アクリルガッシュ11ml 13色セット AG13Cposted with カエレバ楽天市場

個人的に一番愛用しているのがこちらの
ターナーアクリルガッシュです。


魅力的なラインナップ

蛍光色はもちろん、パールやメタリックなど
豊富な色彩が魅力です。

日本色は細かい粒子が入っていて、
不思議な質感が気に入っています。

しっかりした発色

発色が良くしっかりと定着するので
特に白がハイライトを
描く上で重宝しました。


100均、リキテックス、アクリリックプラス、
アクリルガッシュルミネなど
さまざまなアクリル絵具を試しましたが、

アクリルガッシュの白(ホワイト)が
ダントツで発色が良いです。


オススメのアクリルガッシュ②ガッシュアクリリックプラス

リキテックス ガッシュ アクリリック プラス 紙箱 12色12本 10mL G-1posted with カエレバ楽天市場




こちらはアクリル絵具の元祖、
リキテックス
が販売しているガッシュです。


ターナーよりも滑らかで伸びが良く、
ターナーアクリルガッシュと
リキテックスレギュラータイプの
中間のような使い心地でした。


アクリルガッシュの良さを残しつつ、
弱点である剥がれやすさを防ぐことができるのが売りです。




オススメのアクリル絵具①リキテックスレギュラー

アクリル絵の具 セット リキテックス カラーセット レギュラータイプ スクールカラー 伝統色12色 10mlチューブ R1 【リキテックススクールセット】【S伝統色12色】【アクリル絵の具セット】【標準色posted with カエレバ楽天市場




およそ60年の歴史を持つアクリル絵具の横綱です。

アクリル絵具といえばリキテックス!

という方も多いのでは?




薄い色を徐々に重ねて着色できるので
透明水彩風の作品から油絵風の作品まで
様々な画風にチャレンジできてしまいます!






下地や下塗りを活かしつつ
丁寧に描きこんでいくタイプの方には
ぜひお勧めしたい絵具です。




ほかにも油絵を始める前の練習、
また油絵作品の習作などにも最適です。


しかし中には油絵具の匂いが苦手な方もいますよね。

アクリル絵具は無臭なので匂いに悩まず
油絵風の絵を描くことができますよ!





「とにかく真っ白にしたいんだ!」
「バケツツールのように塗りつぶしたい」

という場合にはアクリルガッシュの方がおすすめです。

オススメアクリル絵具②U―35

ターナー U-35アクリリックス(紙箱)20ml24色 送料無料[メール便不可](絵具 アクリル絵具セット)posted with カエレバ楽天市場

こちらはターナーが2021年に発売した
アクリル絵具の最終進化系を目指したという
最新の絵具
です。

本制作に使っていないので詳しいレビューは
まだ書けませんが、第一印象は

伸びが良い!
発色も良い!
という感じです。


こちらの商品はターナーが
独自に連携SNSを運営しているのが特徴で、

他のu35ユーザーの作品や展示の様子を
見ることができます。


TURNER U-35 Community



勉強しやすい環境もセットということで、
どんどん進化していきたい画家さんには
オススメの絵具になっています。

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