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胡粉の剥落を防止するには?「丹青指南」を現代語訳②緒言

この記事で分かる事

・なぜ昔の絵が鮮やかに残っているのだろうか?

・絵を描く上で大切な事はなんだろうか?

・お客様が喜ぶ、長持ちする絵を描くには

どうすればいいのだろうか?

日本画を描いていると、時々遭遇してしまうのが

「絵具や胡粉の剥落」です。

胡粉の場合、その原因には

 胡粉全体に膠が染み込んでいなかった点 

また、 胡粉を何層も塗り重ね過ぎた 

という点がよく挙げられます。

岩絵具の場合だと、

 ドライヤーを利用していた ために

表面の絵具だけが乾いて、

内側の絵具が湿っていることによる剥落。

 和紙に裏打ちをしなかった ために

和紙が水気で波打ってしまうことでの

絵具の剥落などがあります。

(ちなみに、これら全部やったことがあります笑)

しかしこれらの失敗にはもっと根本的な理由があったのです!

その理由を、

狩野派の日本画技法書「丹青指南」を現代語訳①ー序・緒言

から引き続き、丹青指南を紐解きながら見ていきましょう。

なぜ絵具や胡粉が剥落してしまうのか?その原因は?

日本画の虎の巻である「丹青指南」では、

胡粉や絵具の剥落について、こう述べられています。

仮令描法は、熟達して穏健なるも、

其絵は彩色剥脱の非難をまぬかれがたし、

畢竟するに、是等の失敗は暗に彩色は

容易のわざにして、胡粉の如きは、膠にて、

単に煉擦して、足るものと軽視して、

精確なる、絵画に施すべき絵具の溶融法および、

其使用方法を等閑にしたる過失といふも、

決して過言に非ざるべし

少し難しい言い回しなので

現代語訳をしてみました。

例え描き方が熟練していて作品に安心感があっても、

その絵は、絵の具がはがれ落ちることでの

非難をまぬがれることはできません。

結局のところ、それらの失敗は、

絵画に施すべき精確な絵の具の溶かし方や、

その使用方法おろそかにしている

原因だと言っても決して過言ではありません。

暗に、制作者が彩色をするのは簡単な事だと、

胡粉などは膠で単にこねるだけで十分なものだと

軽視しているから失敗するのです

つまり、絵具や胡粉が剥落してしまうのは、

正しい絵の具の溶かし方や、使用方法を

理解していないことが原因とされています。

絵具を塗る、盛る、の段階ではなく、

溶かす(膠と混ぜる)時点での方法が

大切と言うことなのです。

絵具や胡粉が剥落しなくなると、日本文化が守られる?

絵具や胡粉が剥落しないことでメリットがあるのは

あなたや、あなたの作品、

あなたのお客様だけではありません!

日本の文化を守る事にも繋がっているのです。

「どういうこと?」

と思った方は以下の引用をご覧下さい。

~されば若し至尊の宮殿、又は神社仏閣等に於ける、

装飾画の如き彩色を施こすとすれば、

其家系によりて法式ある、精細なる、

絵具の融溶方および其使用方法を知らざれば

右等の建築物に対し、完全なる、

着色を施し行ふこと、極めて難かるべし

こちらもまた、訳文を載せておきます

宮中や、神社仏閣などで、装飾画のような

 

色を付けることになった場合、

その流派によって定められた精細な絵の具の溶かし方や、

その使用方法を知らなければ、

それらの建築物に完璧に着色を施すこと

極めて難しいでしょう。

例えば日光東照宮のような昔の神社。

その社殿に飾り付けられている三猿や

様々な動物等の彫刻は、

 作られた当初は大変カラフル だったと言われています。

しかし、長い時間によって色が落ち、

今の褪せたような色合いになっています。

原型をとどめている内に、元のように塗り直して

昔の姿を残しておいたり、その修復方法を次の世代に

受け継ぐ必要があるのです。

そうしなければ、昔の日本人が長く残してきた

着色技術が失われてしまうのです。

ピラミッドやモアイ像の作り方のように。

そうは言っても、ペンキで上から塗ってしまっては

技術の継承も出来ませんし、

なにより見た目が良くないですよね。

そこで大切になるのが、上述した絵具の正しい使い方と

それによる長期の保存です。

つまり、 皆さんの作品を長く留めるだけでは無く 数百年後に皆さんの作品を修復するような時 

この技術は必要になります。

一人ひとりが正しい絵の具の使い方と、剥落しない

技術を持つことで、 日本や世界に宝物が一つ 残されていくのです。 

まとめ

・絵を長持ちさせる方法は、日本の文化を継承する上で必要な伝統技法

・絵具の溶かし方を精確に行うことで、長持ちする絵が描ける。

・絵を描く上では、基本的な道具の扱い方を疎かにしないことが大切。

丹青指南現代語訳ー緒言

前書き

一.この本の趣旨

近世、または現在の、有名な画家が描いた室内絵や

公の場所に飾られている色付きの絵が、

その完成当時から、まだ少ししか経過していない

のにも関わらず、胡粉が所々はがれ落ちてしまい

せっかくの美しい見た目を損なっている。

という不満を所持者から聞く事があります。

それは全て、作者の不注意によって生じたミスであって、

例え描き方が熟練していて作品に安心感があっても、

その絵は、絵の具がはがれ落ちることでの

非難をまぬがれることはできません。

結局のところ、それらの失敗は、

絵画に施すべき精確な絵の具の溶かし方や、

その使用方法をおろそかにしている事が

原因だと言っても決して過言ではありません。

暗に、制作者が彩色をするのは簡単な事だと、

胡粉などは膠で単にこねるだけで十分なものだと

軽視しているから失敗するのです。

宮中や、神社仏閣などで、装飾画のような

色を付けることになった場合、その流派によって定められた

精細な絵の具の溶かし方や、その使用方法を知らなければ、

それらの建築物に完璧に着色を施すことは

極めて難しいでしょう。

それに対して徳川氏のお抱え絵師である

狩野家の門に入って学んだ者たちは、

はじめに絵の具の溶き方とその使用方法を

会得したその後、彩色を学んでいました。

そのように、学ぶ順序を絵所で決められていたのです。

故にどんな絵の具であっても、

一度試し描きするときには、既にその絵の具の

良し悪しはもちろん、使用難易度までも

すぐに分かってしまいました。

以上の事から、この本は現在彩色絵を志す画学生に対し

完全な彩色法を授ける事だけが目的ではありません。

現在神社仏閣に残っている、装飾画への

彩色などをする上での真実を教えるためです。

そのために、徳川氏の絵画制作所で経験した

胡粉の練り方は勿論の事、

全ての絵の具の溶き方を網羅して、

隠すことなく明言しています。

そして、一は画学生に絵の真理をさとらせ、

一はわが国の、彩色絵の尊いルールをとどめておくための

楔とするため、この本を作ったのです。

日本画の技法書「丹青指南」に関する参考サイトなど

・国立国会図書館デジタルコレクション

無料で閲覧だけでなくダウンロードもできます!


・CiNii図書

日本の図書館からページのコピー(複写)を購入できます。

 

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